団員達の視線
エバンとコートに続いて、ユリアが騎士団の訓練場に向かう。
「この下の階で剣の訓練をしているんですよ。」
剣の訓練と聞いてユリアはドキドキした。
もしかしたら、トーマス様もいるかな?
訓練や競技が行われる時に王様や貴族達が入る部屋に入った。
部屋は正面の壁が開いていて、そこから下がよく見える。
そこから覗くと沢山の団員が訓練をしていた。
「ほら、あそこにいるよ。トーマスが。」
ユリアはその言葉に目を開いて、騎士達を見た。
そこには1人で3人ほどの団員の相手をしているトーマスの姿が。
すごい…トーマス様、一気に3人と戦ってる。
ユリアは初めて見るトーマスの騎士としての動きに見入ってしまう。
ユリアはトーマスを目で追い続けていた。
しばらく経って、エバンが席を立つ。
「そろそろ休憩時間だから行きましょう。」
エバンは訓練場に続く階段を降りた。
それに続いてコートとユリアも階段を降りる。
「おい!みんな!ちょっと集まってくれ。」
エバンは訓練場にいた団員に声かける。
「さて、今日はこちらの元王宮筆頭魔法使いのマグゴナル様がみんなの治療をしてくださる。」
コートはエバンの言葉に前へ出る。
「みなさん、ご機嫌よう。今日は日頃から鍛錬をしている皆さんに治療をさせていただこうと思います。」
コートがユリアに前へ来いと手招きする。
「ここにいる、私の弟子がみなさんに治癒魔法を込めた料理を作りますので訓練の後で召し上がってください。」
「えっ!」
ユリアは今初めて聞いた治癒魔法入りの料理の件に驚いた。
「ほら、ご挨拶を。」
「あ、はい。みなさんはじめまして。ユリア・エスタークと申します。よろしくお願いします。」
団員がザワザワ言い出した。
「かわいい」
「女の子だ!」
集中した視線がユリアを小さくして行く。
その時、声が響いた。
「ユ、ユリアさん!!」
はっと見ると、そこには少し遅れて来たトーマスが唖然として立っていた。
「ト、トーマス様……」
団員達は何がなんだか分からず見ている。
痺れを切らしたエバンが付け加えた。
「今日は魔法の勉強をしているユリアちゃんが、お前達の夕飯を作ってくれる。その料理には体力や傷を治癒する治癒魔法が込められているそうだ!みんな楽しみにしてろ!」
そこまで言うとエバンは更に大きな声で言った。
「それから!みんな!死にたくなかったら、ユリアちゃんに変な気起こすなよ!ユリアちゃんは、噂のトーマスの女神だからな!」
その言葉にざわつく団員。
「え!トーマス団長の女神?」
「あ!噂の女神!」
「わぁ!本物だ!」
ユリアは更に小さくなった。
「では、解散!」
エバンの声で休憩に入る団員達だが、1人として動かない。
みんなあの噂の女神を見ている。
「おい!お前たち見るな!」
トーマスがユリアを背中にして立ちはだかる。
「トーマス様……。」
ユリアは恥ずかしくてどうしていいか分からなかった。




