久しぶりの時間
ミュゼットとプリアンヌと別れ、ユリアとトーマスはカフェに向かって歩いていた。
「ユリアさん、脚は大丈夫ですか?疲れたら言ってくださいね。」
トーマスはユリアを気遣う。
「大丈夫です。最近、運動不足だったし久しぶりにトーマス様と歩きたかったから。」
ユリアは微笑む。
トーマスとユリアはゆっくりと歩いていた。
しっかりと組まれた腕が暖かい。
歩きながらトーマスが、クッキーを食べられなかったと愚痴っていた。
「エディはわざと僕にクッキーの事を言わなかったんだと思います。」
トーマスはまだエディに対して怒っていた。
「トーマス様。そんなクッキーなんていくらで作りますから。怒らないでくださいね。」
ユリアはトーマスをなだめる。
「トーマス様。今日は家でご飯食べて行きませんか?特別に美味しい夕飯作りますから。トーマス様の為に。」
「えっ!本当ですか?」
「はい!まだ時間も早いですし。食べて行ってください。」
はじめは、一人暮らしの女性の家に上がり込むのは…と遠慮していたトーマスだったが
最近、ユリアのご近所さん達に夜はなるべくユリアの側にと言われていたので夕飯を食べる事にした。
「じゃあ、少しお買い物をしてもいいですか?」
「もちろん。お付き合いしますよ。」
貴族の男性が、夕飯の買い物に付き添う事などほとんどあり得ない話だがトーマスは嫌がらずにいつも一緒に来てくれる。
もし、結婚したとしてもこうして2人でお買い物に行ったり出来るのかな……。
などとユリアはたまに考える。
まずは、肉屋に立ち寄る。
そこで、上質なお肉を調達した後今度は八百屋へ。
「おっ!ユリアちゃん!トーマス様!いらっしゃいませ!」
八百屋のおじさんが元気よく迎えてくれる。
「おじさんこんにちは!人参と玉ねぎをください。」
「あいよ!」
「それから……サラダに使いたいんですけど、何かいいのありますか?」
「そうだねー。あ、それじゃこのカリフラワーはどうかな?茹でて食べると甘くて美味しいよ!」
「じゃあ、それを!」
「あいよー!じゃ、カリフラワーはサービスだ!」
「え?いいんですか?」
「いいよー!なんかトーマス様とユリアちゃん見てると家のかみさんと結婚したばっかりの時を思い出すよー!ははははは!」
「も、もう!おじさんっ!」
トーマスを見ると、トーマスは赤くなっていた。
おじさんにお礼を言って、2人でカフェに向かい歩き出す。
トーマスは荷物をユリアから受け取り、ひょいと片手で持った。
その反対の腕はユリアの体を支えている。
道行くご近所さんと挨拶を交わしながらカフェに帰った。
ユリアはカフェ部分に置いてある調味料などを自宅のキッチンに移動してもらい、夕飯の準備を始めた。
リビングでは、マントと上着を脱いだトーマスが暖炉に薪をくべていた。
薪をくべ終わったトーマスがキッチンにいるユリアを見る。
とても楽しそうに料理をするユリア。
トーマスは自然と笑顔になる。
ユリアさんと結婚したら、キッチンは大きめに作ろう。
そんな事を考えながらユリアを見ていたトーマスは
自分の顔がにやけているのに気づき、ハッと顔を引き締めた。




