騎士としてのトーマス
ここは騎士団の宿舎。
トーマスの執務部屋には、部下達が集まっていた。
「トーマス団長殿!ご報告いたします、先日の誘拐傷害事件で検挙致しました男5人のうち、見張り担当だった3人は自白いたしましたが、あまり真相を知らない模様です!」
「そうか。他の2人は?」
「はい!1人は何も知らないの一点張りでして。もう1人はまだこれからという様子だと報告が来ております!」
「なるほど。まだピットーニに繋がる自白は取れていないのか。」
「それから、逃げた男の行方はまだ掴めておりません!」
「うむ。それについてだが被害者からタイラーという名前で呼ばれていたという証言があった。」
「タイラーでございますか?」
「ああ、タイラーという名前の男。ピットーニ関係で洗い出せ。」
「はっ!」
「それから、小屋の中にいた大柄の男の方の尋問は俺がやる。」
「「えっ!!」」
報告に来ていた団員が驚く。
「団長殿が自らでございますか!」
トーマスは何としてでもユリアの為にしっかり解決しなければ!と強く思っていた。
騎士として大変優秀なトーマスは強くて頼りがいのある上司だ。
騎士団の中には、トーマスを神格化する者さえいた。
そんなトーマスが自ら尋問をする。
このニュースは騎士団の間で瞬く間に広がった。
「おい、トーマス。尋問するって本当か?」
「ああ。今回は俺がする事にした。」
エディは心配そうにトーマスを見る。
「ユリアさんの事があるから、お前も力入ってるのは分かるがあまりやり過ぎるなよ。」
「やり過ぎとは?」
「お前さ、昔尋問の時脅かし過ぎて失神させたろうが。」
そうなのだ。昔、トーマスは尋問の時に相手に圧をかけ過ぎて失神させてしまった過去があるのだ。
「大丈夫だ。俺は冷静だ。」
「そうかねぇ……。まぁ、その時は俺も一緒に入るから。」
エディとしても、自分の親友の恋人であり、妹や婚約者の友人であるユリアさんの為に一日も早くこの事件を解決したいと思っている。
「ピットーニ家について、俺の方でも色々探らせているからな。ミュゼットの奴が前から調べろってうるさくて。実は以前から調べていたんだ。」
「ミュゼットが?」
「ああ、あいつさ、ハンターの事となると目の色変わるんだよ。」
「ハンター?ああ、お前の所のハンター・ベイリーか。」
「そう。ミュゼットがハンターにご執心でね。」
エディがちょっと呆れた顔で言う。
「まぁ、あのピットーニ家。叩けば結構色々出て来てるよ。違う事件で検挙できそうなくらいな。」
「まずは、タイラーとかいう男の行方だな。おそらくはピットーニの誰かが匿っているはずだ。あの怪我だ、まだ動けんだろう。」
先日の小屋での事件の日。
弓隊が放った弓はタイラーの手に命中した。
その後も逃げるタイラーに向かって弓を放ち続け、背中や肩など数カ所に命中したと思われる。
「あいつだけは、絶対に許さん。」
トーマスはタイラーの顔を思い浮かべて、空中を睨んだ。




