白の力
ユリアの意識が戻らないまま2日が過ぎた。
あれからトーマスは、ユリアの側から離れない。
ユリアの顔を撫でる。
「ユリアさん……戻ってきてください。貴方に話したい事が沢山あるんですよ。ユリアさん……ユリアさん……。」
白い雲の中に立っていたユリア。
「ユリアさん……ユリアさん……」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえる。
「誰だろう?」
ユリアは周りを見渡すが、誰もいない。
そこに1匹の白い鳩が近づいてきた。
鳩はユリアの周りをぐるぐると周り少し先の木の枝に止まる。
「ついて来いってこと?」
ユリアは鳩の後を追った。
しばらく行くと目の前に泉が現れる。
泉の水はキラキラ輝いていて、不思議な雰囲気を感じさせている。
ユリアはその泉に近づくと、そっと水を両手ですくう。
すくった水はキラキラとしており、その輝きはユリアの腕まで輝かせた。
ふと、気づくと鳩が泉の真上にいた。
そして次の瞬間、鳩はそれは美しい女神に変身したのである。
ユリアは不思議と驚かず、ただ女神を見ていた。
女神もユリアをじっと見ている。
すると、頭の中に声が聞こえて来た。
「ユリア。貴方は今、天と地の間にいます。」
「天と地の間?」
「そう。貴方の魂の灯は消えかけているのです。」
「やっぱり……そうですか。私は死ぬんですか?」
「ふふふ。いえ?まだ貴方はその時ではありません。それはまだまだずっと先の事。それと、貴方の母が私にお願いをして来たのです。」
「お母さんが?お母さんはどこですか!」
「大丈夫、天国にいます。」
「そうですか……天国に。」
「貴方の母からのお願いは、貴方に白の力を与える事。貴方の母がそうであったように、白の魔法使いとしての力を与えます。」
「白の魔法使い?」
「全てを癒す白の使い手です。貴方の身体は今とても傷ついています。」
ユリアは自分の身体を見たが、どこも傷がない。
「今の貴方は魂だけ。本当の身体は地上で昏睡状態です。貴方に力を授ける事によって貴方自身の傷も癒します。」
「私が昏睡状態……」
「あまり長話も出来ません。それでは貴方に力を授けます。その泉の水を飲みなさい。」
「それだけでいいんですか?」
「ええ、それだけです。」
ユリアは言われるまま泉の水を両手ですくって口に含んだ。
飲んだ瞬間、身体からキラキラと何かが溢れてくる。
「うわぁ!」
ユリアの身体は宙に浮き、白い光が集まって来て包む。
光が消えた瞬間、ユリアは身体に今までにはなかった何かがあるのを感じる。
「これで貴方に白の使い手としての力が宿りました。貴方の母が望んでいます。愛する人達と幸せになる事を。」
「愛する人達……」
「そうですよ。」
女神はニッコリと微笑むと次第に消えていく。
「あ、あの!私は何をしたら!」
「ユリア…貴方の愛で沢山の人を癒しなさい。愛ですよ、愛。今も貴方を愛する人が待っています。行きなさい…ユリア。」
女神は消えてしまった。
「愛……。具体的にどうするか教えて欲しかったな。」
ユリアは立ち上がった。
さて、ここからどうやって抜け出したらいいのかな?
天と地の間って出口があるのかな?
ユリアはそんな事を思いながら先に進む。
すると、また声が聞こえてきた。
「ユリアさん…ユリアさん…。僕は…貴方を…」
ユリアは声のする方へ進んだ。
白い雲がやがて濃い霧になり、ユリアは声だけを頼りに歩き続けた。
トーマスはユリアの手を握りしめて、ユリアに話しかける。
「ユリアさん、ユリアさん。僕は、貴方を……」
トーマスが手に力をギュッと入れた。
「愛しています。」
それと同時にユリアの目が開いた。
「ト…ト…ト…マス…さま…。」
ユリアはトーマスの目を見て力の限り言った。
「ユリアさん!ユリアさん!」
その声に、エディ、ミュゼット、プリアンヌ、ハンプトンが入ってきた。
トーマスはユリアの手をしっかり握る。
「ユリアさん。」
トーマスは微笑んだ。
ユリアもトーマスを見つめて微笑む。
「ユリアさん……よかった。もう会えないかと思いました。」
トーマスは思わずユリアを抱きしめた。
ユリアの髪の毛に頬を付けて幸せを噛み締める。
周りにいた者たちもホッとひと安心している。
しかし、一向にユリアを離さないトーマスを見て
エディが部屋からみんなに出るように目配せした。
それからしばらく、2人の間には誰も入り込めなかった。




