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死なないで

ユリアが捕われている小屋の周りの人影は

ゆっくりゆっくりと小屋に近づく。


小屋には窓がない為、中の様子が分からないが

偵察隊によると中には男が3人。外には見張りが3人。


中の男の1人はかなり手練れがいる模様との報告が入った。


トーマスはすぐにでも突撃したい気持ちを抑え、小屋を睨む。


ユリアさん……もう少し辛抱していてください。


一気に攻め込むのは簡単だ。

しかし、小屋の内部が分からない為万が一人質であるユリアが傷つけられては……とトーマスは自分にいい聞かせる。


トーマスが合図をして、さらに小屋に近づく騎士団。


そして、エディたちが音もなく外の見張り3人を倒す。


トーマスの後ろにいたハンプトン辺境伯は剣を握り締め、トーマスの合図を待つ。


トーマスは息を殺し、そっと合図を送った。

一斉に小屋の壁に背中をつけた騎士団とハンプトン辺境伯。


壁に小さな穴があり、そこから中の様子を伺う。

中には後ろ手に縛られているユリアの姿。

その周りを囲む男が3人。

腰には剣を下げていた。


騎士団の中には身軽さを売りにするものも多く、その者たちは小屋の屋根へ。

天窓に到着すると、トーマスに合図を送る。


そして、トーマスが扉に近づき最後の合図を送った。



小屋の中ではタイラーが何やら不穏な雰囲気を察知して、ユリアの横に移動する。

ユリアを立たせた瞬間、小屋の扉がバン!と開いた。


開いた扉には誰もおらず、静まり返っている。


タイラーがユリアの喉に剣を近づける。

1人の男に様子を見るように目配せをした。


男は腰が引けながらも扉に近づく。

扉の外を見ると誰もいなかった。


「ふぅ〜誰もいませんぜ?」

そう言って扉を閉めようとした時、扉の上の壁からトーマスが男に襲いかかる。


一瞬にして、男を沈めたトーマス。


小屋の中を見ると、ユリアが男に剣を向けられていた。


「その人を離せ。」


トーマスの低い声が響く。


トーマスの後ろにエディとハンプトン辺境伯も付いた。

力では遥かに優っているが、ユリアが人質である。

下手に動くとユリアが危ない。


瞬時にトーマスは中の構造と距離を測る。


「ト、ト、トーマス様。」


「ユリアさん、待たせて申し訳ない。」


トーマスがユリアを一瞬見たとき、もう1人の男がトーマスに襲いかかる。

その攻撃を軽く交わすと、そのままタイラーの喉元に剣を向けた。


トーマスとタイラーはお互い一歩も引かない。


「あんたの大事なこの娘がどうなってもいいのか?俺を刺した瞬間、俺もこの娘を刺すぞ。」


「何故、大事な娘だと分かるのだ。」


タイラーは一瞬目を大きくしたがすぐにまたきみの悪い笑いを浮かべた。


ジリジリとお互いを牽制するトーマスとタイラー。


するとトーマスは、タイラーに向けた剣を引く。


「そう来なくっちゃ。」


タイラーはユリアを人質に小屋の扉まで移動する。

トーマスは外にいる騎士団に手を出すなと命令した。


タイラーはある程度距離を置き

ユリアを引きずるように馬に近づいていく。


そして、タイラーはユリアに剣を向けながら馬に乗る。


「手荒な真似はしなくなかったが、お嬢様の為だ。悪く思うな。」


そう言ってタイラーはユリアに向かって剣を振りかざした。


「やめろーーー!!!」


トーマスがユリアに向かって走り出す。

エディもハンプトン辺境伯も走り出した。


トーマスはユリアに手を伸ばす。


「ユリアさん!」


エディが声を上げる。


「弓部隊!手を狙え!」


控えていた弓部隊が一斉に弓を引く。

1本の弓がタイラーの手に命中した。

しかし、それはユリアに向かって剣を振りかざした後だった。

目の前でユリアの足が崩れ落ちていく。



ユリアはトーマスの方を見た。

こちらに伸ばした手を掴みたくても手が動かない。


「トーマス……様……」


トーマスがユリアに近づいた時は既に斬られた後だった。

トーマスはユリアに駆け寄り話しかける。

ユリアを抱え、後ろ手にしている縄を切る。


「ユリアさん!ユリアさん!聞こえますか!ユリアさん!」



遠くの方でトーマスの声が聞こえる。

トーマスの顔がぼやけて行く。


「ト……トーマ……ス…さま……」


「ユリアさん!しっかり!死なないで!死なないでくれ!ユリアさん!」


トーマスの涙がユリアの頬に落ちる。

ユリアは最後の力を振り絞りトーマスの顔に手を伸ばす。

しかし、ユリアの手は届かなかった。

ユリアはトーマスに抱かれながら意識をなくして行った。



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