白の魔法使い
目を開けたコートが見たもの。
それは白の魔法使いに変身したユリスだった。
白の魔法使いとは魔法使いの中でも能力の高い特別な者で、大天使の加護を受ける選ばれた魔法使いである。
白の魔法使いはその姿を大天使に変え、様々な災いを浄化すると言われている。
コートは白の魔法使いを見るのは初めてだった。
目の前にいるのは、紛れもなく白の魔法使い。
白の魔法使いへと変身したユリスは
見習いが召喚した魔物を浄化して行く。
魔法使い達から吸い取った魔力を削がれ、その魔物を召喚した見習いの杖の宝石へと吸い込まれて行った。
倒れ込んだ見習いの元へ集まる魔法使い達は
その無事を確認すると、白の魔法使いへと変身したユリスへ視線を向けた。
「なんと言う事だ……。白の魔法使いだったのか。」
魔物を浄化したユリスを包んでいた白い光が消えてユリスはその場に倒れ込んだ。
コートは目を閉じて、その時のことを思い出していた。
そのユリスが産んだひとり娘ユリア。
ユリアもまた白の魔法使いの素質がある。
白の魔法使いは代々血に濃く受け継がれると書物には書いてある。
しかし、ユリアを人知れず産んだユリスはユリアに魔法使いの教育をするのを拒んだ。
魔力が高いと思われる子供が受ける魔力の測定も受けさせなかった。
病で死んだユリスの遺言は
ユリアが人並みの幸せを掴んで暮らすこと。
コートやファッジやエミネールは、その遺言を守りたかった。
だから、ユリスが王宮魔法使いから庶民に戻った時自分達も引退を願い出てユリアが普通の女性として暮らして行けるように静かに見守る事にしたのだ。
幸いユリアは魔法力は強いものの、白の魔法使いの片鱗は見せていない。
複雑な身の上で産まれたこの子を、なんとしても幸せにしてあげたいとコートは考える。
もし、白の魔法使いであれば王宮魔法使いが黙っていない。
伝説である白の魔法使いは必ず祭り上げらる。
以前のユリスがそうであったように、よほどの事がない限りその任を避ける事が出来ない。
ユリスが王宮を離れる決意をした時も
人知れず身を隠さなければならなかった。
その為、ユリスは自分の名前を捨てた。
ユリス・トラワルはトロエ・エスタークという名前に変え別人になった。
それもこれも娘のため。
そして、ユリアの父親の為でもあった。
「ユリス……お前の娘は今恋人がいるそうだよ?」
コートはカフェからの帰り道、空を見上げた。




