お食事会で
ユリアの目の前にはトーマス。
今、2人は馬車に乗ってブレンダー家の屋敷に向かう。
今日はミュゼット主催の小さなお食事会があり
ユリアもトーマスもそこに招待されているのだ。
「ユリアさん、小さな集まりですから緊張なさらずに。」
「あ、は、はい。」
緊張するなと言っても無理だ。
おそらくユリア以外は貴族ばかりであろう。
緊張しないはずがない。
普通ならば、庶民のユリアが招待される事などないのだ。
ユリアはミュゼットの友人であるので、当然ミュゼットは招待したかった。
そして、事実上トーマスの恋人のお披露目でもある。
うぅ、なんだか気持ち悪くなってきた。
ユリアの緊張は絶頂だった。
屋敷には、10名ほどのミュゼットの友人が集まっていた。
エディとプリアンヌに加え、ハンターもいた。
「ユリアさん、紹介するわね!」
ユリアの目の前にいたのは、がっしりした体格で綺麗に日焼けした男性がいた。
「こちらは、ジョアル・ハンプトン様よ!」
「ミュゼット嬢からお話は伺っております。ジョアル・ハンプトンです。どうぞよろしく。」
そう言って、ハンプトンはユリアの手を取りキスをした。
この挨拶は、男性が女性に親しみを持ってする挨拶であるが普通は貴族から庶民にはしない。
ユリアは突然の事でびっくりした。
「ユリアさんとお呼びしても?」
「は、はい!もちろんです。」
「貴方はトーマス君の恋人でもあるのだから、ここでは胸を張っていいんですよ。貴方が貴族ではないという事はみんな承知の上ですからね。」
「そうよ!ユリアさん!ここにはそんな事を気にする方はおりませんのよ!」
ユリアは嬉しかった。
トーマスと交際する時、身分の違いでトーマスに迷惑がかかるのでは?と心配していた。
しかし、周りにはその事を感じさせなくしてくれる人たちが大勢いた。
「ミュゼットさん、ハンプトン様、ありがとうございます。」
その様子をトーマスが見て頷いている。
「ハンプトン様、お久しぶりです。」
「おお!トーマス君!いや、本当に久しぶりだ。こんなに可愛らしい恋人ができたなんて。いや、驚いたよ!」
「ユリアさん、ハンプトン様は辺境を守られている素晴らしい方なんだ。僕の憧れの方だよ。」
ハンプトンは国境の辺境を領地にしている辺境伯である。
だから、こんなに日に焼けているのね。
王都にはこんな健康的な方はいらっしゃらないもの。
ユリアは、なるほどと思った。
緊張していたユリアはみんながあたたかく迎えてくれた事で、次第に落ち着いてきた。
「ユリアさん、ちょっとお話しませんか?」
ユリアがリビングのソファに腰掛けていると
ハンプトン辺境伯がシャンパンを持ち話しかけてきた。
ちらっとトーマスを見ると、トーマスはエディとハンターと話をしているようだった。
「はい、ハンプトン様。喜んで。」
ハンプトンは柔らかく微笑んだ。
「僕の領地は、ここから1週間程行った所なんです。」
「え!1週間ですか!」
「そうなんですよ!まぁ、私が馬でかければ4日くらいで着くんですがね。あはははは。」
ハンプトンは豪快に笑った。
「今度よかったら、トーマス君と来てください。あ、そうだ。新婚旅行にでもね!」
「えっ!し、し、新婚旅行!」
「そうですよ?あ、でもまだそれは先かな?じゃあ、まあミュゼット嬢も一緒にという事で。」
「あ、あ、あの。」
ユリアはハンプトンの口から出た新婚旅行の言葉に
ドキドキしてしまった。
トーマス様と新婚旅行だなんて。
考えてもみなかった……。
どうしよう!意識して目が見れない。
ユリアはトーマスの方をちらっと見る。
するとトーマスがこちらに足早に近づいてきた。
「ユリアさん、どうしたんですか?顔が真っ赤だ。」
「いえ、なんでもないんです。」
「で、でもものすごく顔が赤い。」
そう言ってトーマスはグイグイとユリアに顔を近づけてくる。
お願い!トーマス様!それ以上顔を近づけないでぇ!
「トーマス君、すまん!私が余計な事を言ったから。」
ハンプトンが横から謝ってきた。
「余計な事?ですか?」
「ああ。我が領地にな、君と一緒に遊びにおいでと。それで、その……新婚旅行の時にでもと言ったんだ。」
「……はぁ。………え?……!!え!」
「すまなかった。」
ハンプトンがまた謝る。
「しん、し、しん、新婚……旅行……」
当然トーマスの顔も真っ赤になる。
トーマスとユリアはその後しばらく
お互いの目を見る事が出来なかった。
いつもありがとうございます♡
ようやく執筆の時間も取れるように戻りました。
今週はドドンとアップして行きたいと
思っております!




