修行が足りない
トーマスは考えている。
ものすごく考えいる。
そのままカフェに向かうか?
いや、それでは味気ないな……。
エディだったら、こんな時どうするんだ?
トーマスは考える。
でも、そこは恋愛初心者。
考えても答えは出ないのだ。
ユリアは少し言いにくそうに切り出した。
「あの、トーマス様。実は少し買いたい物がありまして……寄り道してもよいでしょうか?」
「あ、はい!もちろん!お供しますよ。」
「良かった!すぐ済みますので!」
ユリアが入ったのは紅茶専門店。
ユリアの魔法カフェで扱っている紅茶を卸しているお店だ。
中に入ると、紅茶のよい香りがする。
「少し待っててください。」
ユリアはそう言うと、奥のカウンターにいた店主をと何やら話している。
トーマスは今まで紅茶専門店になど入った事がなかったので、あれこれ珍しいものを見ている。
「オーナーさん、こんにちは。」
「あれー?ユリアちゃんじゃないか!こんにちは!いや、こりゃ驚いたね!今日はおめかししてるじゃないか!」
「や、やだなーオーナーさん。」
紅茶専門店のオーナーは、入り口の辺りで紅茶を見ている騎士の男を見た。
「ユリアちゃんの彼かい?」
「え!いや、ちが、違いますよ!」
「ふーん?そうかい?でも、騎士様がこんな店に来るんだ。特別な関係じゃなかったら、これからなるのかな?」
ユリアは顔を真っ赤にしながら、手を振った。
一方トーマスはユリアをそっと見る。
ユリアは何やらオーナーと話し込んでいる。
しかも、ユリアの顔が真っ赤になっているではないか。
トーマスはカツカツと歩きカウンターにいるユリアに話しかけた。
「ユリアさん、大丈夫ですか?」
「あ、はい!大丈夫です!」
「そうですか、よかった。では、ドアの外で待っていますのでごゆっくりどうぞ。」
そう言ってトーマスは外に出た。
それを見たオーナーはびっくりしている。
「ちょっとユリアちゃん!あれ第1騎士団のトーマス団長じゃないか!」
はぁ、やっぱり知ってるよね……。
「いやぁ、ユリアちゃん!驚いたよ!ユリアちゃんの彼はトーマス団長かー!」
違う違う!と言い訳する私を無視して、紅茶専門店のオーナーは、そんな2人にお祝いだ!と言ってとっておきの紅茶を出してきた。
その茶葉は、なかなか手に入らないもので
オーナーも知り合いから少しだけ分けてもらった貴重なものらしい。
是非、2人で味わって!とオーナーがお土産にくれたのである。
お店を出たユリアは申し訳なさそうに謝る。
「トーマス様、ごめんなさい。あんな誤解を……。」
トーマス様が嫌な気持ちになっていなかったらいいんだけど……。
「嫌だとは……思っていません。」
トーマスがボソっと言った。
いや、むしろ嬉しい。
勘違いから本当にそうなったら嬉しい。
その後少し歩いて街外れの魔法カフェまで辿り着いた。
トーマスは送り届けたから。と帰ろうと思ったが
ユリアがトーマスを引き止めた。
「トーマス様もこの後のどんちゃん騒ぎってものに出られるのですよね?」
「え?」
ユリアはパレードが始まる前、メイドのメリーから聞いたパレード後のどんちゃん騒ぎなるものにトーマスも出ると思っていた。
「どんちゃん騒ぎ…ですか……」
おそらく、ユリアはパレード後の騎士達の打ち上げのことを言っているのであろう。
普段から飲み会などにはあまり顔を出さないトーマスだったので、打ち上げに参加するという考えもなかった。
「い、いえ。僕が参加しては場が盛り下がるので……参加はしません。」
「それなら!先程いただいた紅茶飲んで行かれませんか?」
ユリアからの思わぬ誘いだった。
カフェに入ったトーマスは
テーブルに座ってユリアを待っていた。
上に行って着替えて来るというユリア。
しかし、トーマスは気が気でなかった。
今、家でユリアさんが着替えている。
階は違うとはいえ、同じこの家であのユリアさんが着替えをしている。
そう思うだけでドキドキが止まらない。
「いかん、いかん。違う事を考えよう。」
トーマスはそんな破廉恥な事を考える自分を叱った。
貴方を守ります!と言った本人がそんなふしだらな考えでは騎士として失格だと。
トーマスは気を紛らわそうと店内を見渡す。
今日はカフェはお休みにしたんだな。
……という事は、今日はお客が来ないのか。
…………!という事は、2人きりではないか!
俺はカフェにいるとしても、ここは家につながっている場所。
俺はユリアさんの家に入れてもらったという事にならないか?
……いや、考えすぎか………。
今のトーマスは考えれば考える程
おかしな方向に行ってしまう。
「俺は、まだまだ修行が足りんな。」
トーマスは自分の甘さにため息を漏らすのだった。




