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2つの視線

読んでいただき

ありがとうございます。




今回、新たに登場したのは

ジョアル・ハンプトン辺境伯です。



ミュゼットの変身ぶりに驚くユリアとトーマス。

その姿にエディも呆れている。


「ミュゼット殿。ご無沙汰しております。お会いできて嬉しいです!」


「わたくしもですわ、ハンター様。ハンター様はいつもにも増して精悍でいらっしゃいますね。」


「あはははは、ありがとうございます。」


ミュゼットはふんわりした笑顔でハンターに笑いかける。


「さーて、それじゃ俺はこの辺で……」


エディが立ち去ろうとしたが、ミュゼットがエディの腕を掴んだ。


「お兄様?父上と母上がお屋敷でお待ちですわ?お兄様にお会いしたら必ず帰って来るようにと伝えなさいと言われておりますのよ?」


ミュゼットは笑顔だが、物凄い力でエディの右腕を掴んでいる。


「え?それはなんでかなー?俺は用事はないぞ?」


「それは分かりませんわ?わたくしは必ず連れて帰れと言われておりますの。私だって帰りたくありませんわ。」


「痛い、痛いよミュゼット。」


ミュゼットは、またふんわりした笑顔に戻り


「それでは、失礼いたします。ハンター様、久しぶりに街に参りましたので我が家にお茶でもしに来てくださいませ。お手紙書きますわ!」


「あ、はい!喜んで!お待ちしております。」


「ユリアさん、トーマス様の事よろしくお願いします!滞在中に一度お店に伺いますね!」


「ええ!是非いらしてください!」


「トーマス様。ユリアさんをしっかり送って差し上げてくださいませ。ピットーニ嬢がまだあちらで睨んでおられますから。」


「え?あ、ああ、わかったよ。」


「それでは、みなさんご機嫌よう。」


ミュゼットさん……ふんわりしてるけど

結構強引なのね……。



スッと出てきたメリーに左腕を掴まれたエディは引きづられるように帰って行った。



「行っちゃいましたね……」


「そうですね……まぁエディは自業自得ですから。」



「あ、あの!トーマス団長殿!エディ団長の馬もわたくしが連れて帰りますので、トーマス団長殿の馬もわたくしが馬屋に連れて行きます!ご安心を!」


「そうか……すまんな。では頼むぞ。」


そう言って、トーマスは自分の相棒の馬に話しかけた。


「今日はこのハンターが連れて帰ってくれるから、大人しくするんだぞ?わかったな?」


馬はブルル!と鳴いて返事をしたように思えた。


「では、よろしく頼む。また明日な。」


「は、はいーー!失礼いたします!」


ハンターは手と足が同時に出るのではないかと思うくらいカチカチに緊張して行ってしまった。



ハンターを見送った後、ユリアとトーマスはカフェに向かって歩き出した。


トーマスはユリアの歩幅に合わせて

ゆっくり歩いている。


今日のトーマス様…すごくかっこいいなぁ。 


ユリアはトーマスをチラッと見る。

トーマスも同じようにユリアをチラッと見た。


お互い目があった2人は照れくさそうに笑う。


「あ、あの。ユリアさん。今日の装いは本当に素敵ですよ。」


「あ、ありがとうございます。実はこれ母の形見のワンピースなんです。」


「そうなんですか!それは素敵ですね!物を大切にする事は素晴らしいです。」


「あははは、ありがとうございます。」


いや、本当は着ていく服がなくて

苦肉の策だったんだけどね……(汗)

でも、まあ結果オーライ。


褒め続けるトーマス。

褒められ慣れていないユリア。


2人はゆっくりゆっくりと

歩み寄っているように見えた。






一方馬車の中では、そんな2人の微笑ましい姿を見て怒りに震えているケイトが居た。


トーマスが向ける笑顔の先にいるのが自分ではなく違う女だと言うこと。

そして、それが庶民の女だと言うのが許せない。


見た事のない笑顔をユリアに見せるその姿に

ケイトはふつふつと湧き上がる怒りを抑えようとはしなかった。


「トーマス様に相応しいのはこの私よ!」


握られた扇子は音をたてて折れた。





そしてまた、離れた場所にある馬車の中からユリアとトーマスを見つめる人間がもう1人。


その男の名は、ジョアル・ハンプトン辺境伯。


ハンプトン辺境伯はトーマスと一緒にいる女の子を

じっと見ていた。


「あの娘がどこの誰なのか調べて来てくれ。」


馬車の横に待機していた従者がそっと頷き

馬車は街に消えて行った。








辺境伯って響き、謎が多い感じで好きです。

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