完全体の白の魔法使い
アストロ・ジーラスは目の前で白い光を放つユリアを見て苛立っていた。
「そんな見習いに何が出来る。私に効くはずがないであろう!」
そう言って、大広間に充満していた黒い霧を1箇所に集め始める。
そして、両手を胸の前で合わせると掌をユリアの方に向けた。
「死ね……」
黒い霧は物凄いスピードでユリア目掛けて飛んでくる。
その様子を少し離れた所で見ていたトーマスは今にも飛び出して行きそうだった。
コートはトーマスに言う。
「大丈夫だ。ユリアちゃんは白の魔法使いなんだ。アストロ・ジーラスに負けるはずがない。辛抱しなさい。」
トーマスは掌をギュッと握りしめる。
爪が食い込んだその手からは血が滲んでいた。
物凄いスピードで飛んで来る黒い霧は、もうすぐユリアに届きそうだ。
ユリアは目を閉じて、白い魔法の杖を上にかざした。
すると、その杖から眩い光が放たれ辺りを照らしていく。
眩しさに目を閉じていた物達が目を開けた時、信じられない光景が広がっていた。
天から現れた白い姿をした女神とユリアが重なろうとしていたのでる。
「白の女神様が……」
セレニウムが言った。
「白の女神様が降りていらっしゃった。これでユリアちゃんは完全体の白の魔法使いだ。」
コートはその様子から目を離さずみんなに言った。
白の女神と一体化したユリアから白い光と風が一気に吹いた。
大広間に充満していた黒い霧は一瞬で消え去り跡形もなかった。
「なんだと!この小娘が!」
ユリアはゆっくりと目を開けアストロ・ジーラスを見つめながら言った。
「アストロ・ジーラス。貴方は悲しい人…黒い穢れが貴方を壊してしまったんですね。」
「うるさい!お前に何が分かる。あの時、お前達が止めなければ、この国の王女を生け贄にして儀式が行われていたんだ。そうすれば、この世界は…この世界は私のものだったのに!」
ユリアはふと目を伏せて言った。
「かわいそうな人。そんな事で手に入った物は本当に手に入ったとは言えないのに。」
「もういい!白の魔法使いなどと話すのはごめんだ!お前も本気で来い。私も本気で行くぞ!」
アストロ・ジーラスは、大きく深呼吸した。
ユリアは目を閉じると、ユリアの中の白の女神が話しかけてきた。
「ユリア…やっと覚悟を決めたのね。諦めない貴方に私の力を授けます。さぁ、その本を開きなさい。」
ユリアは女神の言う通りに、左手に持っていた本を開いた。
そして、その本を天高く掲げる。
「アストロ・ジーラス。貴方の穢れを癒します。」
白い本が宙に浮かんだ。
そして、本はひとりでにページがめくられて行く。
何も書いていなかったページに金色の文字で沢山の呪文が描かれて行く。
それは、アストロ・ジーラスの穢れを消し去る呪文だった。




