白の魔法使い現わる
ユリアは自分に言い聞かせていた。
落ち着いて…大丈夫……。
セレニウムがユリアに言った。
「大丈夫ですよ。私達がいます。」
ユリアはあの黒魔術の本の言葉を思い出す。
「黒い鷹には白の力……」
虹色のオーラを張ったコートは、少し下がってユリアの隣に来た。
「ユリアちゃん、いいかい。まずは訓練を思い出して。白の力を感じなさい。集中するんだ。」
「はい!」
ユリアを守るように囲んだ王宮魔法使い達。
その真ん中でユリアは目を閉じて白の力に集中していた。
その様子を見ていたアストロ・ジーラスは言った。
「ん?その女。白の魔法使いか!」
その言葉にユリアは集中を途切らせてしまう。
大声で自分に投げられた言葉に心が乱れてしまったのだ。
「ふん。その女、まだ見習いか?はははははは!そんな見習いに私を倒せると思ってるのか!」
コートはユリアに言う。
「大丈夫。私達が守る。今は集中だ!」
ユリアは頷いて、また目を閉じた。
その様子にイライラしたアストロ・ジーラスは、手を軽く振った。
すると、大広間の壁から黒い霧が立ち込めた。
その黒い霧は鷹の形になったかと思うと、ユリアを目掛けて飛んでくる。
王宮魔法使い達は、その鷹を魔法で消しながらユリアを守る。
その時、大広間に騎士団が到着した。
そして、コートはその中からトーマスを呼んでユリアの隣に立たせる。
「ユリアさん。ぼくが隣にいます。安心して。」
ユリアはトーマスの声に少し安心し、さらに集中して行った。
黒い鷹は数を増やし攻撃をしてくるが、王宮魔法使いと騎士団がそれを跳ね除ける。
アストロ・ジーラスが更に大きな鷹を作り出した。
ジリジリと追い詰められていく王宮魔法使いと騎士団。
コートは焦っていた。
ユリアちゃん…頑張って。
心の中でユリアに語りかける。
「その見習いはダメなようだな!口程にもない奴らだ!最後だ!これでもくらえ!」
アストロ・ジーラスは両手を広げた。
手からビリビリと音を出しながら黒い霧が立ち込める。
「ははははははは!この国は終わりだな!私がいただくぞ!」
黒い霧が大広間に充満して、騎士団が1人2人と倒れていく。
コートが張ったオーラもあと少しで壊れかけていた。
ユリアは身体の中にある白の力をうまく掴めないでいた。
ダメ…私には出来ないかも…
ユリアがそう思ったが時、ユリアの心の中に聞き覚えのある声がした。
「ユリア…ユリア…」
「え?お母さん?」
「ユリア、貴方なら大丈夫よ。だって私の娘だもの。さぁ、落ち着いて。お母さんがついてるわ!」
「お母さん…私、まだ力がないの。ダメだよ…出来ない。」
その時、ユリアに触れるあたたかい手。
「ユリア。貴方が諦めたらみんな悲しむわ。貴方の愛する人達が。」
「愛する人…」
ユリアは心の中で母の言葉を聞いた。
「愛する人達の為に、やるのよ!ユリア!」
愛する人…
ユリアは沢山の人達の顔が浮かぶ。
トーマスの顔を思い浮かべた時、ユリアの中で何かが変わった。
「やるしかない!」
ユリアはやっと決心がついた。
その時、ユリアの身体の中にある白の力が次第に大きくなり身体から溢れ出す。
隣にいたトーマスはユリアの身体がキラキラと光出すのを見て、コートに言った。
「マグゴナル様!」
「!!よし!やったね!」
ユリアの身体はキラキラ光り、着ている白いローブが真っ白な光を放つ。
「みんな離れるんだ!」
コートの声で一斉に王宮魔法使い達とトーマスは離れた。
次の瞬間、ユリアの身体から物凄い白い光が風と共に放たれ髪を揺らした。
両手を広げたユリアの右手には、真っ白な魔法の杖。
左手にはセレニウムから貰った白い本が握られていた。




