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2つの本

目の前にいる女性はエバンの妻、そしてこの国の元王女であった。


今、王女様に抱きしめられちゃった…。


「すまないね、ユリアちゃん。コラ!モリーナ!邪魔したらダメだろう!」


「えー、だってぇ!トーマスくんの婚約者なんでしょ?見たいものー!あのトーマスくんを落とした可愛いユリアちゃん見たいー!」


エバンとモリーナのやり取りは、夫婦というより親娘のようだった。

しかも、元王女なのに物凄くフレンドリーな雰囲気に唖然とするユリア。


「モリーナ様。ユリアちゃんが呆気にとられておりますよ。」


エミネールはふふふと笑いながら話す。


「さぁ、モリーナ!行くぞ!王様にお会いするんだから!」


「えー!お父様にお会いするよりユリアちゃんに馴れ初め聞きたいわぁー!」


「ダメだ!それは今度だ!」


「ユリアちゃん!また今度ね!ゆっくりお話しましょうー!」


モリーナはエバンに手を引かれて連れて行かれた。


「………あの。」


「驚いただろう?」


「はい。」


「あの調子で、王様の反対を押し切ってエバンと結婚したんだよ。」


ユリアはなるほどと何故か納得していた。




騎士団の食事の支度もひと段落した頃。

セレニウムが宿舎を訪れていた。


「ユリアさんにこれを。」


セレニウムは分厚い本をユリアの前に置く。


「これは、何の本ですか?」


「これは、世界の黒魔術に関する本です。この中にアストロ・ジーラスが囚われている黒い鷹の黒魔術の事も書いてあります。」


「え!そうなんですか!」


「しかし、黒い鷹の黒魔術に関する記述は少なくて退治方法を詳しく書いておりませんが。何かの役に立つのではないかと思いましてお持ちしました。」


「ありがとうございます!とても助かります!」


「それから…」


そう言って、セレニウムは真っ白な本を出した。

その本には何故か鍵がかかっている。


「あの、この本は?」


「これは我が王宮魔法使いに代々伝わる本です。この鍵は、選ばれた者しか開けられないのです。」


「それをどうして……」


「実の所、私には開けられないのです。この鍵を開けた魔法使いは私の知る所だと1人だけ。」


「1人?」


「はい。貴方の母上です。」


「え!!お母さん開けられたんですか?」


セレニウムは頷いた。


「私が思うに、白の魔法使いにしか開けられないのではないかと思います。今までこの国に白の魔法使いが居たのは母上だけです。そして、その様な伝説の魔法使いならば王宮筆頭魔法使いになるはず。だから、この本は王宮魔法使いが管理して来たのです。」


「でも、私は王宮魔法使いではないですし。開けてしまっていいのでしょうか?」


セレニウムはその白い本をユリアに差し出した。


「王宮筆頭魔法使いである、マルトゥ・セレニウムが許可します。きっと貴方なら開けられると思います。来たるアストロ・ジーラスとの戦いに備えてお読みください。」


セレニウムはそれを言うと部屋を出て行った。


目の前にある2冊の本。

黒魔術と白の魔法使い。


しばらく眺めていたユリアは、まずは黒魔術の本から読んでみる事にした。




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