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パレードの日

ユリアは悩んでいた。


この1時間ほど、自分のクローゼットと睨めっこを続けている。


「どうしよう……何を着ていけばいいんだろう。」


例のパレードは明日。

トーマス様の勇姿を見る。


そして、トーマス様のご友人の妹君のお相手も任された。


そんな時、なにを着ていけばよいのか……まったく分からん!!


ユリアは普段ほとんと外出をしない。

買い出し以外の外出をしたのは何年前だっただろう。

思い出すのも困難なほど前というのは確か。


こんな時、自分の出不精を恨む。


「着ていく服が全然なーい!」


ユリアはベットに突っ伏して唸る。


「はぁ……どうしよう。」


明日のパレードでは、その妹君のお付きという事で騎士団の家族の方々が座る場所に入れてもらえるようで

おそらく騎士団の家族の方々は着飾って来る。


私はお付きだから、普段着でいいだろうけど

せっかくのトーマス様の晴れ姿を普段着で見るのは…


しばらくユリアは考えた。


「あ!そうだ!」


ユリアは、屋根裏に走った。

そこには、沢山の衣装ケースが置かれていた。

その中の1つを開けて、中の洋服を漁る。

そして、1枚のワンピースを見つけ広げた。


それは、母の形見のワンピースだった。

薄い水色でふわっと広がるAラインのワンピース。

白い襟に黒いリボンがポイントだ。


母がユリアくらい年の頃着ていたワンピース。

母は大切な思い出があるとかで大事にしまっていたのを思い出した。


「なかなかいいじゃない。」


年代物なので、袖口が多少綻んでいるが

そこは治せばなんとかなりそうだ。


「よし!お母さん!このワンピースちょっと借りるね!」


ユリアはワンピースを抱えて部屋に戻ると

ワンピースを直し始めた。






次の日、鏡の前でクルッと回転するユリア。


「うん、上出来だわ。」


母の形見のワンピースに、白い靴、それと母の形見の白い帽子を合わせてみた。


何十年も経つのに綺麗なままのワンピースはきっと仕立てが良いのだろう。

手触りも着心地もとてもいい。


ユリアは、ソファに置いてあった白いバックを持ち

待ち合わせの場所まで急いだ。



待ち合わせの場所は、エディの家族が街で滞在するお屋敷。

周りのお屋敷より一回りも二回りも大きいそのお屋敷の門の前に立つユリア。


どうしよう……すごい大きい。


ユリアは今更ながら後悔した。


考えてみれば、庶民の私が貴族のお嬢様と一緒に出かけるなんてない事だ。

貴族の中には庶民の事を蔑む者もいる。

本当なら恐れ多い事。


あの時は、トーマスの勇姿を見たいという一心で引き受けたけど……

本当によかっただろうか。


門の前で自問自答していると

そのお屋敷のメイドであろう女の人に声をかけられた。


「失礼します。ユリア・エスターク様でいらっしゃいますか?」


「は、はい!」


私は我に返り答えた。


メイドに案内され、お屋敷の中に入る。

見たこともない調度品が並ぶ廊下を歩き、ユリアはリビングに通される。


「こちらで少しお待ちくださいませ。」


メイドはゆっくりと頭を下げて引き返して行く。


ドクドクドク……

心臓の音だけが響く。


先ほどとは違うメイドが紅茶を持って現れた。

紅茶を置くと、また静かに下がって行くメイド。


その時、リビングのドアの方から

明るい声がした。


「お待たせしました!ユリアさん?わたくし、ミュゼットと申します。」


リビングに入ってきたその女性は

なんと言ったらいいのだろう……目が大きくて色白の物凄く可愛い人だった。


ミュゼットはユリアの前まで来ると

ユリアの両手を掴み、ブンブンと勢いよく振った。


「ユリアさん!お会いできて嬉しいですわ!今日はわたくしの兄が変なお願いをしてごめんなさいね。」


ユリアは休みなく話し続けるミュゼットを前に絶句している。

貴族のお嬢様を間近で見たのは初めてだったし、何しろミュゼットは物凄い美人だ。

ユリアはミュゼットの言うことに、ただ顔を縦に動かすしか出来なかった。







時間は戻って、昨日の夜の事。

久しぶりに会った兄が真剣な顔をしてミュゼットに話し出した。


「ミュゼット、今回は俺の親友の為に一肌脱いで欲しいんだ。」


「あら、トーマス様の事?」


「そう、あいつ今好きな人が出来てな!」


その言葉にミュゼットは絶句した。


「え、ええ!トーマス様が!あのトーマス様が?」


「そうなんだよ。それで今回のパレードにその子を誘ったんだがな、色々な事情でお前の付き添いでって事になった。」


それからエディはミュゼットに計画を話した。


「という訳で、とにかくお前はユリアさんと仲良くなるんだ!色々聞き出してくれな!」


「それは責任重大ですわね!お兄様!わたくしにお任せください。」


「ああ、お前ならできるよな?」


「もちろんですわ!……それで、そのお兄様?そのお礼と言うのなんですが……」


「ああ、何でも好きなもの買ってやる!」


「欲しい物はないんです。そ、その、来る時にハンター様を……ハンター様を一緒に連れて来て欲しいのです。」


「お、おい。ミュゼットお前……」


「ハンター様とちょっとだけお話をしたいの。お願い!連れ来てくれるわよね?」


「あ、ああ。まぁ、それくらいなら。でも!父上と母上には内緒だぞ!」


「もちろんですわ!キャッ!明日はおめかししなきゃ!」


ミュゼットは、早速明日着て行く服を選び出した。


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