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いちごいちえ  作者: 夏みかん
第3章
14/52

向き合う視線 3

結局、昼休みに入るや否や、水星みなせに連れられて教室を出て行く京也に健司と春香は呆然とし、苺もきょとんとしていた。明人だけが興味ないといった感じでさっさと弁当を広げていたが。教室もざわめく中、悲壮な顔をしていた京也の顔が鮮明に記憶に残った。そして今は放課後、明人と健司、そして京也は帰宅準備をすると急いで科目棟裏に向かっていた。雑草が生い茂る塀との間を調べるためだ。基本的に早く帰るよう言われているだけに、掃除の時間ぐらいしか調査する時間はなかった。


「しかしお前、どうなってんだ?」

「何が?」


分かっていて、京也は健司の質問を聞き返したのだ。


「風見だよ風見!なんで急に?」

「昔一度助けたことがあって、それを思い出したみたい」

「また助けたのかよ・・・お前はキューティ3のボディガードか?」

「知らないよぉ」


小走りながらそう言いあう2人をよそに、科目棟1階へとやって来た明人は渡り廊下との境目にある非常ドアを開けた。ここは内側からかけるロックのため、中からなら鍵がなくとも開けられる。元々災害時の非常出口なためにそうなっているのだ。3人は手に持っていた靴に履き替えて外に出た。足首が隠れそうなほどの雑草を掻き分けてまずは校舎に沿って歩く。誰かに見られるとまずいので京也が見張りをしつつ前を歩く2人についていった。


「で、飯食いながら何を話したんだ?」

「・・・延々自慢話だよ。自分がどれだけ素晴らしいかやら、財力があるだの、料理ができるだの」

「まるでいい嫁アピールだな」

「やめてくれよぉ・・・」


明人の冷静な言葉に泣きそうになる。はっきり言って水星は好みではない。女性に好みというほどのものは持っていないが、少なくとも水星は性格的にも受け付けられない。


「浅見は友達、歩ちゃんは彼女候補、そんでもって風見が嫁候補・・・・・羨ましいにもほどがある」


学校の3大美女との関係に本気で嫉妬する健司。その言葉に本気で困る京也。話を聞きながらも事件の手がかりを探す明人。


「まぁ、俺なら歩ちゃん一択だな。それか浅見・・・うん、悩むなぁ、やっぱ」

「一拓じゃないし・・・」

「イジメに遭わないように気をつけろ」


またも明人の冷たい言葉に背筋が寒くなる。休み時間といい、昼休みといい、男子生徒からの嫉妬の視線は今思い出しても怖いくらいだ。


「そうだな。浅見と仲良く、風見とイチャラブってのは周知の事実。これで歩ちゃんから告白されたのがバレたら、リンチか無視か、それとも・・・」

「マジ止めて」

「その告白も保留中だからな。彼女を好きなヤツからしたら殺したいぐらいだろう」


さらに怖いことをさらっと言う明人に京也は全身の血の気が引いていくのがわかった。


「さっさと一枝にしておけ」

「そうだぞ!それだと歩ちゃんのファンに殴られるだけで済む」

「・・・・どっちにしろ殴られるのな」


その泣きそうな言葉に健司は大笑いし、明人もまた口元を緩ませる。


「ないな・・・何もない」


結局、校舎の端から端まで見たが、何もなかった。3人は元の場所に戻り、今度は体育館の方へと回ってみるが、やはり塀沿いに何もなかった。ということはやはり科目棟の1階教室部分が怪しい。


「でも、教室は全部警察が調べてるだろうしねぇ」

「残るは第二運動場から屋内プール・・・でも、人を運ぶのを考えると校舎だよなぁ」


ぐるりと見渡しながらそう言う健司に頷く京也に対し、明人はじっと裏山を見ていた。


「もう一度坑道を調べるのが一番か」


その言葉に健司は頷いたが、京也は科目棟の方を見ている。廊下を歩いている人物に目が行ったのだ。そんな京也の視線に気づき、明人もそっちを見ればダンボール箱を抱えた千石の姿がそこにあった。その千石は非常出口に一番近い数学準備室に入っていく。


「やはり教室を調べたいところだな」

「数学準備室なら、新城先生に頼んだ方がいいだろうけどな。千石はウザイ」

「それには賛成」


そう言う京也の携帯が軽快な音を奏で始めた。取り出せば、歩からのメールだった。


『調査中ですか?下駄箱の前で待ってます』

「熱い、熱いなあ・・・・」

「行ってやれ」


冷やかす顔と口調の健司に対し、明人は無表情でそう言った。相変わらず抑揚のない声で。


「明人たちは?」

「体育館周りを調べる」

「じゃぁ、ドーナツ店で落ち合うか?」

「オッケーオッケー」


健司の提案ににこやかに笑いながら京也は走っていった。


「近いうちに修羅場が見れそうだなぁ」


嬉しそうにそう言う健司の言葉も無視して歩き出す明人は春香がここにいないことにホッとしていた。いた場合はまたつまらない三文芝居を見せられるからだ。そんな明人の心情も知らず、健司は頭の中で歩と水星の修羅場を想像し、一人ニヤけるのだった。



中庭側から校舎に入った京也が昇降口にたどり着く。1年生の下駄箱の前に立つ歩の姿を見かけた京也が近づこうとした矢先、不意に肩を掴まれて立ち止まった。


「木戸君、昼間はゴメンね」


そこに立っていたのは水星だ。周囲に人が誰もいないせいか、あのスーパーで出会った時のしおらしい水星になっていた。珍しく取り巻きもいないため、京也は少し戸惑いつつも愛想笑いをしてみせた。


「ゴメンって、何も気にすることないって」

「普段は私、ああだから・・・ああすることで、自分のステータスを保てるの」

「あー、そうなんだぁ」


目をキラキラさせている水星がずいと迫る。そんな水星に押されつつ、京也はどうしたものかを思案しつつも笑みを崩さなかった。


「自分を磨きたくてああしてるの・・・・他の男と付き合ったことがあるのは謝る、でも私が好きなのは木戸君だけ・・・・」


そう言って京也の首に手を回し、顔を近づけてくる。突き出される唇、閉じられる目。逃げようと身をよじるが首を固定されてしまった。唇が間近に迫り、京也が観念した瞬間、グイっと後ろに引っ張られて水星から引き剥がされた。あわてて振り返れば、怖い顔をした歩がそこにいた。京也の腕を掴んだ状態で。急に離れた京也に目を開けた水星は自分を睨む歩と目があった。途端に同じように歩を睨みつける。


「何よあんた・・・」

「何って、こんなところで何をしようとしてたんですか?」

「あー、お子様には分からないわよねぇ・・・キスよキス!愛のキス!」


そう言われた歩は冷たい目を京也に向ける。出会ってから見たことのないその目と悪鬼のオーラに京也は首がちぎれるほどぶんぶんと横に振ってそれを否定した。


「先輩が勝手にしようとしてましたよね?木戸先輩もよけてましたし!私、見てましたから!」

「照れてただけね」

「ありえない」

「事実だもん、ねー?」


俺に振るなと言いたいが、京也は引きつった笑いを返しつつそれを否定した。


「いや、それはないねぇ・・・俺たちそういう関係じゃないもん」

「えー、私を助けてくれたじゃない!」

「あれはそうだけど、あれ以来会ったのってついこの間だし、それまで接点なかったし」

「そうだけど!私はずっと木戸君を想ってた」


どこまでが本当かはわからないが、京也が知る限り水星は3年生のイケメン男子と付き合ったり、大学生と付き合ったりもしている。そんな水星の言葉を信じるわけにもいかないが、自分を助けた名も知らなかった人物に対して好意を寄せていたことは分かった。だからといってこの行動が正しいとは思えない。


「私も木戸先輩に助けられました!」

「木戸君、優しいから」

「そうです!だから好きなんです!」


歩の大胆発言を聞きながら周囲に人がいなくて心底良かったと思う京也だったが、自分を睨む水星に困った顔をしてみせた。


「木戸君は困ってるようだけど?」


今の表情を逆手に取られ、今度は歩から睨まれてしまう。


「とにかく、恋愛は自由・・・あんたみたいな小娘は引っ込んでいなさい!」

「引きません!」


睨みあう2人。どうしていいか困っていると階段を下りてきた紀子と目があった。そんな京也の視線に気づいた水星と歩がそっちを見やる。目を細める水星、苦い顔の歩、首を傾げる紀子、最上級に困った顔をする京也。


「さよなら」

「あ、うん、さよなら」


変な雰囲気を感じ取った紀子が挨拶もそこそこにそそくさと下駄箱に向かう。紀子に挨拶を返しつつこの状況からどう逃れるかを考える京也。そんな京也をチラっと見た水星が紀子に近づいた。


「へぇ、木戸君には挨拶するんだ?」


靴を履き替えつつ今の言葉に水星を見る紀子は意味がわからないという顔をしていた。


「友達だから、普通するでしょ?」

「友達ねぇ・・・知ってるわよ?あんた、いっつも屋上で木戸君と会ってるってね」


腕組みをした水星の言葉にかばんを持って立った紀子は涼しい顔を向けた。


「そうね。よく一緒になるわ」

「好きなの?」

「え?」


突然の言葉にさすがの紀子も絶句した。


「あの小娘は木戸君が好きなんだってさ。あんたもそうなの?」

「違うけど?」

「ふぅん・・・・」


目を細める水星に対し、ため息をついた紀子は頬を指で掻いた。


「帰ってもいいかな?」

「どうぞ」

「じゃ」


短くそう言うと京也の方を見ないで昇降口を出て行った。その背中を見送りつつ、水星はあからさまな舌打ちをした。不機嫌そうな顔をしつつ京也の方を振り返れば、そこには京也も歩もいない。この隙にと2人で姿をくらませたのだ。


「チッ!あの泥棒猫!」


そう言いながらきょろきょろしていると、水星のスマホがメロディを奏で出した。変わらぬ怖い顔のまま電話に出る。


「はい・・・・うん、わかった、すぐ行くから」


簡単にそう言うと電話を切り、もう一度周囲を見てから靴を履き替えて出て行った。その様子を階段の陰に隠れて見ていた京也と歩はホッとしつつ、下駄箱の方に向かって歩いていった。


「先輩って、誰でも助けちゃうんですね」


棘のある言い方に振り返れば、怒った顔をした歩がいた。さすがの京也も困った顔をしつつ、全てを話すかどうか迷いつつ、大筋でそれを話すことを決めた。


「2年前の夏に絡まれている女の子を助けたんだ。自転車だったから、そいつらを蹴飛ばして女の子を後ろに乗せて走って逃げた、それだけ」


その言葉を聞きながらも歩の鋭い目は京也を離さない。どうしたものかと思案する京也は掃除を終えて人が少し増えてきた昇降口を出るように靴を履き替える。歩は憮然としたまま自分の下駄箱に行って靴を履き替えた。


「この間スーパーでぶつかった時に、それが俺だと気づいたみたい・・・で、さっきのアレ」


ボサボサ頭を掻きながらそう言う京也を見る歩の表情に変化はない。だが、どす黒いオーラは消えているように思えた。


「それだけなんですね?」


小さいながらも力のこもった声に、京也は頷いた。


「信じていいんですね?」


怖い口調だが、京也は真面目な顔をして頷く。


「じゃぁ、信じます」


納得していない表情だが、歩はそう言った。そんな歩に対して申し訳ない気持ちで一杯になった京也は小さく頭を下げてゴメンと謝った。そんな京也を見た歩の表情も緩む。京也も強張った笑みを見せた矢先、歩が鋭い目をしたまま右側を振り向いた。


「そこ!何やってるんですか?」


誰もいなくなった昇降口に歩の声が響く。京也もそっちを見れば、下駄箱の陰から覗いている4つの顔がそこにあった。それに加えてスマホのカメラが3つ。


「あんたら・・・・・まさか・・・・」


恐怖に怯える京也の声を聞きながら明人が陰から出てくるとさっさと靴を履き替えだした。残る3人、健司、苺、春香が携帯をしまいつつ無言で自分の下駄箱へと向かう。


「録画、したのか?」

「見てるだけじゃつまらんからな」


靴を履き替えた明人の声にくらくらとめまいがする京也。そんな京也の元にやってくる健司たちはニヤニヤしつつ困った顔をしている歩を見やった。


「恋する乙女は強いなぁ・・・歩ちゃん、やるぅ!」


両手で指をさしつつウィンクした健司の言葉に照れた顔をする歩。


「『だから好きなんです!』・・・・歩ちゃん、最高!」


歩の台詞を真似た春香が右手の親指をグッと突き出した。歩は照れながらも同じように親指を突き出すが京也はもう立っていることも困難ほどふらふらだ。今の春香の言葉からして結構な修羅場を見られていたことになる。しかも携帯のムービーで録画までされているのだ、ネットにアップされないことを祈るばかりだ。


「・・・どの辺りから見てたのさ?」


下駄箱に手をついて倒れそうな体を支えつつそう聞いてみる。すると明人が少し何かを考えるような仕草を取りながら口を開いた。


「キスされそうな時に彼女が乱入した辺り、だったか・・・」

「そうそう。でもさすが明人だね、録画しろって言われなかったら後悔してた」


春香はスマホを大事そうに撫でながらそう言った。


「お前が主犯か?」

「そうなるな」


呆気なくそれを認めた明人がさっさと歩き出す。ニヤける春香がそれに続き、次いで歩を促しながら健司が歩き出した。残されたのは泣きそうな京也とそれを見て苦笑している苺のみとなった。


「帰りたい・・・」

「ここで帰った方が後で怖いよ?」

「・・・・・・・最悪だ」


苺に頭をよしよしされつつ、京也も重い足取りで昇降口を後にしたのだった。



ドーナツ店は少し混んでいたこともあって、いつもの席には座れずに2人掛けの席を集めて座った。ソファ側に女子が座り、歩の前に京也、苺の前に明人、春香の前に健司といったいつものペアが出来上がる。本心を言えば春香は明人と、健司は苺と対面で座りたいが、これが一番基本形になっていたので仕方がなかった。食欲のない京也はコーヒーだけを頼み、残りのメンバーはドーナツ1個に飲み物を用意した。


「あれ?珍しいね、苺がドーナツ1個なんて」


春香の言葉に小さく微笑む苺に首を傾げると、明人が自分の分析を口にした。


「おそらく体重計に乗ったんだろう。その結果、だな」

「う・・・・いじわる・・・」


図星だったようで苺は唇を尖らせながら明人をジトッと睨む。そんな苺を見ても表情を変えず、明人は優雅な手つきでコーヒーを飲んでいた。


「しかし、幼馴染とはいえ、よくそうまで行動を把握できるな」


感心する健司の言葉尻に嫉妬が表れていたが、それに気づいているのは明人だけだ。


「付き合いが長いからな」

「スリーサイズとかも、知ってるのか?」


目を細めてそう言う健司に苺が赤面し、俯く。春香が健司を睨みつけ、歩は苦笑をもらす。京也はどうでもいい感じでコーヒーを飲んでいた。


「なんとなくはわかる」

「えっ?」

「ええっ!」

「うそ・・・」

「そうなんですか?」

「マジでぇ?」


全員の驚き様を見ても涼しい顔の明人。


「変態だぜ・・・こいつ・・・」

「ってかストーカー?」

「怖いですね・・・」

「変だよ、変!」


俯いたままの苺をよそに一斉に非難の声が飛ぶが、やはり明人は無表情だ。


「じゃぁ試しに言ってみろよ」


ここぞとばかりに健司がそう言うが、その魂胆は春香に見抜かれていた。


「あんた・・・それを聞いて何するの?想像?このド変態!だいたいあんたはデリカシーがなさすぎる!」

「合ってるかどうかを知るためだろう?」

「大々的に言う必要ないでしょぉ?」

「知りてーんだよ!」


ここで思わず本音が出た健司があわてて口をつむぐが後の祭りだ。両手で口を押さえつつ目だけで全員を見やった。歩が軽蔑のまなざしを向けている。京也が呆れた顔をしている。苺は顔を真っ赤にしつつも困った目で見つめている。春香は目を細めつつ片眉をピクつかせている。明人は氷の視線を送っている。


「・・・・・・・ごめんなさい」


もう素直に謝るしかない健司は涙目でうつむいた。そんな健司を見つつ歩が声を出した。


「苺さんにだけ耳打ちして確かめればいいんじゃないですか?」

「まぁそうだけど・・・そうまでして明人の推理を検証したいもんかねぇ」

「でも気にはなるよねぇ」

「・・・あんたも変態?」


思わぬ標的にされつつある京也はあわてて首を横に振る。


「違うって・・・明人の推察がさ・・・当たってれば凄いと思うし、外れるところも見たいっていうか」

「まぁPGがPGでない部分、ってのも悪くないか・・・」


京也の意見に頷きつつ、春香は苺にそれでいいかを聞いてみる。苺は一瞬明人を見つつ、赤い顔をそのままに小さく頷いた。


「よし、明人、苺にだけ言え」


仕切る春香にため息をつき、近づく苺の耳元に口を寄せた。それだけで苺は耳まで真っ赤にしていたが、明人の囁きにみるみる表情を変化させていく。赤い顔をそのままに何度もうんうんと頷いた。


「ほとんど、あってる・・・」


恥ずかしそうにしながらも苺がそう言った瞬間、周囲の客が注目するほどどよめきが走った。


「凄いのは凄いけど・・・・・・変態?」

「風呂を覗いてるんじゃないのか?」

「幼馴染って凄いんですね?」

「褒めていいのかどうか・・・」


賞賛とも罵倒とも取れる言葉を聞きながらも涼しい顔の明人に対し、健司はちらちらと苺へと視線を走らせていた。


「あんた・・・後から聞こうとか考えてるでしょ?」


その視線を逃さない春香の言葉にあわてて視線を逸らすが、もう遅い。思いっきり足を踏まれ、絶叫した。


「ところでさ、体育館へ行った割には早かったねぇ」


京也の言葉に明人がそっちを見る。足をさすっている健司は京也を見る目に涙がたまっていた。


「あの後すぐに千石に見つかってな、帰れと言われた」

「そうそう・・・んですぐに退散したわけだ。あいつうるさいから」

「んで昇降口入り口で私たちと出くわしたんだよ」


明人と健司の説明に苺が付け加えた。


「そしたら言い争いが聞こえてくるしさぁ」


ニヤニヤする春香に対して苦笑を返す歩だったが、京也はやぶ蛇だったと後悔をする。


「しっかしお前・・・キューティ3の3人全員に絡むとは、ボサボサ頭のくせしてモテすぎじゃん」

「でもおかげで面白くなってきたし」


にっしっしと笑う春香と健司はさっきまでの争いが嘘のような息の合いようだ。


「お宝映像も撮れたしなぁ」

「あとで歩ちゃんにもあげようか?」


その言葉に困った顔をしつつ、歩は頷いた。京也は突っ込む気力も失せてコーヒーを口へと運ぶ。


「木戸」


不意に明人に名前を呼ばれ、京也は渋い表情を向ける。また何を言い出すのかと思いつつ明人の言葉を待った。


「明日にでも坑道に行けるか?」


突然の申し出に京也の顔つきが変わった。


「明日はバイトだけど・・・急ぐの?」

「ああ」

「じゃぁ、明後日でいい?」

「ああ」


その言葉に全員が驚いた顔をしてみせる。


「いいけど・・・急だね」

「急ぐ理由でもあるのか?」


健司の言葉に明人が説明を始めた。ボイラー室のあった場所は間違いなく坑道と繋がっていた。用がなくなったパイプなどを撤去するよりも埋めてしまうかその真上に何かを建てるほうが手っ取り早く、それを実行したために屋内プールはあの場所になった。そして近くに地下に通じる道も何かを埋めた形跡もない。塀と科目棟の間にもなにもなかった。ならば科目棟も屋内プール同様、そういう意図をもって作られた箇所があるはずだ。それも、まだ地下に通じる道を残したまま。だからこその扉なのだろうと説明し、全員が納得する。


「扉が噂にならなかったのには理由がある。ネットで検索したら、扉の場所にあの台を立てかけ、他にも木箱や何かが積まれていた画像を見つけた。つい2年前のものだ」


他にも探検をした様子が書き込まれていたが、画像はなくともどれも同じだった。つまり、最近になってドアを露出させた者がいるということだ。


「あそこで犯人が現れたのも、ドアを隠すためだろうと思う。警察が坑道を調べたのは土曜日らしい。これは一条から聞いた」


一条とは一条啓というお調子者で有名なクラスメイトだ。土曜日に裏山へ行った時には警察によって封鎖されていたと話していたのを聞いたのだ。一条もまた事件に興味を持って裏山が怪しいと睨んでそこへ行ったらしかった。


「犯人は警察の動向でもわかってたのか?」

「かもしれんが・・・先を読んで扉を隠しに行った可能性もある」

「でも台をどけたらバレるよね?」

「だから見ておきたい」


早く確認したい理由もわかり、全員が納得した。とりあえず今度は全員で行こうということになる。幸い明後日は28日。29日が祝日のために夜でも外出はしやすい。


「決まりだな」


明人の言葉に全員が頷いた。



翌日、学校側から連絡が入り、突然の休校になった。またも女子生徒が姿を消したのだ。春香が方々に連絡を取って仕入れた情報によると、3年6組の牧田鈴奈まきたすずなという生徒がいなくなったという。今回はかばんも一緒になくなっているのだが、靴が残されていたことから事件が発覚したのだ。またも起こった校内での失踪事件に警察も大きく動き、一部のマスコミやインターネットの掲示板などでも騒がれることになった。それに鈴奈もまたキューティ3の選抜において上位にランクインしていた美少女だ。友達とカラオケに行く約束をしていたが、急用で遅れていくと伝えていた。しかし2時間以上も連絡がなく、待てど暮らせど来ないために電話をするが繋がらず、学校へ見に戻れば靴がある。早く帰るように言われていたことから教師に連絡をしたそうだ。美少女の連続失踪事件。ついに2人目の犠牲者が出てしまった。

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