タズアーレ討伐
(in冒険者ギルド)
「おぉ……」
思わず声が出る。もの凄い盛り上がりだ。何ここディスコ?
「アスカさんはギルドカードを持っていますか?」
「……あるわけない。」
そりゃこの町来て1時間も経ってないんですもの…。するとリースは手際よく説明してくれた。
どうやら目の前にある水晶に手を翳すだけで発行されるらしい。偽造できないハイテク水晶。再発行には1000万Gもかかるそうだ。
「はい、出来ました。」
受付のお姉さんが笑顔で渡してくる。これはアイテムBOXでいいか。BOXを開きアイテムの欄へ放り込む。
「え!?空間魔法…!?」
「?…どうかしたか?」
「アスカさん空間魔法使えるんですか!?」
「はぁ?」
すっげぇ驚いた顔でこっちをみてくる受付とリース。…まぁ、アイテムBOXというものがこの世に存在してないというわけか。よくみるとリースの腰には袋が提げられている。
「……まぁ、リースにはあとで説明しとくわ。」
「えー…分かりましたぁ…」
無事(?)登録を終え掲示板という依頼の紙が張られている場所へ移動する。もの凄い数だ。リースに分かりやすい説明をしてもらうと……
・ランクはF~5Sの12段階ある。F→E→D→C→B→A→S→1S→2S→3S→4S→5Sとなる。
・Fランク…駆け出し冒険者
・Eランク…平均よりちょっと強い冒険者
・Dランク…三流の冒険者
・Cランク…二流の冒険者
・Bランク…一流の冒険者
・Aランク…無双できる冒険者
・Sランク…歴史に名を刻む冒険者
・1Sランク…国から直々に護衛のクエストが下る冒険者
・2Sランク…国から直々に討伐のクエストが下る冒険者
・3Sランク…国から直々に討伐のクエストが下り無双できる冒険者
・4Sランク…人類最強
・5Sランク…神の域
「最後考えるのメンドくなっただけだろ。」
「あ、バレました?…まぁ言葉では言い表せないほど強いということで。」
「ふぅん…」
…やっぱ目指すは5Sだろ!神って呼ばれたい!まぁ道程は長そうだな…12段階だし。
「さて、何にします?私的にはFランクの紫草回収とか…」
「討伐だろ、JK」
「は!?ありえませんって!あとJKって何ですか痛い痛い!髪引っ張らないでください!!」
「分かったらさっさと歩く。手始めにAランクでいいな。」
俺が選んだのはAランクの『タズアーレ討伐』の依頼。
「お父さんお母さん、先に命を絶つ不幸をお許しください…後恨むのでしたらアスカさんで。」
「何をぶつぶつ言ってんだ。すいませんこれお願いします。」
「いやぁぁぁ……まだ死にたくないですぅ……」
「了解しました。あと、話し合うことも大切ですよ?」
「大丈夫です、俺が守ります。」
「!?」
「あらあら……それでは、いってらっしゃいませ。(微笑ましいものを見る目)」
(in森の奥)
「……俺が守る…俺が守る…ウフフフフ…///」
「……?」
さっきからリースの様子がおかしい。まぁ静かになって連れてきやすかったが。あと受付嬢の反応がよく分からんかった…見下されてんのかなあの目。だったらさっさと討伐するまでだな。
「……ハッ!ここはどこですか!?」
「え?討伐クエストの…「はあぁぁ!?!?」おぉうるさい…」
一気にギルドの中のリースに戻った。もうワケが分からん。
「そんなにAランクが嫌なのか?」
「当たり前です!Aランク冒険者ってすっごい少ないんですよ!?」
「…Sランクは?」
「もっと少ないです。世界中に20人とか。」
「まぁまぁいるじゃん。」
「嘘でしょ!?この世界の人口は500億人ですよ!?」
「」
……え、そんないるの?せいぜい5~60億かと…じゃあSランクとか超すごいじゃん?やばいかも、負けるかも。勢いでやりすぎたなぁ…
(ゴゴゴゴゴ…)
「JOJO!?」
「じょじょって何ですか!?この非常時に冗談はやめてください!」
「いやこの音はまさに…じゃなくて!どこから聞こえるんだこれ!?」
感覚を限界まで研ぎ澄ます。この低い音の正体は…
「地面かよ……」
もう嫌な予感しかしない。俺はリースを抱え上級身体強化魔法の【跳躍】を使い上空へ逃げる。ただ無詠唱のせいで約200mほどのジャンプに。
「きゃぁぁ!?!?え、嘘、下ろしてくださいぃぃぃ!!!」
「そんな暴れなくてもそろそろ落ちるぞ。」
「落ちるんじゃなくて下ろすんです!何でそんなにれいせっ……」
一瞬上空で止まり一気に急降下。ジェットコースター特有のあの感覚が体中を駆け巡る。ちなみに俺は絶叫系マシンが大好きだ。リースは……
「あーもう無理です。何かもう一周して大丈夫になってきました。短い人生でした、しかし我生涯に一片の悔いなし…」
大丈夫そうだな。いや、大丈夫ではないんだけど…一周したのならそれに越したことは無い。悲鳴上げられても困るしな。
「中級魔法無属性【浮遊】」
残り10mぐらいでふよふよと浮く魔法をかける。さすがにあの高さから落下したら死ぬからな……リースが。俺は防御力999だ、かかってこい。
(トン、)
地面に足をつける。何も衝撃は無い。
「……きゅぅ。」
「…ばたんきゅうって古くねぇか?」
だが恐怖からかリースは気絶してしまった。まあこれが普通か。
……改めて地面から出てきた魔物を見る。名前は『タズアーレ』、予想が付かないような名前だが…まさか蠍とは思わなかった。しかもでけぇ。何こいつ。
「キシャァァァァ!!!」
「っ…うるせぇ……」
地面を裂くような音を発し威嚇してくる。俺はリースを地面に降ろし防御魔法をかけておく。これで4~5回の攻撃は無駄だろう。
「……勝負だ。」
「シャァァ!!」
言葉が分かるのか分からないのか、いきなり突進してくるタズアーレ。うわ、キモいキモい。
「おらぁ!」
相棒の闇斧を手加減なしで渾身の一振り。
「ガッ…」
「………え?」
……頭が、取れた。え、何この事態。Aランクだよね?500億人いるなかでほんの一握りなんだよね?それなのに一振りで決着てどゆこと?だれか説明してよ…
「ん~……」
「!」
いいところで起きたぞリース!さぁ、俺に教えてくれ。
「んにゃ……あれ、タズアーレ…頭…あれ…まだ夢の中か、おやすみ…」
「はい現実逃避やめようか。とりあえず説明ぷりーず。」
「すいませんこっちのセリフです。」
「ですよねー☆」
「……。」
「……。」
一瞬の静寂のち、意識がはっきりしてきたリースは……
「得絵エェェェッェェッェぇえぇぇぇぇ江え獲得!?!?!?!?」
俺が生きてきた中で一番の声量を持つ少女だと判明した。耳が、耳が壊れるっ……!
(優しく穏やかに和やかに説明中)
「……とりあえずアスカさんが規格外なことだけ分かりました。」
「だよねー……」
結局何も判明せず。ちなみにこのタズアーレはSランク冒険者が丸一日かけて倒すそうです。俺の体どうなってんだ。
「……まぁ、帰りましょうか。」
「……だな。」
余談、受付の人が気絶した。




