公園
ギー。ギー。寂れたブランコの音がする。もうこの公園ができてから長いのだろう。俺と神田はベンチのない公園であるからブランコに座っていた。
どちらも話そうとしない。これでは拉致があかない。俺は意を決して神田に尋ねる。
「単刀直入に聞く。どうしてバレたらアウトにも関わらず、俺に依頼料を払った?そこまでしてこのサークルを大きくしたかったのか?」
神田はブランコから立ち上がった。「僕の父さんのことは知ってるかな?」「親父?」そういえばアリスが前に言っていたな。確かうちの大学の学長だがなんだかで偉い人だと。
「父さんはうちの大学の学長でね。生まれた時から親の影響は大きかった。この大学に入れたのも学長の
娘だからとか言われるしね。こう見えても一般受験だよ?周りからはいつもそういう目で見られていた。
だからこそ、親の力は関係ないってところを見せたかった。そのためには何ができるかを考えた。知名度の
ないサークルを大きくしたかったのはそういうことさ。でも正攻法で成り上がるだけが方法じゃない。
使える手段はなんでも使った。君には謝ったけど、君の活躍を利用させてもらったのはそういう事実だ。」
「はあー」なんだかな。ため息が出る。「よくわからんが認めて欲しかったんだな?それで自分の力で何かできれば認めてもらえるからと。じゃあそのためにお前が俺に払った金はなんだ?お前が稼いだ金か?」
神田は首を横に振る。「お前って不器用だよな。別にそうならそうと言えばよかったのに。確かに最初は
お金もらってノリノリだったし嬉しかったよそれは。でも別にそんなんなくても今もこうしているし。」
なんだこれ。説教のつもりがだんだん恥ずかしいこと言ってねーか俺?「ま、まああれだよ。もうそいういうのなしな。」神田は黙っている。おいなんか言えよ。恥ずかしいやん。
「そう。君のいう通り僕は不器用なんだ。確かに最初はそんな理由で部を大きくしたかった。
でもこうして活動をしているうちに途中から部を大きくすることも興味がなくなった。」
え?今までの話なんだったの?俺の恥ずかしい説教は?
「両親や周りに認めてもらいたかった。だから始めたけど、本当は純粋に友達が欲しかっただけなんだ。
だから君やアリスちゃんと知り合えてよかったし、結果としてアリスちゃんのおかげで部は大きくなったけど、今は君らがいてくれればそれでいいと思ってる。」神田ははずがしげもなくそんなことを言ってくる。
普段の神田ならこんなこというのは想像ができない。それをこうしてまっすぐに伝えてくっれるのは嬉しいけど
恥ずかしい。何よりお前がそんなこと言うキャラか?作者さん、ちゃんとキャラ作りしてください。
「そ、そっか。それならいいんだけどさ。」
「ごめんね春樹くん。きっかけはそうだったって話さ。大したことないだろ?僕の野望なんてそんなもんだよ。」
誰しも同じなのだろうか?一人がいいなんて人はいないのかもしれない。こんなにクールな彼女ですらそうなのだ。
俺も・・・
「さて今日は帰ろう。もう部室に戻るのもめんどくさいしね。」「そうだな。」
俺らは駅に歩いて戻る。駅についても俺らは特に会話することさえなかった。でもそれは決して居心地の悪いものではなかった。
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「で言いたいことはそれだけか?」「はい。我々の活動に・・・」「断る。」オカ研部長の田辺が間髪入れずに
そう言う。
「では交渉決裂ということで。」「そのようだな。」「後悔しますよ?」「後悔するのはどっちかな?」
彼女はそういうと席を立ち上がり、部屋から出て行く。
「あなたたちは何も知らない。巨大組織になるということの意味を。」男は怪しげに笑う。外はどんよりとした
雲で覆われ始める。
これから何が起こるのであろうか?オー、ブッダ。