第61話 前 霧
「止まれ! この道は封鎖されている。立ち去れ」
「冒険者だ。依頼を受けて偵察しに来た」
「通行証は持っているのか」
「ああ。通行証ならここに」
「確認した。ついに来たのか。今更だけど、まあ、来ないよりはましか。では、まずはこの山について説明しよう。かなり低い山ではあるが、例の村は自給自足で暮らしてるため、山道と呼べる道はない。だから割と迷いやすいんだ。コンパスは持っているのか」
「当然だ」
「この地図を持っていけ。それと、まあ、余裕はないとは思うが、機会があったら日の出を見に、村の隣の湖に行ってみるといい。知る人ぞ知る絶景だぞ」
「あ……ああ」
「じゃあ、健闘を祈る」
私が悪いなのでしょ。カイル兄さんがbランククエストを受けなかった原因は私にあるのだから。私が例の村の人達を死なせた……いや、違う! 違う? でもまあ……あ、そうだ! もしかしたら例の村が襲われたのは、私達がbランク冒険者になる前のことかもしれないし。きっとそうだよ、うん。
衛兵さんに聞いてみる? ダメ! 怖い! 聞けないよ! でも、聞いてみないとずっと気になってしまう……いやでも、もし本当に私のせいだったら……。
「ケイリ、どうした? 行くよ」
「う、うん」
私のせいで……いや、私のせいじゃない! 他にbランク冒険者がないから……。私のせいじゃ……。誰か、私のせいじゃないって言ってよ……。カイル兄さんに……いや、ダメ。せっかく記憶消したのに。苦しい、胸がキュって、張り裂けそうだ。
「霧が濃くなった。皆、はぐれないように気をつけよう。お互いの位置を良く把握しつつ周囲の警戒も怠らな……ケイリ、どうした? 何故泣いている」
私、また泣いて……。
「ち、違うの、これは……そう、昨日、アイテムの、メンテナンスで、夜更かし、しただけで」
「いや、涙声じゃん」
「カイル達は何も気にせず前を向いて進んで」
「アシュリー、ケイリは任せた」
「任された」
アシュリーはそっと私の肩に手を置いた。それだけで安心感が湧いてくる。
「いつか、きっとケイリの心の病気も治してみせる。その前に、絶対に自分の命を絶ってはダメだぞ。約束だぞ」
「私は、死ぬべき、悪い子だと、しても?」
「だとしてもだ」
少しだけ楽になった。
「やぱい、コンパスがイカれた」
「は、はあ!?」
「針が回りっぱなし……どうなってる!?」
「迷ったってこと?」
「落ち着け。ここは山だ。下れば下りられる。ちゃんと周りの地形を観察するんだ」
「ぎゃーっ!」
「なんだ!?」
「何かが、私の足を!」
メイの足を掴んでるのは、血色のない手だった。




