身体が不自由な少女すみれ
「ねぇねぇ母さん!いつものお話し聞かせて!!」
そう言って二人の少女が駆け寄ってくる。
「ふふっ、本当に二人はこの話が好きね」
私は小さく微笑みながら二人を抱き、ベットに座らせる。
「いいわ。また、最初から話してあげる。遠い遠い昔のことを」
ーーーー
カタカタカタカタ
「やぁね、まだいるわ。あの役立たず」
「あの子はいいわね。守ってもらうだけでいいんだから」
家から出れば、いつもそう言われる。
私だって好きで車椅子に乗ってるわけじゃないのに...
ここは、女神と魔神が争っている最前線の村
そんな村に、私は目が見えず、歩くことも出来ない状態で生まれた。
原因は、魔力過多
多すぎる魔力が上手く体を巡れずに、目と足を不自由にさせる。
せっかく12歳になったのに、誰もお祝いしてくれない。
そう考えると胸が苦しい。
私が俯いてると
「守ってもらってるだけなのは、自分もそうだって忘れてない?それとも、あなたたちも戦ってくれるの?」
1人の少女の声が響く。
その言葉に
しんっ
と静かになる。
少し経つと、ドタバタと走り去る音がした。
「ねえさま、また一人で家を出たのですか?私たちが迎えに行くと言っていますのに」
そう言うのは、妹のりりなだ。
「だって、せっかくの誕生日なんだもの。
早く会いたくて」
「気持ちは分かりますが、姉上にあんな言葉を聞いて欲しくないんです」
私の耳を塞ぐように手を添えるのは、双子の弟しゅん。
「そうだよ?すみれ。私たちが訓練をしてる間くらい待っててよ」
車椅子を押しながら言うのは、親友クリスタ。
三人は村を守るために、いつも朝早くから正午まで訓練をしている。
「クリスタはすごいなぁ。将来は戦闘組に加わってくれって言われてるんでしょう?普通、スカウトは15歳くらいにされるのに」
そう言うとクリスタは、照れくさそうな声で
「えへへ。私はね、すみれや村のみんなを守れるように強くなりたいんだ」
”守る”その言葉に胸がぎゅっとする。
私も、みんなを守りたいのに...
「ねぇ、すみれ。歌おう?」
木々が揺れる音がする場所、村の中心でクリスタが言う。
「いいよ。歌おっか!!」
私がそう答えると同時にベンチに座る音と、うれしそうに笑うりりなとしゅんの声がした。
「閉じた瞼の 裏側で
小さな光が 揺れている
消えそうで
でも まだ
確かに生きている
届かなかった 言葉たち
胸の奥で 息を集め
震えが 熱に変わる」
私たちが歌っていると、誰かがつぶやく。
「...最後のペルージュ」
クリスタは歌を止めた。
クリスタからは、悲しさが伝わってくる。
「ねえ、すみれ。この歌はさ、なくしちゃいけないと思うんだ」
その声は何かを決意したようだった。




