よく分からない話
「し、師匠?魔法が使えないって……本当ですか?」
「うん」
「またまたぁ。そんなわけ無いじゃないですか。」
「……」
「魔法が使えないのなら、なんであの時風で私を助けられたんですか?」
「あれは魔法じゃないよ」
……?
この人は一体何を言っているんだろう。この世界であんなことができるのは、魔法以外にないでしょ?
「なら、あれは一体何をしたんですか?」
「あれは祝福を使ったんだよ」
「祝福?」
そんな単語を私は初めて聞いた。祝福っていうのは魔法と何が違うんだろう。
私がそんなことを考えていると、それについて師匠が話し始めた。
「祝福が何か分かってなさそうだね。」
「その言葉を初めて聞きました。」
「祝福っていうのは、魔人が元来持っている力のことだよ。」
「魔人?」
「ま、それについて話すとすっごい長くなってめんどくさい。だからその辺は自分で勝手に勉強して」
「……はい」
この人、一番気になる部分を面倒くさいで片付けたんですけど。とても気になるけれど、その気持ちは心に秘めておこう。それはそうとして。【魔人】そんな生物がこの世界には生きていたんだ。
この世界の歴史を、私は全く言っていいほど知らない。だから、魔人や祝福なんて言葉は初めて聞いた。
英雄を目指す旅の中で世界について知ることもあるのだろうか。
……。
ーー一つ師匠に聞きたいことを思いついた。
「そういえば師匠」
「ん?まだ質問あるの?あんまり長くならなさそうなやつでお願い」
「大丈夫です。それで師匠」
「祝福というのは、魔人が元来持っている力のことなんですよね?」
「あんまりよく分かってませんが、それを使える師匠は”魔人”なんですか?」
「……気づいちゃった?」
私の口は閉じなくなった。師匠はそれを見て大笑いする。
この人は本当に意味が分からない。ここで暮らしは初めて一週間経ったけれど、この人が何を考えていいるのか、どんな人なのかすら分からない。それどころか魔人だったことすら知らなかった。
師匠にはあといくつ秘密があるのだろうか。
「頭が爆発しそうな顔してる。どした?」
「師匠のせいですよ?」
「あはは。ま、でもとりあえず魔法は教えられないかもしれない。」
「そうでした。魔法が無理なら師匠は何を教えてくださるんですか」
「……料理とか?」
「いや、それも教えてほしいですけど!でもそうじゃないんです!」
「ごめんごめん。ふざけずに言うと、剣なら教えてあげられるかもしれない。我流だけどね」
剣!師匠の口からそんな名前が出てくるなんて思わなかった。というより師匠って剣使えたんだ。見た感じどこにもなさそうだけど。
でも、学べるのならそれは凄く嬉しい。
「本当ですか!嬉しいです!」
「それは良かったよ」
「でも、魔法もちょっと使ってみたかったです……」
剣を学べることは嬉しい。けれど、魔法を使ってみたかった気持ちがまだ心の内にある。
だから、少し残念ではある。
「うぅん……もしかしたら。もしかしたらだよ?私の祝福は風魔法に近いから、教えられるかもしれない……」
「それでも大丈夫なのでお願いします!」
「なら、明日から修行を始めよう」
魔法も教えてもらえることになった。使えるようになるかは分からないけれど、分からないままよりはずっといい。
明日から私の初めての修行が始まる。
一体何を教えてもらえるのか。
ーー今日は寝られるか、少し心配だなぁ。




