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世界の始まり

風が少し肌寒い夜。

私は檻のついた馬車に揺られながら、その風を楽しんでいた。

何故か。

最後になるかもしれないから。

なんでも私は明日——


売られるらしい。

——夜というのは何故こんなにも心地がいいのだろう。

私は昨日までただの村娘だった。

...今は奴隷の身分だが。

首には逃げられないように、隷属の首輪が嵌められている。

何故こんなことになったのか。

それは私が——


いや、私たちが猫人族だからだろう。


猫人族は高く売れる。


希少だから。


そして、血に魔力が宿っているから。


何故、猫人族などに生まれてしまったのだろう。

私はこの耳が、尻尾が、歯が。

全てが嫌いだ。


私たちはマギアテーゼという魔法国の奴隷商人に売られるらしい。

なんせ私たち猫人族は、魔法に対する利用価値が高いらしいから。

——あぁ、一体どんな地獄が待っているのだろう。


ダメだ。


これからの未来を想像すると、暗い事ばかり考えてしまう。


なら、人生最後に向かう旅路くらい夢でも考えてみようかな。


夢。


考えていると心臓がバクバクと鼓動を早める。

持っても仕方がない夢を見ても、意味が無い。

ありもしない希望を持ってしまい、死ぬのがさらに怖くなるだけだ。


...でも。


もし叶うのなら。


歴史に名が残るような——


「英雄」になってみたい。


その時、世界が反転した。

そうじゃない。馬車が転倒したのだ。

私は森の道に投げ出されていた。

「ひっ...ヴィルトベアが出た!」

ヴィルトベア...

見つけた生物全てを襲うその気性の荒さと獰猛さからここら辺で恐れられているモンスターだ。


こうしては居られない。早く逃げないと。


「お前ら!あいつを引きつけろ!」

ぐあっ...

どうやら隷属の首輪が発動したらしい。

「嫌!やめてください!」

「やめてくれ!俺たちは利用価値が高いんじゃなかったのか!?」

「煩い!多額の金と信用を失うのは痛いが、それはまた積み立てればいいだけの話」

「今は私の命が最優先だ!商品が減るのは痛いが、私が死ぬよりは安い」

目の前で同族達が簡単に引き裂かれ、食べられていく。

泣き叫ぶ子どもの声、子どもを守ろうとし身体が消し飛ぶ村の大人達。

皆昨日までは一緒に笑って、遊んでいたのに。

私もああなるの?

——それもいいかもしれない。

売られ、酷い仕打ちを死ぬまで受けるくらいなら、ここで一思いに殺されるのもいいかもしれない。

そう思い私は両腕を大きく広げ、モンスターへと近づいていく。目の前まで来た時思った。

もう。

夢を見ることもないんだな。

「おい!早く走れ愚図が!誰だこんな馬を用意したのは。国に帰ったら家族の1人を晒し首にしてや——」

パキッ——

あれ...

身体が言うことを聞く。

見れば隷属の首輪が効力を失っていた。

その瞬間、もう持たないことにしていた希望が心に宿った。

私は死に物狂いで森に走り出した。

同族達のことなど頭になく、あったのはただ生きたいという希望のみ。

一度は振り返って助けようとした。

だが、足が言うことを聞かなかった。


足を石が打つ。


枝が頬を傷つける。


動けないくらいに身体が痛い。


それでも止まれなかった。


森を死に物狂いで駆け上がり、気付けば山頂付近まで来ていた。

後ろから何かが来ている感覚はない。


私は生き残った。

これからどうするか。そんな先の事は考えなかった。今生きていることをただただ喜んだ。


満点の星空の下。


そんな美しい景色の下。


私は嗚咽し、大声で涙を流した。


来ないと思っていた美しい明日に。


希望を馳せながら。

初めまして。シラチクと申します。


「色めく世界に透明を」をこれから書かせて頂こうと思います。


私自身初めて小説を書くのはこれが初めてなので、拙い部分もあるかと思いますが、少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。


更新は不定期になると思いますが、最後まで少しずつ書き切るつもりなので、よろしければこれからもこの物語の旅を見守っていただけると幸いです。

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