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無魔力の第六王女は敵国に攫われる  作者: 白雲八鈴


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第6話 倒れる第六王女

 翌日は軽傷者を全員治療し、翌々日には前線の拠点まで来ました。


「今日はついて回らなくていいわよ。明日から働いてもらうから」


 私はリヒトとクオンにそう言って、前線の医療班の元に向かいます。

 因みに明るい茶髪のほうがリヒトで、話している感じでは、冷静で人当たりがいいという性格のようです。

 暗めの茶髪がクオンで、少し口が悪いようですね。あと目つきも悪い。

 二人の関係性は見たところ、主と従者という感じですね。


「今までも働いていないので、お供させていただきます」


 リヒトの言葉に私は足を止め、振り返りました。


「こっちは足場もないぐらいだから、ついてこられても困るのよ。ライラにも天幕にいてもらうぐらいなのだから」

「護衛として雇ったのでしたら、一人は付き添うべきかと」

「それでは命令よ。ついて来ないで」

「それで、働かない無能扱いされても困るのですが」


 ため息が出てしまいました。

 確かに契約書に入れましたけど、自死の命令なんて出しませんわよ。


「ついてきても、文句は聞かないわよ」

「仕事なので言いませんよ。クオン」

「はい、私は待機させていただきます」


 ついてくるというリヒトに背を向けて、医療班がいる天幕に向かいます。


 天幕に近づくと、天幕から溢れた者の姿が見えます。

 既に息をしていないもの、治療することを諦めた者たちです。


 これはもう天幕の中に収容出来ないために、外に出された兵たちなのです。


 流石に死んだ者は生き返らせることは出来ません。

 なので、うめき声を上げ母親を呼ぶ者の側に膝をつきます。


「大丈夫です。貴方は生きてお母様に会えますわ」


 お腹を負傷しており、包帯が真っ赤に染まっていましたが、すべて元通りに完治しました。


 ウジが湧いていたので、数日はこの状態だったのでしょう。そして、治療困難と見放されたのでしょうね。


「聖女様」

「もう、大丈夫ですよ。一眠りして美味しいご飯を沢山食べてくださいね」


 私はそう言って、次の負傷者の下に向かいます。

 このように治療していっていますと、本当に戦争など馬鹿らしいと思っています。


 いくら私が治療しても次から次へと負傷者が運ばれてきます。


 ライラから働きすぎだと言われ、止められることが何度もありました。

 ですが……いいえ、戦争を終わらせることができない私がいうことではありません。



「姫様! 夕食の時間には手を止めると約束をいたしましたよね!」


 終わらない治療を続けていると、私の両手が掴まれ、強制的に終了されてしまいました。


「あら? もうそんな時間?」

「配給の時間が過ぎても戻って来られないので、お迎えに上がりました。私との約束を破ったので、明日は休日です」

「でも、来たばかりで……」

「駄目です!」


 仕方がありません。

 一度、倒れてからライラから夕食の時間以降に働くことを禁止されてしまったのです。

 怒るとコーヒーを淹れてもらえないので、私はしぶしぶ立ち上がります。


 が、クラリと視界が揺れました。


「大丈夫ですか?」


 金色の瞳が私を覗き込んできます。金色?


「大丈夫です。立ちくらみがしただけですから」


 支えてもらっている手を押しのけて自分で立ちました。

 少し力を使い過ぎたようです。


 魔素を扱うのにリスクはないと言いたいですが、どうやら脳に負荷がかかっているようで、ときどきシャットダウンするように眠ることがあるのです。


「だいたい護衛なら、主である姫様を止めるのも仕事の一環でしょう!」


 ライラ、それは護衛の仕事には入りませんよと言おうと、振り返ったところで足に力が入らなくなりました。


「姫様!」


 あ、これ後でグチグチ言われるやつですわ。




 目を覚ませば、よく見る天幕の天井でした。


 誰かが運んでくれたのでしょう。

 視線を横にむければ、怒ったような泣いているような微妙な表情を浮かべたライラと視線が合いました。


「おはよう、ライラ。どれほど寝ていたのかしら?」

「二日です」


 そう二日ですか。まぁ、短いほうでしょう。


「お加減はいかがでしょうか」

「喉が渇いた以外は全回復よ」


 元々は魔素の使い過ぎなので、寝て起きれば回復しています。


「お水です。あと、果物をもらってきていますので、あとでお出しします」

「ありがとう」


 気兼ねなく水が飲めるっていいですわよね。

 水を生成する魔道具を作ってもらって大正解でした。


「昨日、今日と姫様にお見舞いが山のように届いております」

「あらそう?」

「野花とかはいいのですが、お酒は突き返しておきました」

「そうね。気持ちだけ受け取っておくわ」

「手紙はどういたしましょうか?」

「そのうち読むわ」

「では束にして置いておきます」


 人前で倒れるとか駄目ですわよね。

 私が心配されてどうするのです。


「それから、役立たずの護衛共はどう処分いたしましょう。鞭打ちの刑にでも処しますか?」

「しなくていいわよ。倒れたのは自己管理がなっていなかったからよね」

「本当にそうです」


 あ。護衛を庇ったら、ライラの何かに火をつけてしまいました。


「だいたい、到着してすぐに動くのを止めていただきたいものです。旅の疲れも取れていないにも関わらず、治療を行うから毎回倒れるのです。それに……」


 ああ、これあと一時間ぐらい聞かないと駄目なのでしょうね。


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