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無魔力の第六王女は敵国に攫われる  作者: 白雲八鈴


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第18話 は?私のサイン?

 まさか! 私がキラキラエフェクトを出すことになるとは……。


 帝国に即座に連行された私は、リヒトから口に指を突っ込まれ、食べたものを強制的に吐き出すという醜態を晒してしまったのです。


 いや、あれぐらい自分で解毒できたし。


 しかし、なんとか将軍許すマジ!

 食べ物に毒を入れてしまったら、それはもう食べ物じゃない!


 食べ物を粗末にするヤツは絶対に許せない。


 まぁ、生きているのか死んでいるのかわからないけど。

 あれぐらいの量じゃ死なないよね。


 すぐに治療師を呼ばれていたし。


「姫様。薬草茶です」

「これね。苦いよね。口の中が引きつるよね」


 ベッドの上の住人である私は、ライラから毒々しい緑色のドロドロした液体を受け取った。

 お茶というには烏滸がましいほどの、粘度がある。


「大丈夫です。お水も用意しております」

「なかったら、口から緑色の液体を出しているよ」

「やめてくださいね。掃除が大変ですから」


 わかっているわよ。


 私は鼻をつまんで一気に緑色の液体を流し込む。そして差し出したコップが抜き取られ、別のコップが渡されたところで、一気に流し込む。


「あー死ぬ。この薬草で死にそう」

「だったら、毒草を食べるのをやめてください」

「いや、毎回言うけど、私が好き好んで毒草を食べるように言い方をしないでよ」

「床にピッと捨てればよろしいではないですか」

「それあとで、私が偏食だという噂が流れるやつね」


 毒は致死の反転が効きにくいのだ。

 猛毒ならまだしも、時間がかかるものや、合わさって毒になるものは、私にも毒の効果が残ってしまう。


 はぁ、多分あの将軍。毒なら私に効くという情報を得て、毒を盛ったのだろう。


 まぁ、致死的毒を用いた者たちは、誰も生きていない。腹痛だったり、吐き気だったり、大したことがない毒を盛った者たちから聞いたのだろうね


「ティア姫。気分はいかがですか?」


 ものすごく申し訳なさそうなリヒトが、寝室に入ってきた。


「あのようなことを豪語しておきながら、この有様。本当にすみません」


 リヒトは私がいるベッドの側に立ち、頭を下げてきました。

 ……それやめてください。皇帝から頭を下げられる私って何ということになるので。


 リヒトは私に不快な思いをさせないと言っていたことについて、謝っているのでしょう。しかし、あの侍女長やなんとか将軍の気持ちもわからないでもないです。


「リヒト様」

「はい、ティア姫からの叱咤ならいくらでもお受けいたします」

「それが原因ですよね?」

「さて?」


 わかっているのに、わかっていない風に首を傾げないでください。

 ちょっとかわいいと、思ってしまったではないですか。


「はぁ、王城の中での態度と、今のリヒト様の態度の違いが原因ですよね? 私が悪影響を及ぼしたと思われても仕方がないと思います」


 するとリヒトは、私の右手をとって両手で包むようにして言いました。


「それの何がいけないことなのでしょう?」


 ……だから、頭を簡単に下げてはいけない立場の皇帝が、私に頭を下げるなと言っているのです。


「私がティア姫に魅了されてしまったので、それは仕方がないことですよね?」

「みみみみ魅了!」


 私はそんな変な術は使っていませんわよ!


「皇帝陛下。姫様は人の悪意には慣れておられますが、人の好意には鈍感なので、はっきりと言ったほうがよろしかと」


 ライラ! 何を言っているのですか!


「好きな女性から嫌われたくないと思いますし、危険から遠ざけたいと思うのも当たり前のことではないのですか?」


 すすすすすき……鋤? 隙? 好き!


 え? リヒトが私のことを好き?

 そんな好意を持たれるようなことをした記憶なんてありませんわよ!


 ちょっと顔が熱くなってきました。


「ですので、カイヴァザール将軍は、不慮の事故で死んだということにしておきました」


 その言葉に血の気が引きました。

 死んだということにした?


「は? ……え? あれぐらいの毒では適切な処置を行えば死なないでしょう」

「はい、なので残念ながら適切な治療が行えなかったのです」


 ちょっと待ってください。治療師が駆けつけていたのは知っていますわよ。

 それ、最悪じゃないのですか?


 戦後処理の中で王国を制圧したカイヴァザール将軍が毒殺されたと。

 犯人は誰かと、いない犯人探しをすることになるではないですか!


「毒杯を与えている最中に、抵抗したヘラメイラ王妃の隠し持っていた毒の針に刺されて死亡。本当に残念でなりません」


 あ、それが不慮の事故ですか。


「しかし、事前にティア姫には手出し無用と通達していたにも関わらず、本当に愚かしい限りです」


 やはり、これはリヒトの態度があまりにも違うので、私を排除しようとしたことで間違いはないようです。


 たとえ、配下の者であっても命令に従わない者に対しては、厳しい処分を下すという、レインアルド皇帝陛下の噂と違わない処分内容。


 これは私の立場をはっきりとさせておかないといけません。


「リヒト様」

「はい、何ですか?」

「私は属国となったテターニア王国の人質なのですよね? それならば、それ相応の態度を皇帝として取らないといけないと思うのです」

「そうですね」

「ですから、いい加減に契約満了の契約書にサインをしていただけませんか?」


 するとリヒトは私から手を離して、背後にいるクオンに手を差し出しています。

 そして、何かが書かれた用紙を受け取りました。


 それをそのまま私に差し出してきます。


「私のサインはしておりますので、ティア姫のサインをいただけませんか?」


 は? 私のサイン?


 渡された書類に視線を落とすと、私が皇妃となる契約書があるではないですか!


「婚約届です。今すぐにでも婚姻をしても私は構わないのですが、流石に周りの者達がうるさくてね。一年以内には黙らせますのでサインをいただけませんか?」

「え? いや……あの……何故に皇妃に私が……」

「ティア姫を好きだと言った言葉に偽りがあるとお疑いで?」

「そういう……わけではなく、……皇妃という立場が……」

「ティア姫なら私と同じ未来が見えると思ったからですよ」


 笑顔で言い切るリヒトに、私は口をパクパクすることしかできず、考えるという言葉を言うことが精一杯でした。



読んでいただきまして、ありがとうございます。



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― 新着の感想 ―
ティアの好意に不慣れな様子がかわいらしいw
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