香西朋華と桝井鷹也の重要性-2
「重要なカギが、君だよ。桝井鷹也君」
「……?」
「そんなこと急に言っても、理解は出来ないよね。すまない」
「アンタ、何が目的だ」
「あの子。香西朋華ちゃんだね。彼女の母親はこの創造されし者量産計画に賭けていた。それは、兵器を量産する事ではない。自分の娘と夫。その両方を復活させる事だったんだよ」
「!」
「ありえないと、思っているのかい? そんな事はない。最初こそ、隠すためにと何もしていなかった様だが、最後の最後にその思いのたけを彼女につぎ込んだじゃないか。そして、それを気付かれない為に、無駄な工作までして」
「無駄な……工作?」
無駄に緊張感を覚えつつ、唾を一度飲む。そして、奴が次の口を開いたその瞬間に
「感情をデータに入れ、感情表現のデータをあえて入れなかった」
冷や汗が一粒流れ出た。
「感情…表現?」
「そうだ。彼女は、自分が今どのような感情を持っていると知りながら、その表現の仕方を全く知らないのだ」
「なんで……そんなこと?」
「何故だと。聞かずしても分かる事だろう? 娘を守り、尚且つ蘇らせるためだよ」
「!!」
「娘を完全に蘇らせるため、感情を入れ、それを悟らせないため、感情表現を入れなかった。この意味、分かるね?」
「……」
分かる。とか、分かんない。とかそんなの……理解が出来ないんだよ。
「香西由音は最初から、最強の小型兵器になんて興味なかったんだ。彼女の大切な物を取り戻したかっただけだったんだ」
その言葉を聴いた瞬間。俺の思考は止まった。止まったと同時に、後ろから搾り出すような小さな声が聞こえた。
「鷹也……様」