本拠地・潜入
崎守研究所はここから電車で約30分と言う近場にあり、駅からあまり離れていないのですぐに研究所に着いた。
「ここかぁ。デッカ」
なんか、おしゃれな全面ガラス張りの割と高層のビルがそれだった。驚きではある。
「桝井鷹也デスカ?」
人間のような肌をした10代前半の男の子のような姿をしたロボットが首をカク、カクっと一昔前のロボットのような動きで、読む気なんかない本の朗読をするよりも棒読みな声で話しかけてきた。
唾を一度ごくりと飲み、気持ちを落ち着かせようとする。
「ああ。そうだ」
「デハ、コチラヘ。ドウゾ」
カクカク、一つ一つの動きが細切れにされた動きをしながら、ドアへとゆっくりと前進していく。
「お前って、やっぱ創造されし者なのか?」
「ハイ、ソノ通リデス」
「シリアルナンバーは?」
「15号デス」
「15……。通りで」
香西朋華や神上エリナ、室式聖華のように、なめらかな動きや喋りが出来ないと思ったら、初期のロボットだからか。
ドアをノックするにもコン……コン。位の非常にゆっくりとしたスピードで、なめらかさとは無縁に生きている。
「所有者。桝井鷹也ヲ連レテ来マシタ」
「うむ。入れ」
分厚いドアの向こうでこちらの言葉に反応する声が聞こえた。
「失礼シマス」
「おお、待っていたよ。君が桝井鷹也君だね?」
入ると社長室と応接室を合体させた感じで、超気持ちよさそうな一人掛けソファにドーンと、中年くらいのおじさんが座っていた。
メタボリックな坊主頭の目が線の垂れ目で薄く生えた毛は白い、なぁんかラスボスぽっくないって言うか、サンタさんの話とかしてそうなおじさんだった。
その左右には神上エリナ、室式聖華がそれぞれ立っている。
「聞かなくても、分かるっしょ」
「その通りだね。君の話はよく彼女から聞いてるよ」
そう言ってある一点を眺めた。その方向をゆっくり見てみると。
「とっ……」
項垂れる様に俯いてひどく憔悴しきった様子の香西朋華が手首足首をそれぞれ鎖で繋がれていた。
手首の鎖がなかったら、きっと地面に床に倒れてると思うくらい。
「まぁまぁ座りたまえ」
そう言うと、手前にあった応接室にありそうなソファを指して本人も指した方とは反対側のソファに座った。