第79話 終着の夜白
この一連の騒ぎで、俺はまたDCAから迎えがきた。
前だったら、一方的な呼び出しだったのでだいぶ待遇は変わったよな。
翻訳付きで、とりあえずは最後の魔王だということで、護衛を外したりS級ダンジョン許可書をもらったり。
マヒルたちもそれぞれの魔王武器のことで召喚されて大変だった。
魔王オロバロスとその眷属全てを倒してダンジョンから出てきたときは凄かった。
朱雀校の生徒はみんな駆け付けていたし、きらりも護衛付きで外で待っていた。
「お兄ちゃんのこと助けてくれてありがとう」
パーティーメンバーにお礼を繰り返していたが、和成に二度握手しながら礼を言うのに少し兄として心配になったぞ。
きらりが高校にあがったらお付き合いとか、許さんからな。
俺以外ということでは、火乃森と橘がけっこう獅子奮迅の働きをしたそうだ。
勢いで結界の外にでた生徒をかばったり、援護したりして、クラスの中の評価が変わったらしい。
今度は心の底からマヒルに故意に怪我をさせたことを謝ると、それぞれクラスメイトと付き合い始めたようだ。
俺はまだ納得しがたかったが、とうのマヒルがその結果を喜んでいたので、何も言わなかった。
そんな俺は、誠志郎にお礼を言われた。S級のアイスエルフを使役できたお陰ということで、今後の活躍に要注目だな。
「まあ、マヒルがいいっていうならボクらが口にすることじゃないよ」
DCAのおごりで寿司屋を貸し切りにしながら、朝日がサーモンを口に入れる。
「夜白はまあ、案外根にもつよねー」
「そうそう、自分のことは驚くほど無関心なのにな」
大トロを頬張る和成と楓からもちくちく攻撃がきた。
回転しない寿司屋で、贅沢に寿司を食べる。
オロバロスの眷属から出た魔石を分けた人たちは換金したのかなぁ。
魔石は一部はクラスメイトにも迷惑料で渡し、駆け付けてきたプロハンターにも贈った。
特に宇賀神ハンターには気持ち多めに。豪快な笑い声で喜んで貰えた。
俺やきらりたちを護衛してくれたハンターにも渡し、DCAからは感謝されて。
残ったものはパーティーメンバーで分配したが、一番俺の分だけ多かった。文句を言おうと思ったが、999999の防御力を目指すのに必要ではある。
花鈴はSS級魔石を、どんどん使おうと意気込んでいた。
『いまのマヒル殿なら、返り討ちですぞ……ところで我が王、こんなときに玉子ですか?』
高級寿司で、玉子に舌鼓を打つ。
ちょっと通っぽいことしたっていいだろ。
『次は青魚をとって、それから――』
ザガンがおかんモードになった。
しばらく放っておこう。
「で? 二人は付き合うの?」
朝日からの質問に、俺はせっかくの玉子を詰まらせた。
和成のお茶のレスキューと、楓が背中を叩くのに救われる。
魔王四天王にも勝った俺が、あやうく寿司で死ぬところだった。
「楓たちは――」
「ずっと知ってるに決まってんだろ。にぶにぶ野郎」
「そうだよ、激ニブ大魔王」
酷い言われようだが、言われても仕方ないのかもな……。
「まだだよ。私が夜白くんにつりあってないから。ね? 夜白くん」
マヒルのほうは悠然と、いくらをたべながら返事をしている。
まあ、そういう話はしたが――。
「じゃ、ボクは諦めずにヤシロ追っかけるけど、マヒルはそれでいいんだね?」
「いいよー。そんな簡単に逃がさないけどねー?」
にこやかに寿司を食べているが、俺から和成たちが少し距離を置いた気がする。
待て、逃げるな!
寿司屋の大将は、見ざる聞かざる言わざるで無言で寿司を握っている。
俺は大トロサーモンを頼んだが、味するかな……?
「夜白くん! 海外のプロハンターから、あなたにS級ダンジョンのヘルプ要請が入ったわ! すぐ出られる?」
DCAの桜井ハンターが、突然入店してきて俺を呼ばわる。
え? 今か?
俺の大トロサーモンは?
「まあ、出迎えがあっちゃ仕方ないよな。オレが食べておいてやるよ」
「そうだねー、人気者は大変だなあー」
心にもないことを!
あいつら、帰国したら寿司を奢らずぞ。
「じゃあボクは空港まで見送りに――」
「私も行くから、今回は大トロサーモン諦めてね。飛行機の時間によっては空港で食べられるかもよ?」
お、そうか。
その手があったか。
「残念ながら軍用機なんです。夜白くんを乗せたらすぐに飛び立ちます」
桜井ハンターは残酷な事実をつきつけたが、見送りは許可するという。
轟滅黒剣は常に手元にあるので、自宅からパスポートをとってきた桜井ハンターに、車につめられた。
「いいなぁ、海外。夏に今度一緒にいこうね」
「それはみんなでね」
陽気な朝日の声にマヒルが釘をさす。
二年になれば、学校対決交流試合もあるし、三年になればプロハンター体験もある。
ますます、忙しくなりそうだ。
『いつまでも、付き合いましょうぞ。我が王。契約は無期限でついて参ります』
第二の生はまだ、始まったばかり。
とりあえずは、海外の仕事から頑張るぞ。
「また、忙しくなるね」
車窓を少し開けると、マヒルの髪がたなびいた。
右手は朝日、左手はマヒルに手を繋がれて、車は高速へと移動する。
さあ、みんなで前に進もう。
俺たちの行く道は、明るいから。
【END】
お付き合いくださりありがとうございます。




