第48話 E級ダンジョンのトラップ
秘密がないというのは気軽だな。
心なしか足取りも軽く、バスから降りた。
朝日はアグニラの大盾を装備できている。轟滅黒剣みたいに重たい設定がなくて良かった。
私服から学校の実技服に、全員着替えている。
一応、実技服も微々たる防御力が入っているからな。
「入場手続きはしているから、どんどん行っていいぞー」
宇賀神ハンターが、ダンジョン受付と握手をしているのを見ながら、俺たちは奥に進んだ。
配信ドローンはもうあげているが、戦闘がないので雑談書き込みが多い。
プロハンターのグループとすれ違うが、このダンジョンの幅は狭い。
魔肉なんかは高くて上位のハンターの食べるものになっているが、このE級ダンジョンにいるってことは素材探しかレベル上げだろう。
朱雀高だけじゃなく、北海道の青龍高校。京都の玄武高、長崎の白虎高。ハンターの学校は全国四校だけど、全員が全員A級ダンジョンやS級ダンジョンにいけるわけじゃないからな。
学校以外でも魔石を必要としている人はいるし、どのランクのダンジョンも人は多い。
「一気に下まで進むか?」
楓が一番後ろから声をかけてくる。
その楓目掛けて、後ろのパーティーからの流れ矢が迫った。
「そうしよう。ここは人が多すぎる」
俺が一足飛びに後方へ飛んで、その矢を手刀で叩き落す。
まったく、迷惑だな。
命中率が低いにしても、声ぐらいかけてくれればいいのに。
「……すまん、気が付かなかった」
「いや、ただ叩き落しただけだから」
背後のパーティーから「すみませぇ~ん」と女性の声が聞こえてきたが、かまわず進むことにした。
奥は奥で混んでいそうだが、少しは奥行きがあるはずだ。
宇賀神ハンターの声が聞こえてこないが、あちこちのパーティーに捕まってまた握手やサインをねだられてるんだろうな……。
「私、結界張ったほうがいい?」
さっきの流れ矢が気になったのかマヒルが杖を構えたが、俺は止めた。
「魔力ポーション飲むにしても、あまり疲れないでいくほうがいい。ポーションはもちろん用意してきたが」
「ちょっとー、その前にヒーラーの僕がいるんだけど~」
おどけた風に和成が大げさに拗ねてみせて、皆が笑う。
俺が準備してきたのは、アグニラ戦の大空ハンターを見習った結果だ。
収納しておけばいいし、いつでも使える。
ちなみに買ってきたのはザガンだ。人間に扮してDCAで購入してきてもらった。S級ダンジョンで売った魔石たちのお金があるので、資金はまだまだ潤沢だ。
それにしても、バランスのいいパーティーだよな。
近距離攻撃二人、タンク一人、遠距離一人、回復役一人。たまたまとはいえベストバランスだ。
俺を先頭に、雑魚は切り捨てながら走ることにした。せめて十層の魔法陣まで行きたい。
「でも、魔法陣てうっかり初心者が踏んだら危険じゃないか?」
「夜白くん、魔力量が足りてないと魔法陣は作動しないんだよ?」
「うちはパーティーに夜白がいるだけで、全国の移動魔法陣は使い放題なわけだな」
マヒルにくぎをさされ、楓に笑い話にされたが、俺はちょっとショックだった。
俺が大賢者の時代、そんなセーフティな配慮がない魔法陣を作っていたのだ。
そうかぁ、もう少し考えて作ればよかったな、前世のこととはいえ。
「あった、魔法陣!」
十層、二十層、三十層と魔法陣が並んでいるタイプだ。
「どうする?」
朝日に聞かれて、俺は首を傾げた。
「どうするとは?」
「一気に三十層いく?」
「行けるだろう」
F級ダンジョンの最下層でも、マヒルや朝日は今のレベルなら何とかなる。
ましてE級ダンジョンの三十層なら、大丈夫だろう。
楓と和成のレベル上げにはちょうどいいはずだ。
どう思う? ザガン。
……ザガン?
そういえば、ダンジョンに入る前までは俺と話していたザガンがいない。
つながりは感じるが、気配がやたら遠い。
何か買いにいったのか?
「じゃー行こう三十層!」
「行こう行こう、レベリング!」
朝日や和成はもう魔法陣に足を乗せている。
慌てて俺も足を乗せたが、そういえば宇賀神ハンターの声もE級ダンジョンに入ってから一度も聞いていない。
ザガンの存在感が薄いことと、追ってこない宇賀神ハンター。
どこか気になるが、魔法陣は発動してしまった。




