第46話 合宿が始まった夜白
途中、休憩をはさみつつ海辺の町へ向かう。
といっても、休憩のたびに宇賀神ハンターの大きな体が目立ち、サングラスしていてもまるで意味がなかったけど。
『我が王も似たり寄ったりでしたが』
そうなんだ……。思ったより配信の勢いが……しかもマヒルと朝日といるせいでセットで身バレすることが多く、一度休憩で下りたら囲まれてしまった。
以後、トイレ休憩以外は外に出ないようにしていて、楓や和成が買ってきてくれたご当地アイスクリームなどを堪能して過ごしている。
勿論、お金は払った。
「景色きれー!」
「海の匂いがする……!」
バスの窓があいて、磯の匂いが飛び込んでくる。
はしゃぐ女子二人と和成。
楓は半分寝ている状態だ。
まあ、俺もさっきまで寝ていたので人のことはいえない。バスの振動ってどうして眠くなるのかな。
「もうすぐだぞー」
宇賀神ハンターが声をあげて、楓が目を覚ました。
「……ね、ていうかいいのかな。国内最強のプロハンターに運転させてて」
「……そうだね……でも、ここには……もう一人国内最強がいるし」
朝日と目があって、俺はあくびを止めた。
国内最強?
『むしろ、我が王は地球最強なのでは』
いやいや、それはさすがにないだろ。地球だって広いんだからな。
海外にもっと強い人はいるだろ。
「次のダンジョンでは、ぼくの新しい盾が火を噴くよー」
火炎ガードの盾だからな。文字通り、火を吐くはずだ。
「先にバーベキューだよ?」
「そうだった」
朝日は楽しみそうだな。
もうレベルも35を超えているし、アグニラの盾があればE級ダンジョンは余裕だろう。
「配信はしないのかい?」
宇賀神ハンターがコーラ片手にハンドルを動かす。
俺たちは顔を見合わせた。
「プロハンターならまだしも、私たちのオフ日を見せても……」
「ねえ? 見たい人いるのかなぁ」
「見たいのは戦闘シーンなんじゃないんですか?」
「マヒルちゃんと朝日ちゃんはともかく僕らは……」
はっはと、宇賀神ハンターが笑う。
楽しそうだな、この人。
マヒルと朝日じゃないが、S級ダンジョンに潜ったりしなくていいんだろうか?
しかもギルマスだし。
「ドラマや映画のNGシーンとか、インタビューなんかが人気があったりするだろう? 配信者のオフショットも一定数見たいって人間は多いぞ。普段とのギャップかもな」
厳めしい俳優さんがバラエティー番組だと、ほっこりする人柄だったりする感じかな。
俺には特にギャップなどはないと思うが……。
「夜白くんは表立って言えないだけで、魔王アグニラを討伐した栄誉もある。大人の事情で口止めをしてなければ、もっと人気はでるんだろうが」
いや、特に言わないでいいです。
今の人気で十分にやっていけるんで。
親やきらりは何も知らないし。
『まあ、普通は魔王と聞けば驚きますからな』
バスが緩やかに速度を下げ、有料駐車場でバックしていく。
到着したのか。
「よし、着いたぞー! 荷物を忘れずに降りろよー」
引率の先生のようだな。
パラソルとテーブルを二セット借りると、一つはすぐ近くに設置してもう一つは宇賀神ハンターが目が届くギリギリに設置する。
まだ五月とはいえ、人ごみはそこそこあったが宇賀神ハンターに流れていった。
俺と楓で、バスからバーベキューセットを運ぶと宇賀神ハンターから遠いパラソルの側に組み立てた。
「配信始めるよー!」
マヒルは清楚なワンピース、朝日はショートパンツに大き目のTシャツでの配信を開始した。
確かに、ファンは学校の戦闘服しか見てないから嬉しいかもな。
俺は、何の変哲もないウインドブレーカーとカーゴパンツ。多分、何のサービスにもならない。
それでも一人だけ配信しないわけにいかないので、仕方なく配信ドローンをあげた。
「今、いつものパーティーで海にきています。場所は言えませんが、食後はE級ダンジョンの配信もやります」
〇夜白Pのオフショット!
〇めっちゃレア
〇みんなのビジュ、カロリー高い
〇マヒルちゃんと朝日ちゃんも見える~
〇仲良しだ~可愛いい!!
〇E級ダンジョンかー学校のより一段上に挑むわけね
〇いい最終回だった……
なんか、思ったより反応がいい?
投げ銭もどんどん飛んでくる中、俺たちはバーベキューを始めた。
俺は当たり前の顔で、魔肉を焼いていく。先にタレで漬け込んだやつだ。
〇夜白P、ワイルドな肉焼いてるw
〇何肉だろ、分厚……!
〇いきなりの飯テロww
〇俺も海いきたくなったわ
〇同感だが、こんな素敵な仲間はいない
〇ぼっちオタクどうしで夜白くんを語らないか?
宇賀神ハンターが言った通りだ……。
なんでもない図だけど、結構配信伸びてる。これで午後にダンジョンに行けば、もっと盛り上がりそうだな。
……ほどほどでいいんだけど。




