第38話 まさかなお手伝いをする夜白
何故、宇賀神ハンターが俺についてくるのか。それは、俺の秘められたパワーを狙う魔王をため――などという厨二病な意見は言えない。
そもそも、校長にはそういったのかもしれんが、他の生徒にはなんて説明しているんだろう。
と、俺の頭はうつろに動くくらい、誠志郎の説明は遠回しで分かりにくかった。
「無礼な態度をとっていた私がこんなことを言うのは……非常に申し訳ないのは分かっているのですが……」
だから、なんなんだ。次の授業が始まる前に俺は私服から実技服に着替えねばならない。
「ヤシロー! 大変だったね! って話し中?」
朝日が軽く飛びついてきて、和成や楓もこっちにやってくる。マヒルは、とみると配信画面を相手にまだ話していた。
「話の途中というより、誠志郎の話が要領をえなくて終わらない」
朝日は、にっこり笑うと誠志郎の首元を掴んだ。
「さっくり話せ」
「は、はい……」
俺の周囲で一番気が短いのは、実は朝日だったりする。和成は要領よく、楓は眼光で、マヒルは丁寧に進むので、こうした時には朝日の力が有効だったりする。
「私の、影魔を作るのを助けてほしいのです……!」
ああ、ネクロマンサーとして操れる魔物が欲しいのね。やっとかって気がする。
俺たちはみんなより深く潜っているし――まあそれでも十分浅いんだけど――スライムやゴブリンを影と使うには弱すぎるもんな。
「いいけど、そうなるとチームのバランスはどうなるんだ?」
誠志郎のチームは、火魔法使いの金髪ギャルの火乃森 と、オレンジ髪の槍使いの橘だ。その二人は、マヒルに卑劣な攻撃をして孤立している。
うちのメンバーに追加で連れてきてもいいのか……アビリティインストラクターの藤川の意見を聞くしかないのか、やれやれ。
「じゃあ、ぼくがあっちに混じればいいでしょ」
悩む間もなく、朝日があっさりと挙手した。いいのか……?
「だって、マヒルをあっちにやるわけにいかないし、合同だっていやでしょ」
和成がえらいなぁと呟き、楓が腕組みを解く。
「ぼくなら、授業一個分なら耐えられるし――レベル上、攻撃職にも勝てるしね。どっちかっていうとヤシロが配信しないから、ぼくらのチャンネルがあれるんだよ~。むしろそっちをどうにかして」
「あーわかる! 僕も~」
「……オレもだな」
そ、そうか……。マヒルと朝日と、ダンジョン最下層に行ってから何もアップしてない状況だもんな。周囲にそのとばっちりがいってたとは……。
くるりと誠志郎が朝日に一礼した。
「巻き込んで申し訳ない真神さん、しかし配信のこともいずれ私がトップ配信者になるので不破くんを責めないでほしい」
「はあ?」
そうか、誠志郎はトップ配信者を狙っているのか。代わってくれるならありがたいかもな。
『我が王~、こやつやはりどついてやりましょうぞ』
朝日が誠志郎の後頭部を小突き、和成たちはしきりとため息を吐いている。
みんなどうしたんだろうな。
『我が王ー、そういうところが……。いや、かえって王者の器……?』
なんだかザガンが悩んでいる間に、マヒルが合流した。
サインを終えた宇賀神ハンターも、こなくていいのにこっちに来た。
「どうしたの?」
「次の授業が始まるんじゃないのか? 夜白くん」
どういうことだ? という視線を浴びて今度は俺がため息をつく。
とはいえ、答えるのは俺じゃない。
「宇賀神ハンター、答えてあげてください」
「ダンジョンの事件でDCAが夜白くんの剣聖ジョブに注目してな。レベルに見合わない戦いをするのは君らも知っているだろう? そこで拳聖であるオレがしばらくの間、剣聖とはどういうジョブなのか張り付いて見学することになったんだ」
ほー、そんな建前があったのか。
マヒルの朝日だけ、俺の隠しステータスを知るものとして訳を知ってる顔をしている。
「……だいじょうぶ?」
小声で、俺の襟をつかんだマヒルの問いかけも、含みのある聞き方だな。
「大丈夫だ」
少なくとも、魔法も隠しステータスもバレてないからな。なんか魔王が出てきただけで。
『我が王、人はそれを一大事と呼ぶのです』
そうか。まあ、それはおいおいみんなに……こっそり言おう。宇賀神ハンターがいるから、チャットだな。
「んじゃ、着替えてくるから。マヒル、今日は誠志郎の手伝いだけど、いいか?」
「うん。あっそうか、強い影魔が欲しいんだね?」
俺よりよほど物分かりがいいマヒルは、すぐに答えに辿り着いた。
あーあ、もうダンジョンでは古代魔法が放てないのは残念だな。




