第7話 コンビニ
駅へ向かう通学路の途中に、
小さなコンビニがある。
帰り道、
その前を通りかかったときだった。
「ねえ」
彼女が足を止めた。
「ここって……」
少しだけ、不思議そうに見る。
「コンビニだよね?」
「うん」
「入ったことある?」
思わず笑う。
「あるよ。普通に」
「そっか」
彼女はガラス越しに店内を見る。
明るい光。
並ぶ商品。
行き交う人。
「……入ってみてもいい?」
「いいよ」
自動ドアが開く。
チリン、と音。
彼女はゆっくり歩く。
棚を見る。
飲み物を見る。
値札を見る。
一つ一つを、確かめるみたいに。
「すごいね」
「そう?」
「うん」
少し考えるように言う。
「こんなに揃ってるんだ」
飲み物の前で止まる。
一本取る。
「これ、おいしい?」
「たぶん」
「じゃあ、これにする」
外に出る。
彼女はキャップを開けて、一口飲む。
「……おいしい」
少しだけ目を丸くする。
その反応が自然すぎて、
逆に少し引っかかる。
もう一口。
――そのとき。
ほんの一瞬だけ、止まった。
完全に。
「……?」
視線が、手元に落ちる。
数秒。
それから、
何事もなかったように顔を上げる。
「どうしたの?」
「ううん」
少しだけ間を置いて、
「大丈夫」
笑う。
また歩き出す。
夕方の光の中で、
彼女は言った。
「こういうのも、いいね」
その声は普通だった。
でも、
さっきの“止まり方”だけが、
頭に残った。




