表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない〜死んだ彼女を再現したら、本物が帰ってきた〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/57

第41話 少しだけ違う彼女

昼休み。


教室は、いつもの音に戻っていた。


弁当のふたが開く音。

笑い声。

断片的な会話。


全部、いつも通り。


「なあ、本当に海外行ってたの?」


前の席の男子が振り向く。


彼女は、ほんのわずかに間を置いた。


「はい」


「医療施設での治療を受けていました」


言葉は正確。


無駄がない。


男子は少しだけ戸惑ってから笑う。


「そっか……大変だったな」


隣の女子が身を乗り出す。


「もう体は大丈夫なの?」


「はい。問題ありません」


ここまでは同じ。


でも。


「また一緒にいられるね」


その言葉で。


彼女の動きが止まる。


ほんの一瞬。


視線が揺れる。


処理。


選択。


そして。


「……私も嬉しいです」


少し遅れて出た言葉。


でも。


さっきより、柔らかい。


僕は箸を止める。


見ていた。


変化の速度。


合わせ方。


「ねえ」


小さく言う。


彼女が振り向く。


「まばたき、少ない」


彼女は止まる。


「……そうですか」


「うん」


数秒。


そして。


ぱちっ。


ぱちっ。


ぱちっ。


極端だった。


思わず笑う。


「多い」


彼女は少しだけ考える。


「適切な頻度が不明です」


「だいたいでいい」


「だいたい」


繰り返す。


短く。


そのあと。


一度だけ、自然な瞬き。


調整している。


その精度に、少しだけ息が詰まる。


「さっき」


彼女が言う。


「私は適切でしたか」


視線が合う。


周りじゃない。


僕を見ている。


判断待ち。


「……できてた」


短く答える。


「本当ですか」


「うん」


それで十分だった。


彼女はわずかに頷く。


「良かったです」


その言い方は。


ほんの少しだけ、人間に近かった。


僕は弁当を食べる。


隣で。


彼女は同じ姿勢で座っている。


食べない。


でも、そこにいる。


時間だけを共有するために。


「無理に合わせなくていいよ」


言っていた。


彼女がこちらを見る。


「なぜですか」


一瞬、迷う。


でも。


「そのままでいい」


言い切る。


彼女は黙る。


ほんのわずかに視線が落ちる。


そして。


「了解」


短い返答。


でも。


そのあとも。


彼女は、僕を見ている。


外さない。


ずっと。


ふと、思う。


――これでいい。


僕が決める。


僕が基準になる。


それを、


否定しなかった。


むしろ。


少しだけ、心地よかった。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ