第40話
???の人じゃ無いよ。
私の名前は西蓮久美。
公ではない謎の組織の一員。
まあ都市伝説好きとかでは知らない者なしの有名なビッグネームではあるけれどね。
家族はいなく、友達も彼氏もいない天涯孤独。ここではそんなに珍しい話でもないし、寧ろもっと重い事情を抱える人もいることを考慮するならば、私は今しがらみ無く生きれているだけで幸福だと言えるだろう。
そんなビッグな謎の組織に研究員として働く私は、今日も今日とて研究に勤しむ。
この組織の技術レベルは控えめに言って頭がおかしい。
特に目的も無く……
いや、個人個人の目標はあるかもしれないが、組織全体として目指すものが無いのが原因なのか、果てなく繰り返される研究の成果は、もはや人類の手に余る物すらあった。
今行われているプロジェクトもその一端と言えるだろう。
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提案主:登呂、模部
プロジェクト名:《こんな毎日に懲り懲りング。やっぱ癒しは必要じゃない?研究を言い訳にしてみんなの姫を作ろうよ!》
プロジェクト概要
突然だが、我々イルミナティの研究部門に陰鬱とした空気が漂っていることを認知した。
閉鎖的な空間に巣食う彼ら研究員にとっては何ら気にするものではない事象であったとしても、この組織という生き物において人間関係というものや、雰囲気というものは決して無視してはいけない類の物ではある。
コレをお読みの諸君、以前我々が研究との苦闘の末に生まれた概念実現装置を覚えているだろうか。
いや、忘れるはずはない。私としてもあのような結果になり泣く泣く実験を放棄する事になったのは今でも夢に見る。
全責任は私が負う。
もう一度実験を再開できないか。
前はモルモットのネズミを《化け物》へ変えるだけだった実験結果を、私は成功で上書きしたいのだ。あの装置を役立たずのスクラップにはしたくないのだ。
と、ここまでが建前だ。
正直あの結果を出した後何がいけなかったのかを徹底的に調べ尽くし、改善した装置に危険性はほぼ皆無と言っても良い。
だが結果だけを見るなら、失敗した時の被害は計り知れない。と判断した上層部に止められては中止にせざるを得ない。
ワイ、そんな上層部を買収してきましたンゴw
はいw出来ます、一回だけだけど実験出来まーす!
さてここでプロジェクト名を、もう一度見直してくれ。
《こんな毎日に懲り懲りング。やっぱ癒しは必要じゃない?研究を言い訳にしてみんなの姫を作ろうよ!》
さて、冒頭の話に戻ろう。
この研究部の陰鬱とした空気はどうして生まれているのか。
私は『この研究室に清涼剤が無いからだ』と考えた。
だってさ!この組織にいる研究員、みんな身なりに気を使うような人いないもんw
髪ボサボサで不潔感漂い、みんな燻んだ色の白衣着てりゃ空気も晴れないよねってコトです。
ここまできたら察しの良い方は気が付いたかな?
多分?というかほぼ確定?
この概念実現装置を使うと90%ぐらいの確率で美少女が創りだせるんだ。
『綺麗』『美しい』『可愛い』『天使』『女神』
この世には美を謳う言葉が山ほどある。
コレ、概念と言えなくも無いと思わない?……
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いや、そうはならんやろ。
まあ、コレだけじゃ無くまだまだ綴られていたんだけど…
とりあえずここだけ抜粋しておけば大体の事は分かると思う。
陰鬱な空気云々は一旦端に追いやって……
どうやら支部長はあの悪魔の装置の実験結果を上書きしたいらしい。
ここで気になるのが悪魔の装置、じゃなくて…概念実現装置だろう。
詳しいことはまるっと省くけど、この装置について語るなら一文あれば良い。
それは、人類が手を伸ばすには早すぎる領域に、片足突っ込むような装置だった。
コレを聞いて誰がもう一度実験をしよう、なんて思えるのか。
勿論反対意見も出た。それはそう。
なぜなら、《アレ》を生み出してしまったのは私たちの努力の結晶だったのだから。
でも支部長は前言を撤回しなかった。
「大丈夫。僕を信じな」
変なところでカリスマがある人だ。
自分達の子供とも言える努力の結晶といえど、前の二の舞のなる事を恐れていたみんなの背中を、押すどころか蹴って前に駆けさせたのだから。
でも一言だけ言わせてほしい。
「シリアスだけどさ、美少女を作る理由に納得がいかないんだけど」
見てくれてありがとうございます!
数多の声でってちょっとカッコよ……くないな、うん。
血迷いザムライ




