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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月30日(日)
283/283

第283話「すぐに背中の変な筋肉を痛めます」

 鳥のように青空を自由に飛ぶことができたらなぁ、というのは大多数の皆さんが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。ユリちゃんはそれ以前に自分の意思で自由に歩き回りたいという思いの方が強いですが、飛行への憧れも人並みにはあります。アニメなどでよく見かける近未来デバイスのように私自らふわふわと移動できれば、南川様へのサポートの幅も広がって今以上にお役に立てることでしょう。まあそんな話はさておき。

 空を飛びたいと言っても、その飛び方にも色々あるわけです。鳥や天使のように背中から翼を生やし、羽ばたかせて飛ぶパターンもあれば、頭にプロペラ的なものを装着して飛ぶパターンもあったり、超能力や重力操作などを使って自由自在に飛び回るパターンもあったり。実現できる可能性を度外視して考えたとき、皆さんはどんな飛び方が理想ですか。ぶっちゃけ、ユリちゃん的には超能力一択じゃないかと思うのですが、皆さんの意見はどうでしょう。

 だって、考えても見てください。例えば背中から翼を生やしたとして。人一人を飛ばそうと思ったら相当な大きさの翼が必要になります。それを動かす筋肉の負担は相当なものです。すぐに背中の変な筋肉を痛めます。地獄の筋肉痛生活の始まりです。仮にその問題が解決したとして、飛んでいない時にはそのクソでかウィングはどこに収納しておくのでしょう。間違いなく日常生活に支障が出ますよね。飛ばない時は消せるとか、小さい翼でも物理法則ガン無視で飛べるとか、そんなご都合設定を持ち出してきても良いですが、それなら最初から翼無しで飛べた方がよくね、とユリちゃんは思ってしまいます。翼で飛ぶことに浪漫があるんだよ、という気持ちもわからなくはありませんが、逆に言えば浪漫以外に翼を選択する理由が無いわけです。一方プロペラを装着する場合でも、人を飛ばす浮力を生み出すにはクソでかプロペラが必要になりますし、騒音もえげつないです。小型化や消音に成功したとして、物理的にプロペラ装着部分が上空にくる必要があり、飛ぶ姿勢が限られるのであまり自由に飛ぶという感じではないでしょう。ここでも物理法則を無視してその辺自由だとしても良いですが、結論は先程と一緒でそれなら最初からプロペラ無しで飛べた方がよくね、と。某秘密道具への憧れもわかりますが。

 と、色々と理想の話をしてきましたが、正直本音は『飛べるならどんな手段でも良い』ですけどね。クソでかプロペラしか手段がないなら最悪それで妥協しましょう。……いややっぱりクソでかプロペラだけはないかな。

 では、スタート。



 南川家ゲーム四番勝負、最終ゲームのビリヤード対決もいよいよ終盤戦。ちょっと離された最下位だった南川様が私のうっかりアドバイスから一挙三得点を決め、ゲーム対決的には首位の妹様を南川様とお姉様が一点差で追いかけるという熱い展開に。台上に残された的球はあと五つ、最後まで分からない好勝負になってきました。

「ユリさん、計算は終わりましたか?」

『もう五秒ほどお待ちください』

 現在南川様のターンが終わって妹様のターン。ゲーム勝負中は妹様の味方をしている私ですが、南川様にはアドバイスを送りながら妹様には何も、というのは流石に不公平というか、サポート役として普通に問題行動なので、当然妹様にもアドバイスをする流れになり、現在必死に台上の的球の軌道を演算中です。ここまでの妹様のショットの強さと正確性を踏まえて、台上の手球と的球、ポケットの位置関係から最も得点確率が高そうなショットを算出。専門分野ではないのでちょっと計算に時間はかかりますが、このくらいはできます。ユリちゃんは万能です。

『……はい、計算終了です。四と書いてある的球をクッションで狙いましょう。角のポケットと真ん中のポケットのちょうど中間あたりの縁を狙ってバウンドさせればいい感じに得点が狙えるはずです』

「なるほど。間にある邪魔そうな七番の球をクッションを使って避けながら、ってことですね。強さはどのくらいですか?」

『これまで通りで問題ないです。それ込みで計算してますので』

「あ、さすがです」

「……これ、ユリちゃんが最初から全力でなみちゃんのサポートしてたら私たちボッコボコだったのでは?」

「まあ、全員ビリヤード素人の中、一人だけゲームみたいに軌道予測が見えてたらそりゃボッコボコだっただろうね」

『そんなバランスブレイク行為はしませんよ』

 大前提として、最も優先するべき事項は皆さんが楽しめることですからね。そりゃあ私が全力サポートしていれば今頃妹様の大勝でしょうが、それで南川様やお姉様が楽しめるかというとそんなことはないでしょうし、何より妹様の性格を考えるとそんな勝ち方では妹様自身が楽しめなさそうですからね。

「では、ユリさんのアドバイス通りこの辺を狙って……えいっ」

 私の言葉を参考に狙いを定めた妹様のショットは、しっかり私の計算通りの軌道を描いてバウント、四番の的球を捉え、弾かれた的球はそのまま角のポケットへと吸い込まれていきました。

「よしっ。さすがユリさん、計算バッチリですね」

『いえいえ。私はちょっとアドバイスしただけで、きっちりその通りに打った妹様が凄いのですよ』

 いくら机上では完璧な計算ができていたとしても、その通りに実行できなければなんの意味もありませんからね。

「いいなぁ、ユリちゃんサポート。これ、当然次の私のターンにも使えるんだよね?」

「え、美音姉様も使うんですか?」

「いや使わせてよ! この流れで私だけ使えなかったら不公平でしょ!?」

「うーん、そういう意見もありますか」

「そういう意見しかないよ!」

「まあ、美音姉様だけ仲間外れでは可哀想ですし、良いでしょう。それよりも大事なのは、ここで私がもう一点取れるかどうかなので」

 ここで妹様にもう一点が入ると、二位のお姉様との差が三点かつ台上の残りの球が三つになる。マイナス点でもない限り、妹様の一位フィニッシュが確定することになります。次の妹様の一打は、ウルトラ長く続いた気がするこのゲーム対決の、勝敗を決定づける重要な一打になりそうです。

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