第2話「大当たり」
ガチャの光が消えたあと、十個のカプセルはひとつずつ弾けるように開いた。
中から出てきたものが、半透明の文字と一緒に目の前へ並んでいく。
「……いや、待て」
思わず声が出た。
見れば見るほど、引きがおかしい。
嬉しいより先に、少しだけ背中が冷える。
都合がよすぎて、手を伸ばす前から嫌な感じがした。
【スキル】
・テイム
・鑑定
・ステータス改竄
・成長加速
・大器晩成
【アイテム】
・回復薬(小)
・回復薬(中)
・四大属性オーブ
【武器】
・成長の刀(未命名)
【職業】
・殺戮者(人型)
「盛りすぎだろ……」
ひとつずつ意識を向ける。
勝手に意味が流れ込んでくる。
テイム、鑑定、ステータス改竄。
文字を追うだけで、使い方の輪郭が勝手に頭へ入ってくる。
成長加速は、そのまま伸びを早める力。
大器晩成は、少し違った。
特に大器晩成は露骨だった。必要経験値が増える代わりに、レベルアップ時の上昇量が大きくなる。
「序盤しんどくて、後から伸びるタイプか」
嫌いじゃない。
回復薬は今の時点で命綱になる。
四大属性オーブに触れると、火、水、土、風の感覚が指先に薄く走った。
そして、最後に残った刀。
細身で、まだ無機質な見た目をしていた。けれど握った瞬間、手に馴染む。
「こいつが武器か」
未命名。持ち主とともに成長。名前を与えることで成長開始。
「名前ね」
少しだけ考える。
格好つけるつもりはなかったが、適当につける気にもならない。
最初の一本だ。たぶん、これから先も長く使う。
「……天羽々斬」
口に出した瞬間、刀身がかすかに光る。
【天羽々斬 Lv0】
・持ち主固定
・討伐で成長
・今後、段階的に能力解放
「いいな」
妙にしっくりきた。
握り直すと、手の中で重さがほんの少し落ち着く。
ただの道具を持った感じではなかった。
次に職業を見る。
殺戮者(人型)
名前だけなら物騒だ。
人型相手に強い。
意味が入ってきた瞬間、眉間が少し寄った。
この先、人間に近い相手や人型モンスターが増えるなら悪くない。
適性職業の一覧も出た。冒険者、剣士、魔法使い、格闘家。無難なのも並んでいたが、レア表記なのはこれだけだった。
「レアだから選ぶってのは好きじゃないけど……」
嫌いじゃない名前だった。
物騒な響きより、隠す気のなさが引っかかった。
綺麗な名前で誤魔化されるよりは、まだいい。
結局、選ぶ。
身体に薄く熱が走り、画面の表示が変わる。
【名前】大月 在真
【職業】殺戮者(人型) Lv0
HP:25
魔力:2
攻撃力:21
防御力:9
総合戦闘力:33
【スキル】殺戮(人型)Lv1/テイム/鑑定/ステータス改竄/成長加速/大器晩成
「最初よりはマシになったな」
数字だけ見ても、まだぴんと来ない。
天羽々斬を鞘ごと腰に差す。
手持ちの回復薬も確認する。
使えるものは揃った。
だからといって安心できるわけじゃないが、何も持たずに暗闇へ入るのとは違う。
門の向こうを見る。
奥は薄暗く、静かで、何がいるのか分からない。
さっきまで手の中にあった高揚が、そこで少し冷めた。
何を引いても、奥へ入るのは自分の足だ。
「……行くか」
ここで帰っても、たぶんまた来る。
門をくぐる。
空気の濃さが、一段階変わった。
山の洞窟じゃない。もっと閉じた、別の場所の空気だ。
「やっぱ本当にダンジョンなんだな」
少しだけ口の中が乾いた。
でも足は止まらない。
帰る理由ならある。
それでも、背中より前の暗さのほうが気になった。




