第二話 君が好きです
アイドル稼業も楽じゃない
女だらけの傭兵部隊がザグラブの一味を蹴散らした、という噂はオキャーマの裏社会でパッと広まった。
そして表稼業であるご当地アイドルの仕事でも、少しずつ固定のファンが付き始めていた。
ミキのファンは老若男女幅広く、ユイのファンは若い男、マイカのファンはいかにもなオタク、アサカのファンは音楽好き、最年少であるアイリングのファンは若い子と、棲み分けもきちんとできていた。
特にアイドルとしてのマイカのブレイクは凄まじく、持ち前の歌唱力に加え、童顔の愛らしいルックスがオキャーマの弱者男性のハートを鷲掴みにした。
マイカはリーダーであるコミュ力お化けのミキと遜色ない人気となったのである。しかも、客層は揃いも揃って薄い頭にメガネのでっぷり太った中年男性ばっかり!
特典会を開いても、ミキとマイカでファンの行列の長さはほとんど変わらない。違うのはマイカの列だけがどこか酸っぱい臭いを放っていることだけである。
今日も今日とて、オキャーマ市内のショッピングモールで、$-Dutyの五人はライブ後の特典会に勤しんでいた。
「マイカさん、今日のライブも、素敵な歌声をありがとうございました!」
バーコード頭の背の低い中年が、マイカと握手しながら熱く感想を伝えると、
「あ、ありがとうございます」
マイカも気押されたように感謝の言葉を返す。アイドルとしてのマイカは借りてきた猫のようにシャイでおとなしかった。
愛想こそ無いが瞳の底に優しさをたたえた大男、ミスターDがチェキ券を売ると、愛想の固まりのようないつもえびす顔のヒロノブ・オノシーが手早くメンバーとのツーショットチェキを撮り、列を捌いていく。
「はいみんな、ご苦労様!」
特典会を終え、楽屋に戻った$-Dutyのメンバーに、マダムKが声をかける。
「今日はあなた達にいいニュースがあります」
「何がじゃ?」
「あなた達の曲、『チャンスの女神様』が、ミュージックディスクとして発売されます!」
「ほう」
「でも何で今更、ミュージックディスクなのかしら?」
「まあうちらの活動が形になるのは、嬉しいこっちゃな!」
「これであなた達の傭兵としての活動も、幅広くなります!」
マダムKが嬉しそうに呟くと、
「そりゃあどういうことなんなら?」
ミキが早速疑問の声を上げる。
「いいでしょう。説明します」
マダムKは五人の前で、
「まず、依頼人が『◯◯を始末して』と言って、私たちがその人を始末して依頼人からお金をもらったら、そのお金は人殺しでもらった汚いお金、表に出せないお金になる」
「ふむふむ」
「でも依頼人が、『◯◯に死んでほしいな』と独り言を言ってうちらのディスクをたくさん買う。そして私らが独断で◯◯を始末したら、表稼業のアイドルとしてのディスクの売り上げと裏稼業の傭兵部隊の活動として◯◯を始末することに直接の因果関係はない。儲けたお金はあくまでディスクを売ったお金、アイドルの活動資金として、表に出せる綺麗なお金になる」
「なんかパチンコの換金みてえじゃのう」
「それに、ディスクをたくさん買う、ということは売り上げランキングも左右する、ということ。あなた達のアイドルとしての格も上がるのよ、一石二鳥じゃない?」
「そうじゃのう」
「今日はいいお話が聞けて良かったですわ!」
ミキ達五人は解散となった。
「マイカ、今日は一人で帰るんか?」
「ああ、今日はジャンクオフに寄って見て帰りてえ」
「あらマイカさん、ジャンクパーツがジャンクパーツを品定めなさるんでして?」
「表に出ろてめー!」




