情けが仇になる
一方、ヅヤマへと帰ったミューユ達は、ナカギリ特務少将へと作戦の結果を報告していた。
軍人らしからぬボサボサの長髪に制帽をちょこんと乗せ、オシャレ髭のすらっと背の高いナカギリ特務少将は、アンティークの机でミューユの話を聞く。
「それじゃあ、スノーホワイトさえあれば、その$-Dutyとかいう傭兵部隊に勝てたと?」
「はい、言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、あの敵との交戦はほんのコンマ数秒を争う戦いでした。脳波コントロールのスノーホワイトさえあれば、勝てていたはずの戦いでした」
「ふむ」
ナカギリ特務少将は頷く。
「まあ、タカオ少尉を手玉にとるほどの実力の、しかも女だらけの傭兵部隊が南軍に付いている、と言うのが確認出来ただけで、大した収穫だったよ。そしてそんなハードな状況の中、よく無事で帰って来てくれた。ありがとう。でも南軍にもザグラブ7神将に匹敵するチームが居たとなると、我々も本気でそのチームと対抗しなきゃならないな」
「その役目、私にやらせてください!」
「おやおや、タカオ少尉、死にそうな目に遭ってまだその連中に関わりたいのかい?」
「これは私のケジメでもあります。$-Duty隊、ピンクのアサルトアーマー、マイカ・イチノセを必ずや堕として見せます!」
「……わかったわかった。もういいから、今日はもう休みなさい」
ナカギリ特務少将が優しく言葉をかけると、ミューユは退室した。
ナカギリ特務少将の執務室を出ると、そこにはカツラギ曹長とジャンパー軍曹が二人とも青白い顔をして待ち構えていた。
「タカオ少尉、私達が付いていながら、申し訳ありません!」
「いえ、お二人が悪いんじゃないですから」
「タカオ少尉、どうか北軍一の、立派な軍人になって下さい!」
「少尉と訓練に励んだこと、一緒に戦えたこと、このジャンパー、一生忘れません!」
「どうか、ご武運を!」
「ええ、お二人も!」
ヨーロッパの衛兵のようなビシッとした敬礼を決めると、二人はいそいそと退出した。
そしてその翌朝、兵舎にて拳銃自殺を図ったカツラギ曹長とジャンパー軍曹の死体が発見された。二人の死は別に誰に強制されたわけではなかったが、ザグラブでは末端の構成員でしか無かった二人は、作戦の失敗を命で償わなければ、ザグラブでの居場所はなかったのである。
二人の死亡の知らせを聞いたミューユは、泣いていなかった。
涙を流す代わりに、$-Duty隊への憎しみがとめどなく溢れていた。
因縁を避けて、あえてミューユを生かして帰したはずのマイカであったが、思わぬところから因縁の坩堝へと放り込まれていった。




