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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
53/107

53 メルト外伝紅の墓標34 魔王

ガラガラガラ……。


一瞬の内に作られた城は盛者必衰の理を表すように瞬く間に崩れていく。

かつて城だったものはもはや瓦礫の山と化し内部崩壊を続けている。

そんな非日常的な光景を眺めながらハッシュは願う。


「(早く帰って来てくれ……メルト!)」


その神に祈るような真摯な姿は修行を重ねた修道士を思わせる。


「(そうじゃねぇと俺が死ぬ!早よ二人の戦いを止めてくれ!真面目に世界が滅びかねん!!)」


大欲は無欲に似たり。

その真っ直ぐに自分だけしか考えてない姿も純粋と言えば純粋だろう。

そう、彼は純粋にメルトの帰りを祈っていた。

純度100%の生存本能である。

何故なら横でこの世の終わりの光景が繰り広げられていたからである。


――ハハハハハ!!恐れおののけ!私は夢を司る!この世に具現化出来ない物はない!


――貴様のような戦いを戦いと思わぬ者に戦う資格はない!塵と化せ!


――軍神が何ヌリぃこと言ってんだよ。戦いなんてもんはとどのつまり欲の塊だ。鉄と鉄がぶつかりあって、血と泥の上にくたばる。それ以上でもそれ以下でもない。戦い“なんか”に幻想を持つなド三流が!ああ、もういい、喋るな。俺の欲は最強。貴様らごとき眼中にない。


ハッシュは怖かった。

ただひたすらに怖かった。

それはハハハハ!!と狂ったように笑うガルシアにでもなくドガンドガンと有り得ない音で戦う二人の攻撃の余波でもない。

神様に対して大口を叩きまくるキースにだ。

幾ら自分には関係ないとは言えハッシュの方が縮み上がってしまう。

大体ガルシアは“分体”だと言ったのだからそれがもし本体が祟って来たらどうするんだと言う話である。


「(いや、待て……。もしかしたら天罰は当人かどうかは関係なく近くに居るやつらごと……)」


それに気付いた瞬間ハッシュはさあぁ……と顔から血の気が引く。


「(違う!そんな訳ない!有り得ない!うん、有り得ないんだ絶対に!!

でも一応俺は止めましたからね神様!!因みに俺の名前は村人Aです、ハッシュじゃ有りません!!)」


自分を安心させる為に必死でその考えを根拠皆無で否定すると、神様に対して無実アピールをする。

彼は生きる為ならプライドなどくそくらえという信条を持っていた。

壊れた感性が揃う夕碧の騎士団において貴重な常識人である。

故にその生存に特化した再生能力と解析能力のしぶとさを以て一部でGの渾名で呼ばれていることは彼の名誉の為に抗議したい。

流石にただ巻き込まれているだけでG呼ばわりは可哀想であろう。


「これ以上バレインが罪を重ねない内に帰って来てくれ……!」


ハッシュは祈る。

自分の為に。

そしてその邪念100%の祈りが通じたのかメルトが崩れ落ちる瓦礫の中から姿を現す。

オメガが肩を貸し、大分頼りなくはあるがどうやら特に大きな怪我はないようだ。

オメガはメルトを背負うと足に力を込め、ゲヘナの攻撃で黒色の混じった水堀を飛び越える。

泥やすすを吸い込んだ粘り気のある雨と水堀の水とが混ざっているのだ。

コップの水に墨汁を垂らしたような気持ちの悪い色だ。


「メルト!」「メルトくん!」


ハッシュとリタはメルトの元へ走りながらメルトを呼んだ。

ハッシュは自らを助ける幸運を運ぶ天使を逃がさないように抱きつこうかと思ったが、メルトに近付くにつれ何故かツーンと鼻を刺すような匂いが漂って来たので駆け寄るだけにとどめておく。

リタはそんなことを気にしないのか思いっきり抱き付いていた。

どんくさくて気付かなかったという線も少なからず存在するが。


「おう!」


「ねぇ聞いてメルトくん!私、ハッシュくんと敵の魔人やっつけたよ!」


リタは目をキラキラさせて、褒めて〜と言わんばかりに活き活きとそう言った。

その言葉を聞いたハッシュは対称的に死んだ魚のような目だ。


「(そうだな、リタは俺“ごと”魔人をぶっ潰したな……)」


物は言い様である。

この言葉ならリタはハッシュと一緒に魔人を撃退したという意味に取られることだろう。

一ミリも嘘を言っていない辺り、相当に狡猾である。

とんでもない知能犯だ。

これを恐らくリタは自然に言っているのだから恐れ入る。


「(畜生!!幾ら直ぐ治るっつっても痛いものは痛いんだぞ!!)」


そう怒鳴りたいが、ハッシュとしてもリタのスペシャル拷問コースを二度も味わうのは御免こうむる。

結局黙りを決め込む他為す術がない。


「(畜生!!こんなんばっかか俺!!)」


正直、高級料理店でのディナー程度では割りに合わないと思うハッシュであった。

そして思い出す。

隣から煩いくらい位に響く戦闘音を。


「こんなことやってる場合じゃねぇんだよ!さっさとあいつらを止めてくれ!」


慌てて争う二人と5柱の方を指差すハッシュ。

リタをおざなりに対応していたメルトはハッシュの差した方向をチラリと見て、途端にげんなりとした表情に変えた。


「またあいつらかよ……」


メルトがそう溢すのも無理はない。

二人はこの規模の殺し合いこそ初めとはいえ、小さな殺し合いなら日常茶飯事なのだ。

一々本気で付き合っていたら身が持たない。

メルトはそっちの方向に向き、試合終了の鐘を鳴り響かせるべく大きく息を吸った。


スゥゥゥ……。


メルトがまさに大声を出そうと口に手を当てた瞬間、それは起きた。


ズドン!!


「ゴッッホッ!ゴホッ!」


メルトは後ろから響いた爆発音のせいで驚き、空気が変な所に入ったのかゴホゴホと咳をする。

何しやがった、と後ろを睨み付けるメルトの目は、次の瞬間大きく見開かれる。


「なッ!」


メルトが今さっきまで居た城は弾け飛び、瓦礫が空高くまで浮き上がっていた。

瓦礫や砂塵がメルトの方まで飛んで来る辺り、どうやら城は爆発四散したらしい。

そして勿論そんなことが出来る人物などこの場に一人だ。

砂塵がもうもうと立ち込める城。

しかしその光景はまた一瞬で変わる。


ギュォオオ!


一陣の風が吹き抜けると砂煙が其処だけ避けたように城の中心部から煙のないトンネルを造る。

そしてその先に居るのは手を突きの形で突き出したフォルダの姿。

その肩には幽かに息のあるクロスバとツェーレンが背負われている。

どうやら全ては彼の仕業らしい。

フォルダはトンネルの中を堂々と歩き、砂中にありながら少しも汚れず此方へとやって来る。


「オイオイオイヤバすぎるってアレ!」


その姿を見るやいなや顔面蒼白になるハッシュ。

その姿に彼の何らかの情報を持っているとみてメルトは敵の情報を得ることにした。


「オイ、知ってんのか?」


そう、メルトは彼の名を知らない。

会った途端に蹴り飛ばされたのだから当然と言えば当然ではある。

そしてハッシュから自らを蹴り飛ばした敵の名を知ることになる。


「バッカ!!知らねぇのか!!この世で一番ヤベェ奴だよ!!俺の人生で関わっちゃイケないランキング堂々第一位!永久欠番!!魔王フォルダだ!!

ギルドに依頼に常に懸かってるだろ!!個人の驚異度はSS!!分かるか!?SS!!つまりダース単位でヤベェ奴って意味だ!ぶっちゃけ俺的にはあそこで戦ってる神様の本体より恐い!!

絶対関わるなよ!!」


ハッシュとしては本気で関わり合いになりたくない一心で言ったのだが、どうやらそれは遅過ぎたようだ。

というのも、怒濤の勢いでメルトの肩を揺らしながら念押しするハッシュにメルトが物凄く気まずそうな顔をしたからだ。


「あー、手遅れっぽい……」


やっちゃいましたの報告にハッシュは思わず絶句する。

衝撃だ。

人にやられて嫌なことをここまで徹底してやる者はそうそう居ないだろう。

こんな奴が敵だったらどんなに良かったことか。

ハッシュは心底そう思った。

しかし残念ながら味方で、しかも自分達のリーダーである。

世も末、という奴だ。


「どういうことだ!!まさか“また”喧嘩売ったのか!?」


悪い想像を働かせるハッシュ。

メルトに対する信頼がゼロだが、メルトには色々と前科があるので仕方がない。

信用が欲しければそれ相応の仕事をしろということだ。 そしてハッシュの悪い想像は何とか裏切られることになる。

より最悪な方向に……。


「売ったつうか売られたっつうか……。何か次に会ったら容赦しないとか言われた」


……。

………。

…………。


ハッシュ、本日2度目の絶句。

それも当然であろう。

幾ら目を離した隙にトラブルを呼び込んで来るとは言えこれはない。

狙ってやっているのかと疑念を越えて確信するレベルだ。

ハッシュは存分に絶望を味わうと堰を切ったように泣き出した。


「うわぁ〜ん、あんまりだぁ〜。がみ゛ざま゛〜、たしけてぇ〜」


ハッシュは胸元に手を合わせると天を仰いで助けを求める。

彼が祈る神様は隣に居るのだが。

メルトはそのあまりにもあんまりな光景に次に会ったらメルトの方から喧嘩を売るつもりだったのは黙っておく。

幾らデリカシーの欠片もないメルトでも流石に半死半生の味方にトドメを差すのは忍びない。

メルトは珍しく空気を呼んだ。

武士の情けと言う奴である。

まぁ、ハッシュがこうなっている全ての根元はメルトにあるのだが。


何はともあれメルトは敵の名を入手することが出来た。

奇しくもその名はテセトを殺した親玉として世界に仇為す者として将来倒すつもりだった者と同じ名前だ。 メルトはパズルの全てのピースが繋がったような感覚に陥る。

彼の中でフォルダは一気に悪漢と化し、自らの信じる正義を為す為にフォルダに向かってズンズンと進んでいく。

しかし、急造の憎悪より元から積み重なった憎悪の方が早かった。

それはオメガだ。 自らの生涯の敵を目の前にして一瞬固まったものの怒りをエネルギー源として再起動を果たす。


「フォルダァァァアアアア!!貴様ァァァアアアア!!」


オメガは狂ったように叫ぶと怒りを撒き散らしながら飛び掛かる。

先程死んだヨキの弔いの為だ。

ヨキがオメガに向けた空虚な憎しみの芽は確かな実を伴ってオメガの心に宿った。

そして雪玉のように刻一刻と大きさを増していく。

憎しみの連鎖は止まらない。

二人を抱えているせいで両手が使えないフォルダは無防備に襲い掛かってくるオメガの鳩尾を蹴りあげる。


「ゴハァ……」


フォルダは地面に片膝を着くオメガを見下ろすとフンッと鼻を鳴らした。


「弱くなった物だな。19年前とは比べるべくもない」


フォルダが思い返すのは19年前。

契約の上でオメガとフォルダの二人は三日三晩にも及ぶ一対一の決闘をした。

当時二人は互角であり、大気の魔力を狂わす程の二人の激突は世界に大きな影響すら与えた。

その最たる物がハッシュ達のようなその年に産まれた子供である。

彼らはお腹の中に居る間に無意識に何かを感じ取っていたのかも知れない。

或いは狂わせた魔力が何か赤子に影響を及ぼしたか。

とにかくその年に産まれた子供は平年に比べ奇跡と呼ばれるような能力を持つ者が多かった。

要するにイレギュラーの量産だ。

例えば、キースは類い希なる戦闘のセンスを持って産まれた。

例えば、ハッシュは受けた傷が即座に治るような特異な体を持って産まれた。

例えば、ガルシアは5属性のステータス魔法を使える才能を持って産まれた。

例えば、リタは多大な結界魔法の才能を持って産まれた。

ただ、メルトは同い年なのに残念ながら特に授かり物はなかったのだが……。

そして魔力の塊に近い精神体であるオメガはその決闘に負けたせいで大きく力を失い、各地を放浪した末にメルトと契約するに至ったのだ。

今メルトが使っているオメガの力はかつてのオメガの力の出涸らしに過ぎない。

元々はフォルダに並ぶ力の持ち主だったのだから……。


「そうか……お前が魔王か……」

事実を確認するためにメルトは静かに呟く。

そしてメルトはオメガと交わした契約の一つを思い出した。

魔王を倒すことを手伝う。

ただメルトはその契約が無かろうと同じ道を選んだだろう。

それはテセトのこともあったが、戦禍を広げる魔王が許せなかったからだ。


「そうだ。私が二代目魔王フォルダだ。それがどうかしたか?」


フォルダは堂々と“魔王”と名乗る。

それは先代の遺志を継ぐことの宣言と同意義だ。

見事魔族を護りきった青年の遺志を。


「だったらてめぇに言いてぇことが山程ある!」


フォルダはその言に虫でも見るかのような目で答えた。

この男はどうやら先代の魔王様に文句があるらしいと気付いたからだ。

何も知らない者に批判されること程頭に来ることもない。


「奇遇だな、私もだ」


メルトはその答えを聞くとふぅ、と一つ息を吐きだが、と続けた。


「先ずその前に!!取り敢えず1発殴らせろ!!」


メルトはそう叫ぶと右拳を振り上げフォルダに思いっきり叩き付けた……。


バシィ!!


瓦礫の山の傍らで決別の証明が平原に音高く鳴り響く……。

二つ名をランダムで作る奴をやってみたら吐き気を催したるファーストキスって出てきた……。

相手はTwitterでおはようって呟いたらお前は目覚めるなって返って来た人かな?

後脱衣のお弁当で噴いた。

お弁当の濡れ場の何処に需要があるんだろうか……。


それとは別の話で友人に「なぁ、痴女と淫乱ってどっちがエロいと思う?」と聞かれた。


はぁ〜〜!?

んなもん大体おんなじ意味だろ。

チンパンジーとゴリラどっちが哺乳類っぽい?って聞かれてるのと同じようなもんだ。

ここまで心底どうでもいい質問初めてだ……。


「因みに君は淫乱だって」


いや、だからどうでもいいっつうの。

寧ろどうでも良さが加速したわ!


ただこのどうでも良い質問に分かんないとしか言えなかった自分、情けない……。



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