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第46話、新しい探索

 対話が始まったとはいえ、聡たちは何から話せばいいか迷う。

 そうしていると、クロが口を開いた。

「では最初に私から質問をしよう。2人はどんな理由でここまで来たんだい?」

「僕はダンジョンについて知るために奥へ進んできました」

「私はダンジョンの景色を見るために進んできたわ」

「謎と景色か。たいていの人間はお金や名誉が大事だと思うけど、君たちは違うみたいだね。

 だからこそ最初にここまで来られたのかもしれない」


 これまで返答するだけだった聡は、初めて自分から話しかけた。

「先ほど、ダンジョンの出口に小さい玉のようなものを飛ばしていましたが、あれは何ですか?」

「あれは探査機さ。地上の生物……君たちがここまで来るのは想定外だったんだ。

 だから地上に何か変化が起きていないか調査を命じたんだ。

 この星の生物が短時間でここまで発展するとは思わなかったよ」

 聡は先ほどの現象が攻撃的なものではなかったことを知り、胸をなでおろす。

 

「ズバリお聞きします。この地球にダンジョンを作った理由は何ですか?」

「そうだな、ここは経緯から話した方がいいかもね。

 まず、私の主人に当たる人は星系探査の任務についていて……」

 要約するとこうだ。

 地球を探査した宇宙人が生物に興味を持ち、詳しく調査するためにクロを送り込んだ。

 地球時間で約3000年前に地球へ降り立ったクロは地上をひと通り調査した後、報告のためにこのダンジョンを作り始めたらしい。


「報告のためって……ではいつかはダンジョンごとこの星からいなくなる予定なんですか?」

「ああ、でも出ていくのは13万年と少し先の予定だから大きな問題にはならないと思うよ。

 今の発展ペースなら、そのころには人類は地球を重要視してはいないだろうから」

 聡はどういうことかと尋ねたかったが、聞いてもどうしようもないことなので口に出さないことにした。


「では、なぜ人間がスキルを得られるようにしたんですか?」

「これは説明が難しいんだけど……モンスターを生成するときに超能力を使っているんだ。

 厳密には科学的なものだけど、地球の言葉では説明できないから便宜的にそう呼ばせてもらう。

 モンスターが倒されると、制御を失った超能力が周りに影響を及ぼすんだ。

 私たちにとってはそよ風みたいなものだけど、人間にとっては違うみたいだ。

 それに影響されて中途半端に超能力を身につけた状態が、祝福やスキルと言われるようになったというわけさ」

 

「モンスターが人間を襲う理由は?」

「生き物を観察するとき、逃げられるより近づいてきてもらったほうが楽だろ?

 だから報告のためにじゃれつくようにしてあるんだ」


「では魔石は……」

 聡はそれ以外にも様々な質問をする。

 そうして質問を続けていくうちに、問答は丸1日に及んだ。

 ついに舞が音を上げた。

「月野さん、申し訳ないんだけど、食料が尽きたから私は一旦戻るわ。

 ツリーハウスで待機しているから、終わったら来てちょうだい」

「分かりました。また会いましょう」

「舞さん、お達者で」


 聡がツリーハウスまで戻ったのは約1週間後だった。

「月野さん、まさか1週間ずっと話していたの?」

「途中で寝たりもしましたよ」

「……まずはシャワーを浴びて。ひどい匂いよ。話はそのあとね」

 聡はその言葉に従い、黙ってシャワーを浴びた。


 シャワーを浴び終えた聡は気を取り直して舞と話し合う。

 勤はちょうど外出しているのか家にはいない。

「おじいちゃんには席を外してもらったわ。クロとの会話内容について話し合いましょう」

「隠すことは何もないんですけどね……」

「外に出す情報は制御した方がいいわ。私たちの身を守る意味でもね」

「分かりました。舞さんが帰った後、僕たちは問答を繰り返しました。内容はこの紙にまとまっています」


 その紙束を手に取った舞は顔をしかめる。

 そこには端から端まで文字で埋め尽くされた紙が数百枚もまとまっていたからだ。

「問答の内容は則教授にでも送りましょう。もちろん匿名でね。

 今は重要な部分だけ教えてちょうだい」

「クロさんと話し合ってダンジョンの仕様を変えることになったんです」

「具体的にはどうなるの?」

「ダンジョンの入り口近くに祝福を消す装置を導入します」

「もしかして、呪いも一緒に消えるってこと?」

「そうです。これならドロップ品を取らずに生きていける人が増えるはずです」


 聡は続けて話す。

「そして舞さんにも朗報なのですが……ダンジョンがもっと深くなるらしいんです」

「もしかして……」

「地上は人類によって大きく様変わりしました。だからクロは情報収集とダンジョン構築のペースを上げるらしいんです。

 新しい階層が増えるということは、新しい景色も増えるということです」

「でも、月野さんはダンジョンに潜る動機はなくなったんじゃない?」

「それが、新しくできたんですよ」

 

「実は最後の変更で、ダンジョンの中に宝箱を設置することになったんです。

 中身はポーションやドロップ品、その他超能力を利用した道具です」

「何のために……?」

「クロさんが人類の文明発展を助けるためにもっと研究対象を増やしたいと考えていたらしいんです。

 それに関して、直接的な干渉はできないが間接的な支援なら可能だという言葉を引き出しました。

 僕はそれにゲーム的な要素を提案して、採用されたという流れです。

 人間を自発的に行動させるなら、報酬が必要ですから」

「質問だけじゃなく、提案までするなんてやりすぎね……」

 そう言った舞の顔はあきれているのか笑っているのか分からない表情になった。

 

「僕は超能力についてもっと知るために、積極的に宝箱を探しに行きたいと考えています」

 聡は一度言葉を切り、一呼吸おいてから続ける。

「というわけで、舞さん。これからもパーティーを組んでいただけますか?」

「こちらこそ、よろしく」

これにて完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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今日から新連載、「月のウサギはとびはねる!~VRMMO初心者が天砕と呼ばれるまで~」を開始します。

是非そちらもよろしくお願いします。

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