雑世界説明
「ダンジョン」と呼ばれる場所があった。
言い伝え曰く、中の生物は煙でできている。
長く居ると呪われる。
それ以外には何もない、無価値な洞窟。
少し不思議なだけの洞窟を意味していたその単語は、とある民俗学者の遺した資料の再発見によって一変した。
17世紀中頃に書かれたその手記は、ダンジョンにまつわる言い伝えを調査したものであった。
「ダンジョンの中の生き物を倒すと煙になるのは言い伝え通りだったが、その場所をよく探ってみると、濁った宝石のような石を見つけた。」
「その石を日光にかざすと温かくなる。いくらか集めて同じことをすると暖房代わりになるほどだった」
その手記に同封されていた石は別の科学者に贈られた。様々な実験と研究の末、クリーンかつ高効率の発電が可能であるという結論が出た。
その石は「魔石」と呼ばれるようになった。
各国は合同でダンジョンへと軍隊を派遣したが、ほとんど何も持ち帰れなかった。
多くの理由があるが、一番大きかったのは中にいる生き物に銃弾が効かなかったこと。
検証の結果、モンスターは近接攻撃あるいは弓矢などの人力を使った攻撃でしか殺傷できないということが判明。
さらに魔石以外にも毛皮や食材なども低確率で落とすことが分かった。これらは「ドロップ」と呼ばれるようになった。
中世の武器で武装した第2次派遣隊は見事に多くの魔石やドロップ品を持ち帰った。
派遣隊は何度も繰り返しダンジョンに入った。
しかし1年ほど経つと前線に立ち続けた者から順に衰弱死し始めた。
彼らには共通点があった。ダンジョンへ何度も侵入し、モンスターを多く倒して戻っていた点だ。
謎の衰弱は「呪い」と呼ばれるようになった。
呪いについて解明されていくうちに、様々なことが分かった。
呪いを受けた者は身体能力が強化され、一部には特殊な訓練を受けていないにも関わらずオリンピック選手以上の能力を発揮した者もいた。
魔石と様々なドロップ品での検証の結果、食料品のドロップ品を食べることで衰弱状態から回復し、延命できることが分かった。
ただし、強化度合いが高い者ほど頻繁にドロップ品を摂取することが必要だと分かった。
呪いによる身体強化は「祝福」、その度合いは「レベル」と呼ばれるようになった。
祝福は身体能力の向上以外にも様々な異常反応をもたらした。
剣の扱いが上手くなる者、手から炎を出せるようになる者など、様々だった。
祝福を多く得たものほどこれらの反応がより顕著になり、また銃弾等への耐性も確認された。
それらはダンジョンでモンスターを倒した時に吸収される未知のエネルギーによって起こされるということだけが分かった。
異常反応をもたらすエネルギーは「魔力」、結果を生み出す能力は「スキル」と呼ばれるようになった。
現代。ダンジョン素材の使用が日常化し、魔石発電はシェア率70%を超えた。
もはやダンジョン産資源の重要性はそれ無しでは社会が立ち行かなくなるほど高まっている。それらの値段とともに。
しかしダンジョンに入ろうとする者は少ない。
なぜなら呪いは解除できないから。ある程度までレベルを上げていくと、一生ドロップ品を食べ続けなければならないから。
それでも進む者がいる。食い詰めたから。好奇心に突き動かされたから。未来を投げ捨てたから。
彼らは「探索者」と呼ばれるようになった。




