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EP 5

海だ! 水着だ! 密漁だ!?

 学園都市を出発して数日。

 カイト一行を乗せた馬車は、大陸南方の港町「ルナミス」に到着した。

 窓を開けると、潮の香りが鼻腔をくすぐる。

 視界いっぱいに広がるのは、キラキラと輝くエメラルドグリーンの海と、白い砂浜。

「うわぁぁぁっ! 海だーッ!!」

 カイトは少年のようにはしゃいで、馬車から飛び出した。

 海を見るのは、日本にいた時以来だ。いや、異世界の海は日本のそれよりも遥かに透き通っていて美しい。

「すごい! 見てよポチ、水平線が丸いよ!」

「きゅぅ!(魚の匂いがする!)」

 ポチ(始祖竜)もカイトの肩で身を乗り出し、尻尾をブンブン振っている。

 その後ろから、引率の神々たちも降りてきた。

「ふむ。悪くない景色だ。……浜焼きに合う酒を探すか」

 龍魔呂がサングラスを直す。

「フン、潮風か。ラーメンのスープが湿気るな」

 竜神デュークが葉巻を吹かす。

 男性陣が落ち着いている一方で、女性陣のボルテージは最高潮に達していた。

「さあ、着きましたわよ! カイト、早くビーチへ行きましょう!」

「この日のために、王都の専門店で『勝負水着』を買ったのですから!」

 女神ルチアナと魔王ラスティアが、カイトの腕を左右から引っ張る。

 彼らは人の少ないプライベートビーチ(ルーベンスが金に物を言わせて貸し切りにした)へと向かった。

 †

 そして。

 南国の太陽が照りつける砂浜に、女神たちが舞い降りた。

「お待たせ、カイト!」

 最初に現れたのはルチアナだ。

 彼女が纏うのは、布面積が極端に少ない「金色のマイクロビキニ」。

 豊満な肢体が惜しげもなく晒され、神々しいオーラと相まって、直視すれば目が潰れそうな破壊力だ。

「あら、私のほうが大人っぽくてよ?」

 対抗するのはラスティア。

 彼女はシックな「黒の紐ビキニ」に、透けるパレオを巻いている。妖艶な魔王の魅力が全開だ。

「カイト様! 情熱の赤ですわ!」

 不死鳥フレアは、燃えるような「深紅のワンピース水着」。背中が大胆に開いており、健康的な色気が溢れている。

「わ、私は……その、恥ずかしいのですが……」

 天使長ヴァルキュリアは、清楚な「純白のフリル付きビキニ」。羞恥で頬を染める姿は、まさに天使の破壊力。

「カイト様~! 見て見て! お花柄ですの!」

 ルナは、麦わら帽子に「花柄のキャミソール水着」。少女らしい可憐さが爆発している。

 世界の美を独占したような光景。

 並の男なら、鼻血を出して失神するか、尊すぎて灰になっているだろう。

 だが、カイトの反応は爽やかそのものだった。

「おおーっ! みんなすごい!」

 カイトは満面の笑みで親指を立てた。

「とっても似合ってるよ! 健康的で素敵だね! 海の青さに映えて、みんなキラキラしてるよ!」

 邪心ゼロ。

 純度100%の称賛。

 それが逆に、女性陣の乙女心ハートを貫いた。

「っ……! (健康的……素敵……キラキラ……!)」

「(もう、カイトったら……直球なんだから!)」

 全員が顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。

 世界を滅ぼせる美女たちが、農夫の一言で乙女になっている。

 †

「さて! 遊ぶ前に、まずは食材確保だ!」

 カイトは切り替えた。

 今回の目的は、シーフードピザの具材、特に「イカ」と「エビ」の調達だ。

「ポチ! 海の中に美味しそうなイカがいないか、見てきてくれる?」

「きゅぅ!(任せろ!)」

 ポチが砂浜を駆け出し、海へとダイブした。

 ザパァァァンッ!

 小さな体が波間に消える。

 数秒後。

 ゴボボボボボボ……ッ!!!!

 海面が盛り上がり、巨大な水柱が立った。

 カイトたちが呆気にとられる中、海中から「とてつもない何か」が打ち上げられた。

 ズドォォォォォンッ!!!!

 砂浜に落下したのは、全長50メートルはある超巨大なイカ――伝説の魔獣『グランド・クラーケン』だった。

 北の海のヌシとして恐れられるSランクモンスターである。

 その眉間には、ポチの可愛い「パンチの跡」がくっきりと残っており、すでに絶命していた。

「きゅい!(獲ったどー!)」

 ポチが波打ち際から上がり、プルプルと体を震わせて水を切った。

「す、すげぇ……」

 カイトは巨大なイカを見上げた。

「でっかいなぁ! これならイカリングが何万個作れるだろう!?」

 普通の人間なら恐怖で腰を抜かすサイズだが、カイトは「食材」としてしか見ていない。

 彼は懐からナイフ(解体用)を取り出し、嬉々として駆け寄った。

「ポチ、お手柄だ! 新鮮なうちに捌くぞー! 龍魔呂さーん、手伝ってー!」

「……やれやれ。刺し身包丁が必要なサイズだな」

 龍魔呂も苦笑しながら、ジャケットを脱いで参加する。

 †

 その光景を、近くの岩場から覗き見ていた地元の老漁師がいた。

 彼は、打ち上げられた「海の主」と、それを楽しそうに解体する若者たちを見て、目を剥いた。

「ば、馬鹿な……。あれは『北海の悪魔』クラーケンだぞ……? 海軍の軍艦だって沈められる化け物だ……」

 漁師は震える指でカイトたちを指差した。

「それを……たった一匹の小さいトカゲが仕留めたのか!? それに、あの兄ちゃん……クラーケンの足を『輪切り』にして笑ってやがる……!」

 常識の崩壊。

 漁師はあまりのショックに、白目を剥いて泡を吹き、その場に気絶した。

「おーい! そこのお爺さん! 大丈夫ですかー?」

 カイトが気づいて手を振る。

 彼の手には、直径2メートルの「超巨大イカリング(生)」が握られていた。

 カイト農場一行の海への来訪は、初日から生態系の頂点を狩るという「密漁(という名の害獣駆除)」から幕を開けた。

 だが、彼らはまだ知らない。

 このクラーケンが、海の女王リヴァイアサンの「ペット(番犬)」だったことを。

 次回、路地裏で歌う貧乏アイドルとの出会い!

 「路地裏の歌姫」へ続く!

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