EP 5
【強奪】エルフの「お友達(植物)」大作戦
王都(ハイパーインフレ中)を後にした勇者パーティー一行は、魔王城を目指してフィールドを歩いていた。
「うふふ。やっぱり外の空気は美味しいわね」
のどかな平原のど真ん中。
全属性魔法使い(MPカンスト)のルナが、優雅に微笑みながら立ち止まった。
彼女は足元の青々とした草花を見つめ、そっと地面に白魚のような両手を当てる。
「ルナさん? どうしたの?」
農民のカイトが、『ひのきのクワ』を肩に担ぎながら尋ねた。
「あのねカイト。魔王領の奥深くに、とってもキラキラしたもの(鉱脈)が眠っているって、お花さんたちが教えてくれたの」
ルナはニコニコしながら、とんでもないことを言い出した。
「キラキラしたもの? もしかして……」
「ええ。魔王軍の生命線である『黄金』と『ミスリル』の巨大な地下鉱脈よ。……植物はみーんな、私のお友達だから♡」
ルナの瞳の奥で、エルフ特有の深い魔力がエメラルド色に輝いた。
彼女が発動したのは、全属性魔法と最上位の精霊術を融合させた、超広域の【自然干渉】である。
「さあ、お友達のみんな。……その『キラキラ』、全部こっちに持ってきてくれるかしら?」
ズゴゴゴゴゴゴッ!!
ルナが優しく囁いた瞬間。
魔王領の方角から、大地を引き裂くような凄まじい地鳴りが響いてきた。
「な、なんだ!? 地震か!?」
武道家のキャルルがウサ耳を伏せて身構える。
「違うわ。見なさい、あそこ!」
飲んだくれ(管理者)のルチアナが、酒瓶を持ったまま前方をご機嫌に指差した。
数十キロ先の魔王領の国境線。
そこに建っていた魔王軍の強固な砦が、突如として発生した大規模な『地盤沈下』によって、まるで砂上の楼閣のようにガラガラと音を立てて崩壊していくのが見えた。
「うわあああ!? 砦が沈んでいく!?」
カイトが目を剥く。
そして次の瞬間。
カイトたちの足元の地面がボコボコと隆起し、巨大な大樹の『根っこ』が、まるで大蛇のように地表へと突き出してきた。
「ひぃっ! モンスターですか!?」
キャルルが構えるが、その根っこは攻撃してくるわけではなかった。
太い根の先端が器用に開くと、そこから大量の金塊や、青白く輝くミスリル鉱石が、ドサドサドサッ! と滝のように吐き出されたのだ。
「うふふ。ありがとう、お友達のみんな。よくできました♡」
ルナが根っこを優しく撫でる。
「……」
カイトは、山のように積み上げられた国家予算レベルの貴金属を前に、言葉を失った。
「ルナさん……君、エルフだよね? 自然を愛する森の民だよね?」
「ええ、そうよ? 私は自然の恵みを『少しだけ』分けてもらっただけだもの」
「魔王領の地下資源を根こそぎ強奪して、地盤沈下で砦まで崩壊させてるのに!? やってること、完全に悪の帝国(環境破壊)だよ!!」
カイトの悲痛なツッコミが平原に響き渡る。
しかし、他のメンバーは全く意に介していなかった。
「よーし! よくやったわルナ! この大量のミスリルを全部市場に投げ売りして、魔王領の通貨をさらに暴落させてやるわ!」
ルチアナが【管理者権限】のアイテムボックスに、金塊を次々と収納していく。
「おかね! お金よぉぉ! これで私の借金も……!」
貧乏神のリーザが金塊に飛びつく。
しかし、彼女が金塊に触れた瞬間、金塊はボロボロの『石ころ』へと変貌した。
ピロン♪
【所持金:-1,500,000 G(※アイテム価値毀損のペナルティが追加されました)】
「なんでよォォォォォ!!」
リーザが石ころを抱えて血の涙を流す。貧乏神の呪いは、金塊(物理)すら無効化するのだ。
「……」
一方、料理人の龍魔呂は、山積みの鉱石を無表情で見つめていた。
「どうしたの、龍魔呂さん?」カイトが尋ねる。
「……金より、新鮮な『ネギ』や『キャベツ』を持ってこさせることはできなかったのか?」
「そこ!? あなたの興味、ブレないね!?」
カイトは『ひのきのクワ』を力なく下ろした。
王国の経済をインフレで焼き尽くし、魔王領の地下資源を根こそぎ強奪する勇者パーティー。
魔王城(ラスボスの拠点)は、もう目と鼻の先である。
「僕ら……本当に魔王よりタチが悪いんじゃないかな……」
主人公(農民)の胃痛は限界に達しつつあったが、ルチアナの暴走はまだ止まらない。
いよいよ次回、物理的(?)な炎上が魔王城を襲う。




