第十九章 新世界なゲーム体験
【強制参加】創造神の新作VR-RPG
「はいはい集合~! あんたたち、ちょっと私の暇つぶしに付き合いなさい!」
ある日の午後。
カイト農場の広大なリビングに、創造神ルチアナの傍若無人な声が響き渡った。
農作業終わりのカイト、厨房から出てきた龍魔呂、パトロール明けのキャルル、そしてお茶を飲んでいたルナとリーザが、何事かと集まってくる。
彼らの目の前には、ファンタジー世界にはあるまじき、謎の近未来的カプセルが6台並んでいた。
「……ルチアナ。なんだい、この怪しい棺桶みたいな機械は」
カイトがジト目で尋ねる。
「棺桶じゃないわよ! 私が最近、地球のネットカルチャーにドハマりして、創造魔法で徹夜して創り上げた『完全没入型VR-RPG』のテスト機よ!」
ルチアナがドヤ顔で胸を張る。
「ぶいあーる……あーるぴーじー?」
リーザが首を傾げる。
「要するに、仮想空間の中に入って冒険するのよ! 世界観はベタな『剣と魔法のファンタジー』にしておいたわ。……というわけで、あんたたちには今からデバッグ(テストプレイ)をしてもらいまーす!」
「えっ? いや、僕これからトマトの収穫が……」
「俺は夕飯の仕込みがあるんだが」
「問答無用!!」
バコンッ!!
ルチアナが指を鳴らすと、目に見えない力(神の念動力)が働き、カイトたちは強制的にカプセルの中へと放り込まれた。
「ちょっ、強制!? うわぁぁぁ!」
「きゃああっ!」
プシューッ……。
カプセルの蓋が閉まり、カイトの意識は深い闇へと落ちていった。
◇
『――システム・オンライン。テストプレイヤーのログインを確認しました』
『はじまりの村へ転送します』
カイトが目を開けると、そこは青空が広がるのどかな村の広場だった。
石畳の道に、レンガ造りの家々。いかにも「RPGの初期村」といった風景だ。
「……本当にゲームの中に入っちゃったよ。変な女神と同居すると苦労が絶えないなぁ」
カイトはため息をつき、自分の服装を見た。
粗末な麻の服に、麦わら帽子。
ピロン♪
目の前に、半透明の【ステータス画面】が浮かび上がった。
【カイト】
職業:農民
Lv:1
体力:9999(※異常値) / 攻撃力:0 / 魔力:0
装備:ひのきのクワ
「いや、ゲームの中でも農民かよ!! しかも攻撃力ゼロ!?」
カイトが天を仰いでいると、隣で光の柱が立ち、仲間たちが次々とログインしてきた。
「おや……。これはまた、妙な空間に飛ばされたな」
と、白いコックコート姿の龍魔呂。
【龍魔呂】
職業:料理人
装備:錆びた中華包丁
「なんだこのナマクラは。ネギも切れんぞ」
龍魔呂が初期装備の包丁を見て眉をひそめる。
「わぁっ! すごいです! 体がすっごく軽いですぅ!」
と、道着姿でシャドーボクシングをしているキャルル。
【キャルル】
職業:武道家
装備:布の服(※素手のため攻撃力は自身の脚力に依存)
「ふふ、よく出来た箱庭ね。マナの濃度も悪くないわ」
と、ローブ姿で優雅に微笑むルナ。
【ルナ】
職業:全属性魔法使い
MP:99,999 / 99,999 (※チート枠)
カイトはルナのステータスを見て戦慄した。
(レベル1なのにMPがカンストしてる……! バランス崩壊だろ!)
そして最後。
「……ねぇ。ちょっと待って」
どんよりとしたオーラを放ちながら、リーザがボロボロの襤褸布を纏ってうずくまっていた。
【リーザ】
職業:貧乏神
所持金:-10,000 G
「なんで!? 私、ログインした瞬間に借金一万ゴールド背負ってるんだけど!? 財布から血(赤字)が流れてるわよぉぉ!!」
「プッ……あははは! あんたのリアルな金運をシステムが読み取って、隠しジョブ【貧乏神】を引き当てたのよ!」
最後にログインしてきたルチアナが、腹を抱えて笑っていた。
彼女の姿は、片手に酒瓶を持ったヨッパライである。
【ルチアナ】
職業:飲んだくれ
特殊スキル:【管理者権限(God Mode)】
「いやいやいや!」
カイトはたまらず大声でツッコミを入れた。
「農民、料理人、武道家、魔法使い(チート)、貧乏神、飲んだくれ(チート)って……!!」
カイトはパーティーメンバーを指差して絶叫した。
「勇者がいないんだけど!? どうやって魔王倒すのさ、この最弱(で極悪な)パーティー!!」
「こまけぇこたぁいいのよ!」
ルチアナが酒瓶をラッパ飲みしながら笑う。
「さあ! 記念すべき初クエストよ! まずはRPGの基本……『村の民家を探索って、資金を調達する』わよ!!」
ルチアナの号令と共に、最悪のテストプレイが幕を開けた。
平和な「はじまりの村」の住民たちに、未曾有の経済テロが降りかかろうとしていることを、システムはまだ警告していなかった。




