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EP 9

【夜会】BAR『龍魔呂』、美女たちの宴

夜のカイト農場。

離れにある小さなログハウス、**BAR『龍魔呂』**の扉が、今夜はひっきりなしに開閉していた。

カランコロン……♪

「こんばんは~! 龍魔呂、特等席カウンター空いてる?」

「ふふっ、今夜は特別に肌の調子が良いですから、美味しいお酒が飲みたいですわ」

「私も混ぜて。……あら、随分と人口密度が高いわね」

ルチアナ、ラスティア、フレア、リベラ、そしてルナ。

農場の女性陣が、次々と店に吸い込まれていく。

そして最後に、大量のサンプル袋を抱えたリーザと、全身から尋常ではない発光ツヤとフローラルの香りを放つキャルルが入店した。

「お邪魔しますぅ……!」

「ふふん! サンプル塗ってきたから、私もモチモチよ!」

これで、農場の女性陣が全員勢揃いした。

普段は静かなジャズが流れる大人の隠れ家が、今夜はまるで「高級デパートのコスメフロア(特設会場)」のような騒がしさだ。

カウンターの中でグラスを拭いていた龍魔呂は、顔をしかめて鼻をつまんだ。

「……お前ら」

龍魔呂の低い声が響く。

「ここは酒と料理の香りを楽しむ場所だ。……なんだこの、デパートの1階みたいな香水臭さは」

地球の高級化粧水『SK-∞』の発酵臭。

世界樹の朝露の神聖なマナの匂い。

サンプルの様々なブランド香料。

そして、キャルルから放たれる「コスメ・ゴーレム(濃縮還元)」の圧倒的なフローラル&ムスク。

それらが狭い店内でブレンドされ、とんでもない「美の暴力(匂い)」を生み出していた。

常連のリュウなどは、あまりの匂いにむせて、早々にテラス席へ避難している。

「あら、いいじゃない。女の園って感じでしょ?」

ルチアナがカウンターに肘をつき、艶然と微笑む。

「それに、今日はみんな『美肌記念日』なのよ。地球の科学、エルフの神秘、そして……気合い(サンプル&ゴーレム爆発)の結晶よ!」

ラスティアが自分のモチモチの頬を指差す。

「……はぁ。全く、騒がしい客どもだ」

龍魔呂は深くため息をついた。

しかし、文句を言いながらも、彼はシェイカーを手に取った。

文句を言いつつ、客の要望コンディションに合わせた最高の一杯を出す。それがこの店のマスターの流儀だ。

チャカチャカチャカッ……!

龍魔呂がリズミカルにシェイカーを振る。

その洗練された所作に、女性陣の視線が釘付けになる。特にキャルルは、ツヤツヤの顔を限界まで赤らめて、うっとりと見惚れていた。

(はぁ……♡ バーテンダー姿の龍魔呂さん、かっこよすぎますぅ……!)

「ほら、飲め」

トン、トン、とカウンターに置かれたのは、淡いピンク色をした美しいカクテルだった。

「わぁ……! 綺麗!」

キャルルが目を輝かせる。

「特製の**『ビューティー・スリング』**だ。ベースは果実酒だが、Sランクのコラーゲン・スライムの抽出液と、ビタミン豊富な野イチゴをブレンドしてある。……お前らのその無駄なテカりを、内側から上品なツヤに変えてくれるだろうよ」

「コ、コラーゲン入り!? さすが龍魔呂さん、分かってらっしゃる!」

リーザが歓喜の声を上げる。

「いただきまーす!」

女性陣が一斉にグラスを傾けた。

「んんっ……! 美味しい! 甘酸っぱくて、凄くとろみがありますぅ!」

キャルルがウサ耳をパタパタと揺らす。

激戦(デパートでのサンプル争奪戦とゴーレム討伐)の疲れが、冷たいカクテルと共にスッと溶けていく。

「はぁ~♡ 龍魔呂さんのカクテル、五臓六腑と肌細胞に染み渡りますぅ~!」

キャルルは完全に蕩けた顔になっていた。

外側からは高級コスメのエキス(物理)、内側からは龍魔呂の特製コラーゲンカクテル。

今の彼女は、おそらく天魔窟で最も「美肌係数」が高いウサギだろう。

「ふふ、でも……」

ルチアナがグラスを揺らしながら、悪戯っぽく笑った。

「本当に肌に良いのは、化粧水でもカクテルでもないかもね?」

「えっ? どういうことですか?」

キャルルが首を傾げる。

ルチアナの視線の先には、カウンターの中で静かに氷を砕く、鬼神の横顔があった。

その言葉の真意に気づいた女性陣が、一斉にニヤリと笑う。

美の最終結論に至る、オチへの布石が打たれた。

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