エピローグ2:新堂亜紀
――わざわざ浴衣を着付けして来たのだ。
いつものスーツ姿とは違うところを見せて、驚かせようとした。
でも玲奈が同じ用に浴衣で来ている。
「何でここに居るのかしら?」と言うと
「それはこっちのセリフですよ、亜紀さん」
玲奈も私と同じ事考えていたのだとすると油断ならないわね。
しかもまた莉子さんも居る。
まぁこの町内の人だから当然だろうけれど。
見事に浴衣を着こなしていてキレイね。
会場の本部テント付近でなんとなく3人で待っていたら……直也くんがやって来た。
けれど――。
その隣には保奈美ちゃん。
しかも浴衣姿で、髪もきちんとまとめ、薄くメイクまで施している。
……思わず、舌打ちしてしまった気がする。
いや、確かに「チッ」と音がした。
振り返ったら、玲奈も同時に舌打ちしていた。
――お互い様ってこと?
でもそれくらい、正直に言って衝撃だった。
女狐を自認している私から見ても――あの子の浴衣姿は嫉妬するほど美しいし、同時に守ってあげたいような可愛らしさが同居していた。
あれは……男は絶対に弱い。直也くんも例外じゃない。
※※※
「せっかくだから、みんなで回ろうよ」
直也くんがそう言ってくれた。
正直、苦労して浴衣を着た甲斐があったというもの。
でも――問題はそこからだった。
保奈美ちゃんが、直也くんの手を絶対に離そうとしない。
人混みでもずっと握ったまま。
そのせいで、私が横に並ぶ余地がない。
――ちょっと過保護が過ぎるんじゃないの?
本気でそう言いたくなった。
でも、ここで感情をぶつけるのは“大人の女”としての品位を欠く。
必死に自制して、ギリギリ踏みとどまった。
笑顔を貼り付けたまま、花火を見上げる。
心の中は全然、穏やかじゃない。
だって、隣で手を握られているのは義妹ちゃんだからね。
納得いかないでしょ、絶対に。
※※※
……なんか、今日はこのあと飲みに行きたい気分。
玲奈を誘ってみようかな。
どうせ彼女も同じ気持ちのはずだから。
お互いライバルなのは間違いないけれど――今だけは戦友ってことで。
そうでもしなきゃ、このモヤモヤはおさまらない。




