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71.それぞれの武器


「う、うおお…やり遂げたああ…」

『だ、大丈夫であるか!?アイ、ターク、ルート!』

「だいじょーぶ」

「これで…これで、少しは生存能力上がるでしょ…!」



アイさん、タークくん、ルートくんがよろよろしながら医務室兼アイさんの部屋から出てきた。

そう、何が起きたかと言われたら、あれである。

『状態異常耐性』取得テストである。見事全員覚えたので万々歳だ。



「ありがとう、ラテちゃん」

『大丈夫ですのー?やっぱり体調良くなってからの方がよかったんじゃ…』

「ううん、覚えるのは早ければ早いほどいいはずだから」

「いやマジでありがたい。状態異常耐性って普通覚えるの超難しいんだろ?毒蜘蛛テイムしてたナズ、ナイスだわ」

「ウチの子が最高ってことでよろしい?」

「よろしいよろしい。本当にありがとう、ナズちゃん、ラテちゃん」

『うう…余も解毒魔法覚えたいのである…回復魔法でしか役立てなかったのである…』

『お前にその才能はないので諦めた方がいいです。回復魔法ですら奇跡です』

「解毒ポーション、作れるかなあ…そしたら俺が何とかできるのに」



ナズがトイレのためにクロちゃんから出てきたところを拉致って、ラテともども協力してもらった。

本当はラテの言う通り、タークくんとルートくんの『疲労・小』が消えてからを予定してたのだ。

でも防御系を少しでも何とかしたいと主張する三人によって、前倒しで取得してもらうことにした。

元々覚えてもらう予定ではあったからいいけど…


ちなみにこれでサンも『状態異常耐性』が生えている。そういえば毒耐性しか持ってなかったなということで。

元は毒耐性LV29持ちだったけど、状態異常耐性に変化したことにより、レベルが下がってLV25になっている。

毒オンリーより全状態異常を防ぐものの方が高性能なので、まあ仕方ないのだろう。麻痺と石化の耐性はLV1相当だからな。

統合された結果LV25なら高い方だろう。なお、サンは喜んでいた。

スーはテイムした時から持ってたので経験値加算のみだ。

ドラゴンは脅威の『状態異常耐性・大』を持っていたので不参加だった。部屋圧迫するしな。


なので、その間、状態異常無効持ちの僕も手持ち無沙汰ということで、運転席に拉致られた。ドラゴンに。

自動運転も楽しいが、僕が運転してる方が何となく楽しいらしい。違いが判らん…


それからは各々スキルレベル上げに奔走していた、というより、経験値稼ぎをしていたわけだが。

ほぼMPを使い切ったのはタークくんが最初だった。それでも採取したものは全部消費したらしいが。

うん、使いきれないとゴミになるからな。というより、使いきれそうな量を採取していたと言った方が正しいか。栽培の分は除く。



「うー、劣化ポーションとかどうしようかな。一応アイテムボックスに入るし、持ってた方がいいか…?」

「ん?劣化?失敗したのか?」

「ああリオ?お疲れ。ていうか、最初に作ったのは全部劣化なんだよ。二回目から普通のになった」

「ああ、初回ので慣れたから二回目以降は通常の作品になったのか」

「多分そんな感じ。これからも初めて作るやつはまず劣化品なんだろうな。多分だけど」

「スキルレベル低いからじゃないか?あと、現物を見たことが無いから完成品がわからなくて、あやふやなまま作るからそうなるとか…」

「…その可能性もあるか」

「タークさん、劣化した作品に毒薬あります?」

「ああ、一応あるよ。戦闘時にぶん投げるためのやつを作りたかったから。これ、作ったやつの一覧。全部アイテムボックスに入れてるから見ていいぞ」

「…劣化毒薬ポーション、ください」

「へ?いいけど…何で?普通の品質のもあるぞ?」

「苦無に塗ってみようと思って。ポーション系は初めて使いますし、試すだけなら劣化品でもいいかなって」

「あー、そうなのか。いいぞ。じゃあこれ」

「ありがとうございます」



今までハルが使ってたのは毒薬や毒草の汁とかだ。ポーション系は入手してないので、ない。

というか、状態異常引き起こす系のポーションはレアなのか、初心者用ダンジョンでは入手できなかったのである。

ポーション系は普通の薬より高性能だ。傷もすぐ治るし即効性がある。それだけに強力だ。

なので、ハルも苦無に仕込むならポーション系のものも試したいと思っていたらしい。

機会がなかったのでやってなかっただけで、機会ができた今、やろうと思ったのだろう。



「…浸けるだけでいいんですかね?」

「さあ…てかやりすぎると損耗するからちょいちょい損耗回復させないとまずいぞ」

「ですよね。私、アキ兄さんよりも損耗激しいみたいですし」

「モノが小さいのと、こういう毒物を塗ってるせいだろうな。それだけ強力ではあるけど」

「…ハルさん、リオさん、何してるの?」

「あ、姉貴おつかれー。今、ハルのダガーとか苦無に俺が作った劣化毒薬ポーション使おうとしてるとこっぽい」

「あー、言ってたわね。…てか私もそれ気になるんだけど」

「え?」

「アイさんも?」



医務室からちょうど出てきたアイさんが参加してきた。

あの部屋で弓の練習をしてたらしい。ある程度障害物のない部屋と距離が必要だからな。

どうやら、ハルの戦い方を聞いて、自分も矢尻とかに毒をつければダメージが増えるのでは?それでなくても麻痺とかさせられれば戦いやすいのでは?と思ったそうだ。

確かに、牽制とかで掠りでもすれば、そこから毒が入る。それで多少敵が弱まれば、前衛のルートくんが楽になる。そう思ったらしい。



「…だから、ターク、麻痺とかそういう薬、多めに作ってもらうって出来る?」

「おお、いいぞ!いいけど…麻痺系はまだ作れてないんだよなあ…麻痺草、今日見つからなかったから」

「あ、そっか」

「毒草と睡眠草はあったから、毒薬ポーションと睡眠ポーションは出来てるぞ」

「睡眠も結構アリかしらね…」

「それだと、そのおもちゃの吸盤のやつじゃ試せないな。矢、一応あるけど…弓矢、作っちゃうか」

「いいの?リオさん、やるなら晩御飯の後って言ってたのに」

「どうせもうすぐメシだろ?誤差だろ誤差」



ちなみに睡眠ポーションは状態異常の『睡眠』を引き起こすやつだ。

強制的に眠るという意味では睡眠薬と大差ないけど。でも金に換算すると、睡眠ポーションは睡眠薬の何倍も高価だ。

ポーションは作るのに魔石が必要になる以上、どうしても高価になるわけで。その分効果は即効性だけど。



「でも、弦はナズちゃんに頼むんだろ?今作っても半端になるんじゃ…」



黙って聞いてたルートくんも参加してきた。

さっきまでハルと遮断スキルの経験値稼ぎしてたらしい。ハルが毒薬ポーションに興味を示したから手持ち無沙汰になってるけど。

ちなみに、さっきスキルレベルが上がって、遮断がレベル3になったそうだ。めでたい。

確かに経験値結構溜まってたもんな。

なお、タークくんの錬金調合は上がらなかった。必要経験値が多かったのもあるだろう。



「弓と矢だけならいいんじゃないかと思って。試し打ちは明日になるだろうけど」

「うん、まだ的から外れることもあるし、本物の矢で練習は怖いかな。壁に傷ついたら嫌だし」

「レベルが2になれば命中補正入りますから、大丈夫だと思いますね。あと、おもちゃの弓じゃ使いづらいのかもしれないですし」

「そうだなあ…しょぼいもんな。召喚した僕が言うのも何だけど」



召喚リストを開いて、弓のリストを見せる。

基本は長弓か複合弓か。あまり大きいのは身長的にも持ち運び的にも良くない気がする。あと短弓だと射程や威力が弱いイメージがある。実際は知らないけど。



「何となく…これがいい、かも?」

「じゃあ召喚するか」

「即決ですねぇ」

「スキル持ちの意見はきっと大事」



召喚したのは、一応複合弓に分類されるものだ。

それをアイさんに手渡して、長さや形を聞く。少し調整してほしいと言ったところは『変形』で変えていく。

割としっくりきたかも、とアイさんが言ったので、弓は一応これで終わりということになった。

…のだが。



「ちょっと、俺も見せてもらっていいか?」

「ルートくん?どうしたの?」

「ごめん、ちょっと…何か気になって」

「え、ええ、いいけど…」



ちょっと戸惑いつつもアイさんは弓をルートくんに渡していた。

ルートくんは弓に触れながら、何かを唸っていた。でもタークくん曰く、弓道部でもないし弓なんて知らないはず、と。



「ここ、もうちょっと持ちやすくした方がいい、気がする…?」

「ああ、構える時握るもんな。削る?足す?それとも布か何か巻いて…」

「アイの手に合わせて、こう…」

「よしアイさん、ちょっとここ握って」

「え、ええ」



ルートくんと試行錯誤しつつ形を整える。

アイさんが、確かにさっきより握りやすいと言ったことで、これが正解なのだと思った。

あとは実際に使わないとわからないか、と話したところで。



「…あっ」

「ルートくん?」

「…え?え?『木工』と…『鍛冶』…?」

「………ふたつ!?スキル一気に二つ習得した!?すごいなルートくん!」

「しかも超ありがたいスキルじゃね!?だってリオいなくなったら武器の手入れどうすんのって話だし!」

「ま、まじか、今ので…」

「弓って木製だか竹製ですもんね。複合弓だから他にもあるでしょうけど。で、武器でもあるから…なるほど…?」

「鍛冶はともかく木工なら取得チャレンジできるんじゃないか?木の板あたりナイフで削ってみるとかさ」

「後でやってみましょう。今はご飯の準備です。削りカスとか出したらアキ兄さんが怒るかもしれません」

「あっ」

「それは確かに」

「そうね、アキさんは怒らせちゃ駄目だわ」

「竹刀か木刀いじれば『鍛冶』判定もイケるかもしれないぞ」

「え、もしかしてリオくんの召喚に木刀とかあるのか?待って俺それ超欲しいんだけど」

「あ、そっか、ルートくん剣術だもんな。どっちかを君専用に作るか」

「サンキュー!」



わちゃわちゃしてるとアキ兄さんが「メシじゃー!」と叫んで集合を促していた。

まあ、ほぼ居住区に集まっていて、いないのはナズとラテとドラゴンくらいだったけど。

ドラゴンは呼びかけで寄ってきたし、ナズたちはアイさんとラムがクロちゃんに入って呼んできた。



「アクアパッツァ!?魚介類まであんのか、すげえなアキ!」

「マーフォーク様からもらったやつ!数は限られてるけど今が使い時と思って!」

「まーふぉーく?」

「人魚ですよ、アイさん。魚のオリジンなんです」

「へえ、人魚!」

『フィッシュであるか!息災であったか?』

『魚の乱獲で生態系狂っちゃって大変そうだったです。サンはフィッシュの眷属です』

『そうであるか。まあ、召喚者に眷属が同行しているのであれば心配はいらぬであるな』

『ええ、問題は解決しております。主人たちの尽力のおかげで。マーフォーク様も今はのんびりされておるようで』



そこからマーフォークの話になった。

アイさんたちは会ってみたいと言ってたけど、通過して結構経ってるからなあ。

まだ生態系整えるためにあの近辺にはいるだろうけど、抉れ海はちょっと離れてる。

まあどうしてもって言うなら空間転移が…あ、いらない?そこまでしなくていい?あ、ハイ。


どうやら数日前に、乱獲していた村の誰かが謝罪とともにキノコをいくつか置いて行ったようだ。

ちょうどマーフォークが近辺にいる時で、姿は見せなかったものの、様子を見ていたと。

やはり村人に悪気はなかったようで、この近辺の動物が食糧難になっているということに反省をして、自分たちに出せる精一杯の食料を献上した形だと。

それを見て、マーフォークももう乱獲はしないだろうと確信したそうだ。キノコはありがたくいただいたと。山の幸は珍しく、マーフォークは大喜びしたそうだ。

まあ、オリジンが人前に姿を見せれば騒ぎになるので、村人にはこちらの意見は伝えられなかったそうだが。

ということを、サンはマーフォークから聞いたそうだ。


うまく収まったなら、まあいいか。



「一応、一件落着ですかね?よかったです」

『すまぬ。伝えようとは思ったのだが、その…』

「…この一連の騒ぎのせいで言いそびれたかな?まあ仕方ないけど」

「ご、ごめんなさい、私たちのせい…!」

『アイ殿たちのせいではない。それに急を要する話でもなかったのだ。マーフォーク様にも、機を見て伝えればよいとの言葉をいただいたし』

「そうですね。でも、少し気になっていたので、その連絡は嬉しかったです。マーフォーク様にお礼を言っておいてください」

『うむ、伝えておこうぞ』

「魚介類、召喚者に大人気、ありがとう!ってのも伝えといて!」

『う、うむ、承知した』



何便乗してるんだアキ兄さん…まあ、嘘じゃないけど。

全員アクアパッツァに満足してるけど。

何であれ、あっちの状況も改善しそうでよかった。

村に行った甲斐、あったなあ。



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