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70.スキルレベリング準備


満足したのか、全員でカーくんに戻った。

ひとまず窓の前に木製の台を出して、そこに鉢を並べた。階段状というか梯子状なので結構な数を並べられる。

空間拡張で一回広くしておいてよかった。邪魔にならないスペースに、一応設置できた。



「アキ兄、一発目からザベリーの苗って難易度高くない?シブベリーにした方がよくない?」

「シブベリーよりザベリーの方が召喚コスト高いからつい…」

「ああ、なるほど」

「…睡眠草は別の場所の方がいいな。日当たり良すぎると枯れるっぽい」

「そういえば自生場所も川の近くとかでした。湿気が必要ですかね?」

「霧吹きとか、そうじゃなくても囲いとかしたら多分大丈夫かもな。あと涼しい場所」

「リオ兄さん、霧吹きってあります?」

「片手サイズのしょぼいのならあるけど」

「充分充分。水は…俺の召喚のやつ使うか。鑑定したら栽培にもプラス補正あるっぽい」

「そういえばアキ兄さんの水もそうでした。料理と栽培に補正があるって」

「マジか。俺のは調合と栽培にプラス補正だったよ」

「あら、同じ水でも召喚のスキルが違うと効果も違うのね」

「でもどっちも栽培にはプラスなのか。ありがたいな。俺の召喚した水でもイケるじゃん!ハル、俺の水で水遣りしよーな!」

「はい!」



わいわい騒いで楽しそうだ。

僕は一旦、運転することになった。ドラゴンが寄ってきた。



『スライム…ラムにお勧めされたのである。ジョシュセキとやらに座らせてもらってよいか?』

「いいよ。窓も開けようか」



窮屈かと思ったけど、シートベルトも締めさせた。ラム達と違って竜だとちゃんと締められるんだな。

若干嫌そうにしていたが、発車するとそれも忘れたらしい。外を見ながら、移り変わる景色を楽しそうに見ていた。



『アイちゃん、ちょうどいいのだ。ここで『千里眼』スキルを使うのだ』

「え?」

『その場に留まってる時に使うのもいいけど、移動中に遠くを見るのは経験値結構溜まるのだ』

「…そうなの?やるわ!ありがとう!」

「え、馬車移動とかでも行けそうだなそれ。移動中にレベリング出来るのいいなあ…」

『カーくんの壁の向こう、森の中の景色でも見てるといいのだ。精一杯遠い距離を意識すると経験値溜まるけどMP消費も多い。自分なりのやり方で経験値稼ぎするのだ』

「わかったわ!乗せてもらってる間、それで経験値稼ぎ出来そうね…!」



おお、スーが教師やってた。何か嬉しい。

多分スーの場合、空を飛びながら千里眼を使う形で経験値ガンガン稼いでたんだろうな。

そう考えれば、僕の空間作用の中の『空間把握』と『千里眼』は似通った効力か。そっち方面で助かるかもしれない。

まあ、僕の感知能力は従魔のみんなに比べればクソみたいなもんだけど。

でも常に眼鏡かけてるようなもんだし、眼鏡の効果で視力矯正や望遠、鑑定もある。偵察系で結構使えるかもしれないのか…


アキ兄さんの「昼飯じゃーい!」という声が聞こえるまでは、そのまま運転した。

ドラゴンは助手席が気に入ったようだった。景色が流れて見えるのが好きなのかもしれない。



「オムライスだー!綺麗!皮均一だし破れてない!すごい!」

「ふふ…作ろうとして卵破れまくって結局チャーハンと言い張った記憶が蘇りますね」

「アキくん以外ちょっと料理残念系か」

「は?オムライスなんて七面倒なもん作ろうとしてる時点で女子力高いんだよ。適当な具材ぶち込んで炒めたもんばっか作るよ僕は」

「ダークマター生成器よりよっぽどマシだわ」

「誰のこと言ってるのターク?」

「お前だよ。俺の食中毒の原因、大半がお前のメシだよ」

「くっ…!」

「アイさん料理苦手系女子か」

「察してた」



料理スキル取得テストの時の話だな。

野菜切るだけなのに、切れてなくて全部端っこで繋がってたんだよな。タケノコとかみたいに、筋が入ってるだけみたいな感じで。

それでも、力加減間違ったのかな?くらいに思ってたけど、そうか…

ある意味この子に料理スキル生えなくて良かったんじゃないだろうか。



「スキルの補正があれば、食べれるモノが出来たかもしれねえのに…!」



弟は逆に、スキルに助けて欲しかったのか。

でもこっちで料理上手く作れるようになっても、向こうに帰ったら元通りになるんじゃね?

それとも経験は持ち越せる…わけないよな。あっちで衝撃波とか物理壁とか出せたらえらいこっちゃってなりそうだし。

つか、食中毒になるってわかってるのに何度も食べてるんだな。普通、一回なったら警戒して食べるの拒否するだろうに。…いい奴かな?

まあとにかくアキ兄さん作のオムライスは超美味しかったです。ケチャップで名前書いてくれたよ。

従魔組もなんかうまいこと食べてた。ラテとかスーとか食べるの難しいんじゃないかと思ったけど、普通に食べれたらしい。



「ごちそうさま!美味かったよアキくん」

「おそまつさまー」

『うむ、美味である。料理スキルか、取るに足らぬと思っていたが奥深いのである。スライムが懐くわけである』

『何百年も空腹感が消えなかったのに消えたです。自分にとっては生き方が変わるくらいの衝撃だったです。ただ餌付けされただけと思われるのは心外です』

『…そうであるな。余の言い方が悪かった。アキ坊、そなたの存在に感謝するのである』

「え、ええ…?まあ、ラムにお腹空かせるようなことはしないよう気を付けるけど」

『うむ、ラムの同行者がそなたらで良かったのである。余はスライム…ラムを気に入っているのである。妙な奴でなくて安心したのである』

『それ、わたし達も同感なのだ。アイちゃん達がいい子でよかったのだ』

『です。三人、いい子です。安心したです』



唐突にオリジンから褒められた。

でもまあ、攻撃スキルの連中のことを考えると『妙な奴』は確かにいるもんなあ…

この三匹は何だかんだで付き合いがあって、気にかけあう存在なんだろう。

ラムもスーもドラゴンがどういう性格か知っていた。これは、付き合いが深いという証明でもある。

ラムは振り回される側だったみたいだけど、本気で逃げたいなら空間魔法で遠くに行けばいいのだ。ドラゴンは空間魔法がないわけだし。

そうやって逃げなかった時点で、ラムもドラゴンのことは何だかんだ好きなんだろう。



『さて、食事も終えたのである。リオ坊、発車するのである!』

「さては助手席で景色眺めるの相当気に入ったな…?」

「ちょ、待てよドラゴン、リオには俺たちも用があるんだから!」

『なんと!?』



用?僕に?タークくんが?いや、アイさんもルートくんもか。

何だろう。進行方向の確認とか?



「リオ兄さん、タークさんが錬金調合を試したいそうなんですが、道具不足で出来なくて…リオ兄さんの召喚で、代用できる器具ありませんか?」

「俺、自分の召喚リストの器具を召喚できるの、だいぶ先になりそうなんだ。さっきハルに教えてもらった」



ああ、なるほど確かに。

料理スキルや被服スキルも、道具類の召喚は出来るのは判明している。特典召喚で大量に出たからな。

が、現時点でひとつもリストに挙がってないのだ。スキルレベル10にして、ひとつも。

もし錬金調合も同じパターンだとしたら…レベル不足かMP不足かは不明だけど、現時点で召喚できる可能性が低い。

召喚リストに出てる以上、料理スキルや被服スキルより低レベルで召喚できる可能性もあるけど、ハルが言うってことは多分似たり寄ったりなんだろう。


この子、スキルについてかなり勉強してるし、復習も結構している。錬金調合のスキルを改めて見直したはずだ。

召喚出来るものがひとつもなかったため、救済措置のようなものでタークくんの知識を読み取り、器具が出てただけの可能性もある。

実際はどうだかわからないけど、しばらく器具類は召喚できないだろう、という結論になったらしい。

まったく何の効果もない道具なら早い段階で召喚できる可能性もあるが、ナズでも針すら召喚できないため、この可能性は低いと思ったのかもしれない。



「道具か…それらしいのあったかな?代用品でもいいんだよな?」

「ちゃんとした器具はいずれタークが召喚すればいいのよ。でも、レベルアップのための経験値稼ぎ自体ができない状態で」

「頼む、器とか、乳棒とか、確か麺棒はあるんだよな?それでもいい!あと陶器とは言わないけど、木の深皿とかがあれば…!」

「陶器いくつかあるぞ?普通の食器には使いづらいと思って召喚してないだけで、リストにはあるんだ」

「マジか!?」

「あ、そうだったんですね。陶器はまったく召喚してなかったから、てっきりないのかと」



面倒だから召喚リストを見せてしまうか。それで、欲しいのがあったら指してもらえばいい。

僕が本格的にこちらの話を聞く態勢になったことで、カーくんが運転されないとわかったドラゴンは見事に不貞腐れ、少し離れた場所で羽を広げ始めた。邪魔!

どうやらドラゴンなりのストレス解消法らしい。



「カーくんに自動運転させるから、さっきよりゆっくりだけど進むよ。助手席へお行き」

『真か!すぐ行くのである!』

「…リオさん、ドラゴンさんの扱い方わかってきたわね」

「ざ、雑ぅ」

『ドラゴンにはあれくらいでいいのだ。ハルちゃんも遠慮しないでいいのだ』

「はぁい」



タークくんが欲しいのは、錬金調合を行うための器具。材料は午前の採取である程度入手している。

が、すり潰したりする作業をしようとして、道具がないことに気づいたそうだ。

まあ、包丁もなしに野菜を切ろうとしたも同然か。確かにこれは必要だろう。

アイさんは、さっき出した弓のおもちゃで経験値稼ぎをしたいらしい。それで、木の板を的にしたいので、いくつか欲しいそうだ。できれば矢も。

ルートくんは盾の代わりになるものが欲しいそうだ。さっきの鍋の蓋でもいいと。あ、そういやアレしまっちゃったもんな。

タークくんやハルにゴムボールでもぶつけてもらえば、盾術と投擲に経験値が入るのではと思ったらしい。



「言われてみればそうだな。むしろ気づかなくてごめん」

「いいのよ。だって運転大事だもの。それに私たちもこうすれば経験値溜まるんじゃないかーって話をしてて気づいたようなものだもの」

「タークなんて栽培のことばっか気にしてたし、スキルの詳細の紙見てばっかで調合とか移るそぶりなかったもんな」

「う、うるせー。もう手探り状態で考えるのつらいと思ったんだよ。先人の知識はありがたく教わるべきだろ」

「あんた、ゲームでも攻略本読み込んでから進むタイプだものねぇ」

「それの何が悪いんだよ」

「まあ、それは人それぞれでは?私の弟は煮詰まってから攻略本見るタイプで、妹はタークさんと同じで予習して臨むタイプです」

「だ、だよな、俺と同じタイプいるよな!」



ひとまず、ルートくんの希望の鍋の蓋をアイテムボックスから出す。

ついでにもうこれにしか使わないだろうと思って、ルートくんに合わせた大きさに『変形』させた。

アイさん希望の矢を1セット10本出して、木の丸い板を三枚ほど出す。大きさを変えて欲しいとのことで、大中小にしてみた。



「弓は本格的なのを作った方がいいかな?一応リストに弓はあるんだよ」

「そうなの!?武器あるんだ…」

「弦はない。弓だけ。ナズに協力してもらうかな?多分、ナズかラテの糸の方が質がいい」

「…今日のところは、おもちゃの弓で練習してみるわ。夜にでも相談させて」

「そうですね。ナズ姉、夕方まで三人の服作るーって言ってましたし。もうクロちゃんに籠っちゃってますし」



そうなのである。明日、おそらく男子二人は体調が全快…まで行くかは不明だけど、普通に動けるようにはなる。

なので、基礎レベルの方もせめて2にはしようと話し合いをして決まったのだ。レベル上がるとMPも増えるしな。

ということは魔物と戦うわけで。多少防御面も補強しようと、ナズは服作りを始めたのだ。簡易的なものになるけど三着作るとふんすふんすしていた。可愛かった。

男子二人が寝ていた布団は既にしまわれ、代わりに作業机を出し、絶賛ぬいぬい中だ。

邪魔はしないように、僕たちはクロちゃんに入らないように居住区部分で話し合い中だ。

洗い物を終えたアキ兄さんも合流した。



「今何の話だ?」

「タークさんが使う器具の選別中ですかね?」

「せめて今日中にスキルレベル3になれたらなー」

「俺の遮断、いつレベル上がるかな…カーくんの中じゃ使えないもんな」

「盾術と併用できるんじゃないですか?跳ね返す…まではさすがに無理ですかね?」

「あー、どうだろ。ハルちゃん、後で協力してくれるか?」

「いいですよ。まあ投げるのはゴムボールですけど」

「遮断…水ぶっかけたらどうなるかな?防げるのかな?」

「それですリオ兄さん!水は…サン、協力してくれますか?」

『もちろん協力しようぞ!』

「ま、マジか!ありがとう、ハルちゃん、サンちゃん!」

「ルートくんももしかしたらスキルレベル3になるかしらね?」



確かメインスキル、アイさんが3でタークくんとルートくんが2だったな。

今日覚えたばかりのはレベル1だろうけど…そういやステータスどうなってるんだろう。

確認してみたいと三人が言ったので、現時点でのステータスを確認することになった。



名前:アイ(鈴城 瞳)

年齢:14

性別:女

LV:1(あと91)

職業:覗き魔

HP:15/15

MP:16/25


スキル:千里眼LV3(あと121) 弓術LV1(あと87)



「…覗き、魔…!?」

「姉貴………」

「あー、気にしない方がいいですよ。レベル1ですし、これからいくらでも矯正可能です」

「ハル、下手な慰めはいらねえぜ…?」

「いえ、事実ですよ?だって私、レベル1の時の職業、盗賊シーフでしたもん」

「ええ!?」

「ハルさんが!?」

「何したハルちゃん!?」

「懐かしいなーハハハ。ちなみに僕は破壊者クラッシャーだったぜ」

「何したのリオさん!?」

「勇者召喚の魔法陣ブッ壊しました!」

「言ってたなあそれ!ざまあって思ったわ!」

「こらターク。でも、なるほど、それでクラッシャー…」



ついでに詐欺師でもあったけど、これは理由は言うまい…

そして僕たちの今までの職業を聞いて、そこまでコロコロ変わるなら、確かにすぐ変更されそうだと納得してくれた。

でも僕が曲芸師だったこともあると聞いて「あー…」って納得した男二人は許さない。



「タークのステータスも見てみたいわ。疲労は…まだあるわよね、多分」

「あると思うな。とりあえず見るか」



名前:ターク(鈴城 巧)

年齢:14

性別:男

LV:1(あと90)

職業:甘えん坊

状態:疲労・小

HP:20/24

MP:11/20


スキル:錬金調合LV2(あと97) 投擲LV1(あと94) 栽培LV1(あと64) 護身術LV1(あと93)



「甘えん坊」

「甘え…え…?」

「なんで???」

「気にするな。僕なんて詐欺師だった過去がある」

「気にしないで。私なんて諜報員だったんですよ」

「ろくでもねえ職業でもそのうち変わるって。現に今日、栽培覚えたし錬金調合もやるつもりだろ?絶対研究者みたいな職業に変わるよ」

「アキ兄さんに同意です」

「そ、そうだ、な?何だ…リオにしがみついてたせいなのか…?」

「待ってそれだとアキくんにしがみついてた俺も甘えん坊になるんだが」

「ルートのステも見ようぜ!」

「急に生き生きするじゃない…」



名前:ルート(砂場 透)

年齢:14

性別:男

LV:1(あと90)

職業:仕分け人

状態:疲労・小

HP:22/27

MP:12/18


スキル:遮断LV2(あと49) 剣術LV1(あと85) 盾術LV1(あと81)



「仕分け人…?遮断だからですかね?」

「ああー、ありそうね」

「はあ!?マトモじゃねーかふざけんな!」

「何でマトモでキレられるんだよ!」



ごめんな、僕が真っ先に思ったの、ゴミの選別とかする人かな、だった…

そうでなくても、服の種類を男性用と女性用に分けたり、上着と肌着を分けたり、大雑把に仕分けて陳列棚に並べやすく大別するとか、そんな…

まあ、皆の反応見てると僕みたいに考えてるのが少数派っぽいけど。



「しかし、男二人HP高いな。ウチだとアキ兄さんの25が最高値で、あと20とかだったのに」

「ほんとだ。俺ルートくんに負けてる」

「…でも俺MP低くね?アイなんて25もあるぞ」

「私のHP見てから言ってくれる?何よ15って…もやしじゃない…」

「本当ですね。アイさんHP低めです。私より気を付けないとまずいかも」

「ハルは最初HP18だったよな。俺たちの中で一番低かった」

「でもハルって今じゃアタッカーみたいなもんだし、アイさんは典型的な後衛タイプってだけなんじゃないか?」

「そういや、魔法の才能あるみたいに言われてたし…弓だし、そうだな。後ろに下がってもらう形がいいよな。何であれ俺が守ればいいのか」

「ルート、HP高いしガチでタンクの才能あったのかもな」

「ルートくんが盾術、タークくんが護身術持ってるし、アイさんも守れそうではあるか…?」

「でもアイちゃんにも身を守れる何か欲しいな。やっぱHP15は不安になるよ。レベル2でも30だぞ」

「そうね…私もアキさんと同じ意見だわ。何かいいスキルないかな…?」

「スキルリストでちょっと見てみましょう!」



そう言ってハルがスキルリストという覚えた限りのスキルを書き出した紙を引っ張り出してきた。

こうして見ると結構な数だな。ここにある大半は習得者がほぼいないらしいけど。

スキル自体がもうヒト族に習得されづらいみたいだからな。それでも調理だの裁縫だの魔法系は平民や冒険者が持ってるそうだけど。

果たしてこの中に、アイさんが身を守れそうなスキルはあるのだろうか。

魔法が覚えられれば手っ取り早いんだけどなー。いっそ初心者用ダンジョン行ってみるか?

初回報酬で魔法出るかもしれないし。



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