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異世界召喚された勇者たちののんびり気味逃亡旅  作者: 邑雲
第三章:ダンジョン攻略
32/139

28.スライム乱舞


『あーさーでーすーのーーーーーーー!』

「うぉあ!?」

「ファッッッ!?」

「わわわ、誰!?誰!?」

「ニワトリじゃないんだからーラテー…」



突然の目覚ましに盛大にビビった。こんな目覚まし時計ないしニワトリもいない。

びっくりしたのは全員みたいで、僕、アキ兄さん、ハル、ナズの順に悲鳴を…

ナズ、何て言った今?



「…ラテ?」

『はいですの!』

「ラテぇ!?これ、ラテの声なのか!?何で!?俺まだ夢見てる!?」

「え、ナズ姉とは話せるようになったのは知ってますけど、どうして私たちにも声が…?」

「ええ?みんなラテの声聞こえてる?何で?」

『はい、『念話』スキルを覚えたですのー』

「…『念話』!?マジか!」



眼鏡をかけて鑑定を使うと、確かに念話LV1が生えていた。

従魔術の『対話』でナズと話せた時の感覚を思い出しながら色々やってみたら覚えたらしい。

何だこのお子様、才能の塊か?



「ぴぷ?ぴーぷー!」

「わ、どうしたラム?」

『羨ましいって言われましたのー。アキ様とお話したいそうですのー』

「う、うぇえ…?」

「でもラテのパターンなら、従魔術スキルが5になって『対話』できるようになった後に覚えられるんじゃないか?」

「可能性はありますね。ラテちゃんの場合、ナズ姉の権能『伝達』の影響を受けた可能性もありますが」

「ああ、ナズの従魔だから、そういう伝える系の能力に補正かかって覚えやすかったってことか」



従魔とその主は繋がりが出来る。そのため、性質が似ることがあるそうだ。

これは従魔術を持つ持たないは関係ない。が、持っていたらスキル等に恩恵があるかもしれないと書いてあった。

今ではこのスキルを持ってる人も少ないので、きちんと検証が出来てないのだろう。曖昧な記述だった。



「ひええ、リオくんとハルが何か難しい考察してるぅ」

「そこの大人と秀才、その辺にして。まだ朝やぞ。起きたばっかでアレコレ考えるのやめよ?」

「まず朝ごはん食べよ?」

「…そうだな、ごめん」

「うっかりしてました」

『でも色々考えてくれて嬉しいって後輩は言ってますのー』

「…後輩?ああ、ラムのことか」

『そうですの。ラムはラテの後輩ですのー』

「ぴぴぷー!」

「あー、そんな感じなのか。これラムもラテのこと先輩って呼んでそう」

『呼ばれてますのー』

「当たった」

「何か可愛いな」

「わかります」



朝からびびったわ。ただ、僕らとも会話できるのがラテは嬉しかったらしく、何かと話しかけてきた。

でもな、毒耐性のあれこれについて蒸し返すのはどうよ。いや、呆れてたんだろうなとは思ってたけどマジであれはないって言われた。



『毒で死んじゃったらどうしようかと思いましたの!』

「あ、はい、ごめんなさい」

『あるじさま、泣きそうになってましたの!』

「すみません」

「蒸し返さないで…」

『わたくし、みんなのことが大好きですの!自分を傷つけるようなことしないで欲しいですの!』

「申し訳ありません」

「もっと言え、ラテ。効いてる」

「私もラテちゃん大好きです。ラムも好きですけど」

「ぴぷー!」

『やったー!嬉しいですの!』

「心が、心が痛い…」

「リオ兄、まじで反省して」

「あい…」



毒のあれこれの話になった時、少し気になったので毒耐性について聞いてみた。

毒蜘蛛なのに、何故耐性がなかったのか。確かタランチュラは下位種の時に耐性を得るはず。

ヴェノムタランチュラは中位か上位の魔物のはずだ。なのに何故なかったのかと。

少し考えていたようだが、話してくれた。



『わたくし、元はスパイダーでしたの。毒は持ってなかったですの。耐性も』

「…そうなの?」

「司書さんが可能性は仄めかしてましたが、スパイダーからタランチュラへの進化、実在してたんですね」

「つまり、種族として習得している下位タランチュラを経由しなかったから耐性がなかったのか」

「そんなことある?」

「あるんだろ。というか僕やラテがそうだったけど、素質はあるのに取得条件を満たしてないからスキルとして発現してない、って状態だったんだ」

「取得条件?…あ、一度でも毒くらうこととか!?」

「…リオ兄さんもラテも、毒をくらって発現したのが、上位の『毒無効』『毒耐性・大』でしたね。なるほど、素質…」

「あー、ラテ、タランチュラ系に進化してから一回も毒くらってなかったから、スキルになかったのか」

「多分だけど、そうじゃないかな?詳しいことはわからないけどさ」

『いっぱいいっぱいで、どんな進化したかはよく覚えてないですの…』

「そう?まあどんな進化を辿ってても今のラテが好きだからあたしは何でもいいよ?」

『…あるじさま…』



ナズがラテを口説き始めた。効果は抜群で、ラテが感動している。

もしかしたらだけど、ラテは毒蜘蛛であることに劣等感を抱いていた可能性がある。

元はスパイダー系、今はタランチュラ系。ナズに、どうしてスパイダーのままじゃなかったんだと、そう言われるかもしれないと恐れていた、とか。

…実際は、どうか知らないけどさ。うん、単なる僕の妄想だし。



「ラテって元はレスパイダーだったのかな?あの森にいたわけだし」

『違うですのアキ様。ラテはシルスパイダーでしたの』

「…シルスパイダー?」

「それって、糸あげるのが好きな個体多いってスパイダーだっけ?」

「そういや、気質が似てるとか司書さん言ってたな。ビンゴじゃん、すげえあの人」

『お母様が、人間に糸をあげるのが好きだったみたいですの。わたくしもお母様みたいになりたいって思ってたですの』

「へー!それでナズに興味津々だったのか」

「糸、使って欲しそうだったもんな」

「シルスパイダーの気質なんですね。一度シルスパイダー見てみたいです」

『シルスパイダーは真っ白ですの。模様があるけど、それ以外は白いですの』

「…白い…?シルスパイダーのシルってさ、シルクかな?」

「多分そうだと思う。ラテの糸、そんな感じだし」

『…シルク、ですの?』

「絹ですよ。私たちの世界で、そういう手触りのいい布があるんです」

『そうでしたの!』

「ベルスパイダーってのもいるんだっけ?それ何だろ?」

「ベルって鈴?」

「布の質とかだとベルベットしか思いつかん」

「あー、それじゃない?」



雑談しつつも朝食を食べて、カーくんから出た。

セーフティゾーンには僕ら以外はいなかったし、ボス部屋の扉も砂時計が消えていた。

後から誰か来たということもなかったのでよかった。



「…よし、じゃあボス倒して3階層に降りるか」

「そうだね」

「ライビツと、ライビの群れが襲ってくる感じかな?」

「多分そうじゃないでしょうか?」

「ライビツは俺の獲物な!」

「言うと思った。存分にやってくれ」

「ドロップ、お肉ですかね」

「別の肉なのか、数が多くドロップするのか」

「まあ、アキ兄さんとラムはライビツで、周りにライビがいたら僕とハルでやろうか?」

「そうですね。足止めはラテちゃんもいますし、従魔術スキルの経験値稼ぎのためにもアキ兄さんとラムが組んで戦うのがいいかと」

「ぴぷー!」

「そうだな、行くぞラム!」

「ぷぷっぴぷ!」

「気合が入ってることだけはわかる」



そしてボス部屋を開き、想像通りライビツと、周りに複数のライビがいた。

アキ兄さんの「肉の群れじゃー!」という気の抜ける掛け声とともに、ボス戦は開始した。嫌な幕開けだな。

ブーストがかかっているのか、連携がうまく行ってるのかは不明だけど、早々にライビツは退場。あとはライビ殲滅の消化試合。

ボス戦はライビツを倒さないとどこからともなくライビが増えるという無限機関だそうだが、そんなことにはならなかった。

むしろアキ兄さんはもう少しライビツを残しておいて肉を増やせばよかったとか、バーサーカーもびっくりなことを言っていた。

結果、ライビツとライビ11体を倒して終了したのである。

ライビツのドロップはライビと変わらず、ただ1体1肉のはずが、ライビツは3肉ドロップしていた。アキ兄さん狂喜乱舞。



「もう一回ボス戦しようぜ!」

「はいはい、いい子だから3階層に行こうな」

「6時間も待ってられませんよ…」



普段割としっかりしてるのに、食料関係を前にすると何故こうもポンコツになるのか。

即3階層に降り、大して疲れてもいないがセーフティゾーンでカーくんを出して乗り込んだ。目当ては気分の切り替えである。

なお、肉のドロップは10、毛皮が4だった。偏り方ェ…



「ライビの毛皮、結構いいなあ…今まで取っておかなかったの損してたかも」

「いや仕方ないだろ。今はアキ兄さんが『解体』覚えたからいいけど、それまでは手作業の解体で、肉優先だったから毛皮ボロボロだったぞ」

「…それもそっか」

「ボス戦しかしてないけど、ボス戦って経験値多いし、誰か何かレベルアップしました?」

「蹴術ならレベル3になったかな」

「私、投擲がレベル3になりました」

「お、やったじゃん。何か覚えた?」

「『攻撃強化・微』。蹴りでの攻撃の時にプラス補正っぽい」

「同じく『攻撃強化・微』です。投げたものが当たった時ちょっとダメージが増えるくらいですね」

「剣術や鞭術も確かスキルレベル3で『攻撃強化・微』だったな。攻撃系は大体そうなのかも」

「まあ重要だよね、攻撃力は」



そうだな。でも僕、攻撃力クッソ弱いんだよな。ちょっと上がったところで使えるだろうか…

いや、塵も積もれば…?



「3階層が楽になりそうだな。てか1階2階は俺とナズが突っ走ったから、次はリオくんとハル優先で倒してもらおうか?経験値稼ぎたいだろうし」

「そうだな、それがありがたいかも。次って魔物何が出るんだっけ?」

「えっと、確か………スライム系ですね…」

「………」

「………」

「………」

「…ハル優先で行こうか。俺もフォローするわ」

「…そうですね」

「打撃耐性あるもんな…僕、攻撃のほぼ全部が打撃だもん…」



3階層で役立たずと決まった瞬間だった。

仕方ないとはいえ、つら…



「な、何か尖ったのないの?投擲あるんだし、投げて攻撃すれば?それだと斬撃属性になるんじゃ…」

「ないなー…針とかあればよかったんだけど」

「針が召喚に出たらあたしが欲しいわ。城でとってきたやつしかないもん」

「…出たら教えるから」

「頼んだ」



多分、僕とナズの召喚に針は出るようになるだろうと予想している。

今現在、リストにないので召喚できないけど。



「スライムって打撃効かないわけじゃないけど、耐性のせいでかなりダメージ抑えられるもんな」

「加えてリオ兄さん、攻撃力低いですからね。攻撃力より手数で勝負するタイプだから相性悪いです」

「あと効果あるのは魔法…?」

「魔法攻撃力0の僕に言ってる?」

「ごめん何でもない」

「リオ兄、スライム天敵じゃん」



ほんとにな。

スライムの弱点が悉く僕の出来ない類の攻撃。

改めて思う。三人を勧誘して本当によかった。大好きだよ三人とも…



「僕、大人しく引っ込んでるよ。それか牽制役やってる。護身術スキル上がるかもしれないし」

「あー、飛び掛かってきたスライムいなしたり弾いたりしてるだけで経験になりそうですね」

「それかナイフ使いな?群れで出たら一匹でも多く倒さないとやばいし」

「そうするわ」

「あたしが一番役に立たんな。大人しくドロップ拾いしてるわ」

「牽制大事だぞ」

「酸吐いたり、中には魔法使うスライムもいるかもしれません。中距離攻撃大事です」

「魔法は詠唱邪魔したら止められるしな」

「魔法使うやついんの?そういや今までそんな魔物相手してなかったな」

「トランタの周りにはいなかったからな。…ラテとラム以外」

『一応レスパイダーにも土魔法ありますのー。ある程度強い個体が石礫飛ばしてきますのー』

「へえ?」

「魔法…なの?石礫って」

「土魔法であるんですよ。石礫を飛ばしてくる魔法です」

「割と厄介だなそれ。結局レスパイダー遭遇してないな、まあ倒す気ないからいいけど」



あと、アキ兄さんの従魔術は上がらなかったらしい。でもあと7とかなので今日中には上がるんじゃなかろうか。

そうして軽く作戦会議をした後、3階層を進むことにした。

僕らが見たことあるのはミニスライムだけだったけど、さすがにダンジョンでミニスライムオンリーというヌルゲーはなかった。



「知らんの出た!リオ兄、あれ何!?鑑定して!」

「いや多い多い!あんな動くもんいちいち見てられん!分担しよう!」

「赤系、俺見るわ!」

「黄色系、見ます!」

「じゃあ僕それ以外!ナズは牽制優先で!ルーペだと片手塞がる!」

「オッケー!」

「赤いの、レドスライム!詳細知らん!」

「火耐性あるだけの下位スライムです!火属性効きづらいです!」

「緑、ポズスライム!毒持ち注意!」

「茶色、アーススライム、土耐性持ちです!」

「ドブ色、グレスライム!灰を食べるだけの下位スライム!」

「灰色って言ってください!」

「ドブて!」

「オレンジ、ハナスライム!」

「草花を食べるスライムです!毒草も食べるので毒耐性持ちです!」

「全部下位やな!?やったれー!」



一口にスライムって言ってもかなり種類がある。共通してるのは打撃耐性持ちの不定形モンスターというところか。

あとは何でも消化するので、その消化液を射出して酸攻撃をするくらいか。あとは弾力を利用して跳ねて攻撃してくる。

ステータスが低いので脅威度は低いが、当然油断すると危険だ。逆に言えばステータスが高いと危険。魔法なんて使ってくると脅威度が跳ね上がる。

まあ、ラムのことだけど。

ドロップはスライムゼリー、そしてたまに小粒の魔石。魔石はレアドロップらしいけど、ほぼ使い道はない。

主な使い道は火を起こしたりとか、料理の時とか照明つけるとか、水の浄化に使うらしいけど、ホラ、ウチ、カーくんだから…



「…スライムゼリー、面倒だけど食えるな…ゼリー作れるぞ」

「マジか。てか面倒って?」

「水に浸けて揉み洗いして、塩とか、…うん、手順が多いって意味で」

「あー、食材として使うためには工程がいるんだな。ならナズに預けてクッションでも作ってもらった方がいいか?」

「ぷにぷに感触のクッションとか枕とかありますもんね。そうか、それ系にも使えるんですね…」

「マジか。それは作ってみたいな。アキ兄、半分こしない?」

「いいなそれ」

「…この場合、スライムゼリーってアキ兄さんとナズ二人ともアイテムボックスに入るのか?」

「あー、どうだろう…?とりあえずナップザックに詰めて、次カーくんに乗った時確認してみるよ」

「俺もそうしようかな。でも時間かかりそうだからすぐ確認できないかも」



料理スキルだもんな。アキ兄さんが食べて味を知らないとアイテムボックスには入らない。

これは、加工後でもいいらしい。なのでスライムゼリーを直接かじるか、調理したものを食べるか。

当然、アキ兄さんは調理したものを選んだ。そのままだと「可食」で苦いらしい。

けど食べられるようにするために、かなりの時間がかかると。手順多いと確かにそうなるか。



「作業が終わんないようなら作業中のままカーくんの中に放置しといていいぞ」

「うん、ボウルの中に入れっぱなしにしたの、置いといていいかな。2~3時間は放置しなきゃいけないっぽい」

「マジか。それは確かに面倒やね。夜寝る前に作業して放置した方がいいかもなー」

「それにゼリーって冷やす時間もいるよな確か?そりゃ時間かかるか…」

「でもゼリーとか寒天とかわらび餅とかグミとか出来そうだし…」

「は?優秀だな?これはぜひとも作ってもらいたい」

「そうですね。思えばお菓子ってあんまり…いえ、クッキーとか食べてますけど」

「正直お菓子のバリエーション少ないなって思ってたからなー俺も」



ナズがそうだったから予想はしてたけど、食材の場合、アキ兄さんの鑑定には作り方とか加工の仕方も表示されるらしい。

特にそのままで使えない食材はそうなんだろう。すごいな、こんにゃくとかの作り方も出るんだろうか。

作り方がうろ覚えな料理はスキル補正とこの鑑定で何とかして作ったりしてるらしい。

ここのとこ料理のバリエーション増えたなとは思ってたけど、こういうカラクリだったか。



「…あ、従魔術が5になった」

「お?おめでとう!」

「ラムー、ラムこっちおいでー!ドロップ回収一旦いいから!アキ兄が従魔術5になったよー!」

「ぴぷ!?ぷー!」



ラムがすごい勢いでアキ兄さんに突進した。それでもよろける程度だったので手加減はされてたんだろう。

本気でラムが体当たりしたらアキ兄さん死ぬしな。ステータス差は無情。

ぴーぴーぷーぷー言いまくってるので話したいことがたくさんあったんだろう。



「何て言ってます?」

「うーん、名前が嬉しかったって言ってる。名前呼ばれるのが好きとか、そういう話?」

「そういやラムって結構な年齢だもんな。これまで名前なかったのか」

「呼ばれる名前はあったみたいだけど、自分だけの名前じゃなかったらしい。種族名みたいな?」

「ああ、そこのスライム、とかだったら確かに名前じゃないもんね」

「自分以外の誰かと接することも少なかったみたいで、今が楽しいとか、そう言ってるよ」

「そうでしたか。…変な名前にならなくて本当によかった…」

「いやマジでそれだわ。スラ子とかスラ男、思いとどまってよかった…!」

「ネーミングセンスな、あたしら酷いからな…!」

「…イイハナシダッタノニナー」

「最大の敵は、ネーミングセンスでしたか…!」

「打ち倒せてよかった」



その話(※ネーミングセンス)、誰も幸せになれないからやめよう。

僕も地味に流れ弾くらってるし。



「落ち着いたら話したいことがあるって言ってるな。今日の夜とか?…ダンジョン出てからの方が良い?」

「ん?何だろう」

「ダンジョン攻略した後でいいっぽい」

「そっか、じゃあとりあえず攻略しようか」

「そうだな、できれば4階層にまで行きたいし」

「前の人、もしくはパーティ次第かもなあ。2階の時みたいにボス部屋で待ち時間あるかもだし」

「でも昨日の夕方頃でしょう?攻略したの。で、私たち一晩留まってますから結構進んでるのでは?」

「初心者じゃなきゃ進むスピード速いだろうしな。僕ら初挑戦だから手探りだし」

「管理されてるダンジョンであれば定期的に見回るでしょうしね。そういう人かもしれません」

「それもそっか。じゃあまあ進むか」



その予想は正しかったのか、3階層のボス部屋は普通に開けそうだった。

ここまでの戦いで、ハルの短剣術スキル、アキ兄さんの体術スキル、僕の護身術スキルが3にレベルアップしている。

ハルとアキ兄さんは『攻撃強化・微』、僕は『物理壁・微』という派生能力を覚えた。


攻撃強化の派生はどうやら複数所持していると加算だか乗算され、あるだけ強化されるらしい。なので同じ派生能力だから無意味、というわけではない。

まあ微なので、今はほんの僅かな恩恵でしかないようだが。

ただ、ハルのように短剣術と投擲だと、短剣で攻撃した時と投擲で攻撃した時に効力が出るので、それぞれ『微』の効果しかない。

が、ダガーか苦無を投げて攻撃した場合、短剣術と投擲の『攻撃強化・微』がどちらも反映されるそうだ。

まあそれやったら武器を手放すことにもなるので、あまりやりたい戦法ではなさそうだが。

アキ兄さんの場合は体術と剣術なので、普通に戦っているだけで2つの『攻撃強化・微』の効果がある。羨ましい。


そして初見の『物理壁・微』は、MPを消費して壁というより盾のようなものを作り出すことが出来る力だった。

しかし『微』の通り、微々たる効果。透明な薄い30cmあるかどうかの盾のようなものを出せるだけだ。

しかも一回攻撃を受けると霧散する。攻撃を受けなくても10秒経たず消える。

まあ、スライムの突進も酸攻撃も防いでくれたが。ちなみに反射などもせず、本当に防ぐだけ。が、物理攻撃であれば一回は確実に防げる。相手の攻撃力に関わらず。

弱点は範囲攻撃と複数回攻撃だろう。あとは大量の石を一気に投げられた時、1つしか防げないので大半は食らうということか。

戦闘センスの試される派生能力である。一応、多少離れた場所にも出せるので、自分への攻撃以外も防げそうだ。消費MPは増えるが。



「リオ兄さんのMPを考えれば割とやりたい放題できる派生能力な気がします」

「この透明な盾、大きさ変えられるの?」

「でかくするってこと?できるよ。MP使うけど」

「同時にいくつ展開できるんですか?」

「1つ。だから別の場所に出そうと思ったら1つ目が消されるか自分で消すかしないと出せない」

「出した後移動させるとかは?」

「人のそばにしか出せない。僕の近くに出した場合、僕が動けば勝手についてくる。アキ兄さんの右に出した場合、移動すると右側に固定されてついていく。すぐ消えるけど」

「あー、じゃあ誰もいない場所には出せないのか」

「…護身術の派生能力ですからね。守るためのものですから、守る対象がいないと発現できないんでしょう」

「あー、なるほどな」

「多分、物理壁なので魔法は防げないでしょうね」

「うん、そんな気がする。多分それ用の派生能力あると思う」

「…あった気がしますね。後でスキルメモ確認してみますか」

「もう細かいの覚えてないもんな」

「や、充分覚えてるよ二人とも。あたしなーんも覚えてないよ!」

「俺も同じく!」

「威張るな開き直るな胸を張るな。可愛いなもう」

「リオ兄さん…」



ひとまず、ボス戦はメインがハル、アキ兄さん。僕やナズは牽制だ。スライム相手に打撃ほぼ効かないからな。

ただ僕はこの『物理壁・微』でちょくちょく攻撃を防ぐ、という仕事は出来そうなのでそれはやろうと思う。

攻撃に参加したら連携やらが必要だけど、これならそこまで邪魔にならないだろうし。


そんなわけで、少し休憩した後、ボスに挑むことにしたのだった。


ラテについて。(今考えた)

シルスパイダーは中位種で、進化は中位種のタランチュラを経由して現在のヴェノムタランチュラに進化している。

召喚者(勇者)はスキル取得しやすいので、従魔のラテもその影響を受けている。

今まで(ナズの従魔になる前)毒魔法を使った時に地味に巻き込まれたことはあったけど、耐性は習得できなかった。

あと何度かくらうか、同格相手から毒をくらってれば習得してたかもしれないが、ラテは自分より弱い魔物しかいない森にいたため機会もなかった。

耐性習得事件()であっさり習得出来たのは、ナズの従魔になっていたから。

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