25.追加機能実装
「よし、完成」
「わー………殺風景…」
「ベッドしかないもんな」
「真ん中にベッド。と、ベッド下のラグのみ。せめて棚とか置きません?」
「必要になったら都度置こうかなって考えてたんだけど」
「ああ、その方がいいかもしれませんね」
宣言通り、空き室を設置した。場所はトイレの隣だ。
部屋は六畳ほどの白い洋室で、今はど真ん中にデーンとベッドだけが置かれている。
布団はふかふかそうで、ちょっと寝てみたいと思った。そう思ったのは僕だけじゃなかったらしく、また順番でここで寝ようと言い出した。
どうやら部屋を追加する場合はデフォルトでこのデザインらしい。それぞれの個室を作る時の参考になるかもしれない。
作ろうと思ったらMP4000もいるのか。いつになることやら。
とりあえず、このキャンピングカーで密室になるのはこれで3箇所。トイレとシャワー室へ続く洗面所、そしてここだ。
寝室は梯子がかけられているため、出入りするためのスペースが解放されっ放しである。
運転席の方も独立しているわけじゃなくて、座席で仕切られているように感じるが思いっきり同じ空間だ。
トイレと洗面所は若干試しにくいので諦めていたが、密室になる個室が出来た今、試したいことがある。
「ラテ、ちょっといいか?」
「キー?」
「どうしたのリオ兄」
「僕に毒魔法を使ってみてほしい」
「キッ!?」
「は!?」
「リオ兄!?」
「何言ってんだ!?」
「正気ですか!?」
「ずっと試したいとは思ってたんだ。勇者はスキル取得がしやすいから、毒をくらえば毒耐性スキルが得られるかもしれない」
「え、…あ、確かに…?いや、でも」
「多分毒牙でも猛毒でもくらえば即死する。でも毒魔法は毒の強弱を多少調整できるはずだ。弱めの毒を使ってもらえば、死なずに耐性を得られるかも」
「いやいやいや!でも毒くらった後はどうすんの!?」
「ラムが浄化魔法持ってるし、何とかなるかなって」
「ぴぷ?」
「あ!」
そう、浄化魔法は状態異常を回復させる魔法だ。解毒魔法と解呪魔法の上位互換。全ての状態異常を回復させる。
だから、毒魔法を使ってもらって僕が毒状態になった後、ラムに浄化魔法をお願いしようと思った。これなら比較的安全に毒耐性が得られ…
「それなら何でみんなを追い出そうとしてるのリオくん」
「毒魔法は範囲攻撃だ。部屋にいたら全員毒になるだろ。僕一人だけで試す」
「ラムも追い出して…?」
「だってラムには毒耐性ないだろ。危ない。だから毒魔法の効果はなくなってから室内に入って欲しい。ここ密室だから毒は外に漏れな…」
「お馬鹿!!!」
「何でそうなるの!!!」
「リオ兄さんが危ないって言ってるんですよ!!!」
「ラムを気遣えて何で自分は気遣わないんだ!!!」
「毒ってスリップダメージあるでしょう!即解毒しないと危険に決まってるじゃないですか!」
「ラテの毒魔法、レベル33なのに!高いよ!?弱めたってリオ兄のHPが5秒で尽きたりしたらどうするの!」
「即浄化魔法かけられる状態じゃないと許可しないからな!」
「いい、ラテ!リオ兄が馬鹿なこと言ったら断るんだよ!」
「キィ~…」
「ぷぷ、ぴぷー」
「キ?」
「ぴぴぷ、ぴー」
「…ラム?ラテ?」
めっちゃ怒られた。え、何で?だって耐性得られる可能性あるならやった方がいいだろ。
ダンジョンとかで毒くらったとしても耐性あったらしばらく耐えられるし。そう思ったんだけどな…
んで、ラテとラムが何かきーきーぴーぷー鳴いてる。何だろう?相談?
そう思ってたら、ラテがラムに噛みついた。は!?
「っ!?ラテ!?」
「ラム!!!」
「キィ~…」
「ぴぷ、ぷー」
「キッ」
「もう一発!?」
「ら、ラテー!?どうしたの!?」
「ぴ、…ぴぷー!」
「わっ!?」
ラテがラムに二回噛みついた。その後、ラムが喜んだ、のか?光が二回。
何が起きてるのが不明すぎる。何かラムがアキ兄さんに必死でぴぷぴぷ鳴いてる。説明、だろうか?
「ええ!?」
「あ、アキ兄さん?ラムは、ラムは大丈夫なんですか?」
「う、うん。何か…えっと、さっきの光は浄化魔法と回復魔法だって」
「え?」
「…ラム、今ラテに毒牙くらって、毒耐性習得した、って…」
「はあ!?」
慌ててラムのステータスを見ると、確かに『毒耐性LV1』があった。
あ、一回じゃ習得できなかったから二回噛まれた、のか?毒牙での攻撃を?
「何て無茶するんだ!ラテの毒牙はレベル34なんだぞ!」
「ぴっ…?」
「…キ?」
「………」
「………」
「………」
「お前が言うなオブザイヤー」
「ブーメランって知ってる?」
「説得力皆無なんですけど…」
「…え?」
全員からしらーっとした顔で見られた。
いや、だって、僕の場合は勝算があった、というか…
「ひとまず、やるならいいけど、ラムも一緒に部屋に連れてって」
「え、や、だって」
「今、毒耐性取得したから。HP高いし、リオくんへの解毒を優先してもラムは大丈夫って言ってるから。てか毒魔法より強い毒牙受けて大丈夫だったし」
「あ、あー…確かに、そう…なのか?」
「毒耐性は、確かに取得できるならした方がいい。リオくんの言い分もわかるから。でもラムを連れてかないなら許さないから」
「う…」
「てか、あたしらもこの後やるからね」
「リオ兄さん、この取得方法危ないかもしれないから自分でまず試そう、って思ったでしょう。何なら今私からやってもいいんですよ」
「や、それは…」
「やるの?やらないの?」
「や、やります…」
「ラム、リオくんが毒になったら速攻浄化魔法よろしく」
「ぴぷー!」
「え、えええ…?」
ぽんとラムを渡されてしまった。ラムはアキ兄さんに頼まれたのが嬉しかったのか、ぷるぷる揺れてる。
そのまま、アキ兄さんとナズとハルはこの部屋を出た。扉もしっかり閉めたのは、毒魔法が範囲攻撃だから、扉で遮られるようにと考えてだろう。
うん、毒魔法は確かに範囲攻撃だけど、効果は1~2秒。すぐ霧散するから放って3秒も経てば無害だ。でも何かに遮られなければかなり広範囲に届く。
今は密室で、扉で遮られてるから、扉の外なら被害はないはず。これはスキル大全やギルドの魔物図鑑で知った情報だ。ハルも当然知ってる。
だからこそ、扉を閉めれば問題ないと判断してくれた。
「う、うーん、じゃあ、ラテ、お願いしていいか?」
「キー…」
「呆れた声出すなよー…」
ラムをラテのすぐ隣に置いて、ラテの正面に座る。ベッドの隣なので部屋のほぼ中央だ。
扉からも離れてるし、ここなら万が一にも毒魔法がアキ兄さんたちの方へ行くことは無い。
ラテもそれがわかってるのか、毒魔法を僕に放ってくれた。範囲はギリギリまで狭めてくれてるんだろう。
紫と緑が混じったような煙が周りを包んだ。色が薄いのは、精一杯弱い毒にしてくれてるのか。
ともかく、それは確かに僕に放たれ…
《毒無効スキルを習得しました》
「知ってたーーーーーー!!!」
「キィ!?」
「ぴ?ぴぷ、ぷ!?」
頭の中に流れたアナウンスに思いっきり突っ込んだ。
声が届いたのか、アキ兄さんたちが慌てて入ってきた。
ラムもおろおろしてる。うん、ごめん、多分浄化魔法使おうとしたのに、僕を選べないというか、かけられなくて焦ってるんだろう。
ゲームで言う所のカーソル的なやつがあるのかもしれない。HP満タンの奴に回復魔法をかけようとしても対象に選べないみたいな、あんな感じ。
「どうしたの!?」
「ラム、え、選べない?リオくんに魔法かけられないってこと?」
「毒魔法が不発になったってこと、ですか?」
「違う、大丈夫、予想はしてた、してたんだ…」
「なにごと?」
「『毒耐性』じゃなくて、『毒無効』を取得した…」
「は?」
「え?」
「まって?」
「キッ…?」
「ぴぷ…」
「…リオくん、説明」
「あい」
とは言っても、既に説明はしてるようなものだ。
僕は元の世界で、呪いやら何やらそういう見えない力というか超常現象によるものは一切効かない、と。
これは僕の体を透過しているので、まったく影響を受けない。力を受け付けない。そういうものだ。
ただ、現実では毒薬などの毒は普通に効く。あくまで効かないのは、普通の人に見えない感じない超常的な力になる。
この体質を、こっちの異世界で考えたとき、毒のスキルは果たして僕に効くのかと疑問に思った。
可能性として、効かない確率が高いと判断した。スキルは自分の魔力をそれらしい現象に変換して引き起こす類のもの。
そしてこの世界、大抵のものはマナを帯びている。なので、この世界において、僕は毒を始めとした状態異常は効かないんじゃないかと思ったのだ。
毒薬などもマナを帯びた物質であれば、まるごと効かない可能性がある。その検証をしたくて、この度このような頼みごとを致しましたハイ。
「…最初に説明してくれんか、それ」
「ハイ、ごめんなさい」
「つまり、リオ兄は毒はどうせ効かんだろうしって軽い理由でこんな阿鼻叫喚一歩手前の惨事を引き起こした、ってこと…?」
「あび…!?」
「少なくとも、私たちの心は阿鼻叫喚の大惨事でしたよ」
「すみません」
「ラムもリオくんに浄化魔法かけられないって混乱してたからな」
「ぴーぷぅ~…」
「まことに申し訳なく」
めっちゃくちゃ怒られた。
でも耐性を得るのはいい案ってことで、全員が試すことになった。
鑑定とかで何とかなりそうとはいえ、間違って毒のある草とかで手を切ったりしたら危険ってことで。
口に入れるものは大抵アキ兄さんの作るものだから無害だし、危なそうなのは先に洗浄とかで綺麗にするから問題なし。
でも何かのスキルや罠の毒は防ぎようがない。だから耐性を得ておこう、そう考えたらしい。
方法は僕が試そうとしたものと同じ、ラテに毒魔法を一人ずつかけてもらうというもの。ラムが近くでスタンバイしてるので、即解毒できる。
ラテの持つ毒を全部使ってもらい、それぞれ耐性を得ることに成功した。
僕が『毒無効』『麻痺無効』『石化無効』…が統合されて、『状態異常無効』に。
アキ兄さんとナズとハルも同じく三種類の耐性を得て、『状態異常耐性LV2』に。
一緒にスタンバイしてたラムも耐性を得たため『状態異常耐性LV3』に。
そして地味に巻き込まれていたラテが『毒耐性・大LV2』『麻痺耐性LV3』『石化耐性LV3』を習得していた。
そういやこの子、毒蜘蛛だけど耐性系はなかったな。魔法の範囲攻撃にガッツリ巻き込まれたことで習得したらしい。
毒の耐性だけ強力なのは、種族特性だろう。何せ毒の専門家みたいなものだから、耐性もすごいのだろう。…何で今までなかったんだ?
ちなみに『状態異常耐性』は、耐性系を三つ取得すれば統合される。この耐性系は何でもいい。今回は毒と麻痺と石化だけど、混乱や魅了耐性でもいい。
なお、状態異常耐性はその名の通り全状態異常への耐性だ。今回僕らは「毒・麻痺・石化」の耐性しか得てないが、混乱や魅了も自動的に耐性ができてる扱いになっている。
混乱と魅了を一度もくらってなくてもだ。それだけに、状態異常耐性というのは強力で、経験値もなかなか溜まらずレベルも上がりづらい。
けれど全状態異常に効くので欲しがられるスキル上位だそうだ。スキル取得自体がレアなので習得率はお察しだけど。
効果は『耐性』<『耐性・大』<『無効』になる。基本、下位互換のスキルレベルが50になったら上位互換へランクアップするらしい。
「何かもったいないからラテの状態異常、もう一個取得して状態異常耐性にしたい」
「わかるけど。…他の取得できそうな状態異常って何があるんだ?ラテは毒と麻痺と石化しか持ってないぞ」
「猛毒は駄目なの?」
「猛毒は毒の上位互換で、同系統なんですよ」
ハルが紙を引っ張り出してきて読み始めた。多分、状態異常について記載されてるやつだろう。
結構多いんだよな、状態異常。毒が一番有名だけど。
重いのは駄目だ。軽めの状態異常から確認していく。睡眠・気絶・混乱・魅了・火傷・凍結・呪い…
睡眠は微妙だな。自然に就寝する場合は状態異常と見做されないので、判定が乗るかどうか微妙な状態異常だ。気絶もどうだろう…
「混乱とかくらってラテ暴れたら俺ら死ぬぞ」
「ラム以外死ぬな。うーん、火傷は蜘蛛には怖いな。種族特性で火に弱いし。じゃあ凍結が一番いいか?」
「でもこの辺に凍結ができるものなんて…寒くも無いし魔物だって、氷属性はいません」
「加減間違えたらやばいけど、ラムの水魔術でどうにかならないか?氷も作れるはず」
「あー」
「足一本だけ、ちょこっと凍結とか…無理かなぁ…」
「他の状態異常にアテがない以上、それが一番…?どう?ラテ、ラム」
「ぴぷー、ぴっぷー!」
「キー、キィー!」
「何か超喜んでね?どうした?」
「その手があったー、みたいなこと思ってるっぽい」
「ラテも同じく」
「じゃあそれで行って…うぉい、どこ行く!?」
ラテとラムがさーっと移動して空き室に入って行った。ラム、跳ねて移動してるくせにめっちゃ速いな!?
あとドアはラムが触手伸ばしてきっちり閉めていた。器用なスライムだな…
「え、耐性取得するのはあの部屋って覚えちゃった!?ち、違うよ!?」
「多分、私たちを巻き込まないようにだと思います。冷えるでしょうし。あとナズ姉のためかと」
「…あたし?」
「多分だけど、ラテが部分的に凍っちゃうとこ見て、悲しまないようにって思ったんじゃね?」
「あ…」
「あー、ナズは確かに気にしそう。ラテ自身が平気でも、ナズ優しいからなぁ」
「ラムがすぐ回復させるって言っても、直接見ちゃったら思う所はあるだろうしな」
「うぅ、ごめん…」
「悪いことじゃないだろ。ナズ、ラテのこと大好きだもんな」
「…あ、出てきた」
機嫌が良さそうなラテとラム。どうやら成功したらしい。
鑑定で見てみると、確かにラテに『状態異常耐性LV3』が増えていた。石化耐性と麻痺耐性は消えたけど、統合されたんだろう。
毒耐性・大は1ランク上の耐性なためか独立している。他の『耐性・大』を習得しないと状態異常耐性・大にはならないのか。
ともあれ、強くなったのに違いはない。ラテとラムがあっさりスキル取得できたのは、魔物だからか勇者の従魔だからか、どちらかは不明だけど気にしても始まらない。
「せっかく耐性スキル覚えたわけだし、ちょくちょくラテに毒くらわせてもらってレベル上げしよう!」
「キッ!?」
「そうですね。高ければ高いほどいいですし」
「範囲魔法なら全員一気に判定でるな。ラテもだし、ラムもレベリングする?」
「ぴぷー、ぴぷー!」
「じゃあ一日一回くらいは空き室で状態異常耐性レベリングな!三人と二匹で!」
「…え」
「だってリオくん『無効』だから参加しても意味ないだろ?」
「あ、うん、そうだけど…」
「うんうん、リオ兄抜きでやろうね!」
「………」
「リオ兄さん、反省しました?」
「…あい」
「二度と一人で突っ走って変なことやろうとすんなよ」
「あたし、ギャン泣き一歩手前だったからね」
「キ~~~…」
「ぷぴ~~~…」
「…すみませんでした」
「大人なんですから、報連相しっかりしてください」
「あい」
子供に報連相の重要性を説かれるとは。反論の余地がないので素直に聞くけど。
あ、そうだ。報告といえば。
「スキルレベルが8に上がった」
「は?」
「は?」
「は?」
「ひえ」
「報、連、相!意味は!?」
「報告、連絡、相談!です!」
「ひとつも出来てないじゃないですか!」
「ごめんなさい!」
「おおう、ハルがキレた…」
「何で突然野菜の話がって思ったことは秘密にしとこう…」
「アキ兄、声に出てる」
キャンピングカーの機能を追加したことで経験値が大量に入ったらしく、空き室を設置した時にレベルがアップしていた。
ただ、予想はしてたし、空き室の中を整えたり、毒についてのアレコレを優先しようと思って後回しにしていたのである。
めちゃくちゃ怒られた。今日ずっと怒られてるな僕。
「…それで、何か派生能力はありました?」
「えーと、『自動行動・微』が…」
「は?何ですかそれ」
「召喚したやつが、勝手に動きます。もっとも『微』だからほとんど意味ないです。あ、カーくんの場合は自動運転みたいになります」
「うええ!?やばいやつでは?」
「この能力を使わない限り勝手に動いたりしないし、動くのもそれぞれの能力の範疇でしかない。多分レベルが上がると自由度上がって色々できる」
「…自動運転は地味にありがたい、かも?今リオ兄が運転しないと動かないし」
「でも勝手に進まれたら困ります。設定した道を進んでくれるならまだいいですけど」
「ああ、そういうやつだ。ここまで進んでって設定したら、そこまで自動運転してくれる」
「お願いしないと…っていうか、力使わないと動かないんだよね?」
「そう」
道具とか、基本的に動かないものだからな。僕が召喚した物であろうと、それは変わらない。
自動行動にしても無機物操作にしても、僕がスキルで無理やり動かしてるようなものだ。
「カゴとかにそれ使ったらどうなるの?具体的にはラテとラムの寝床」
「んー、入れるモノだから、今から投げるの受け止めてとか言わない限り動かないかな。多分『微』より上だと入れてたものが零れ落ちたら回収する、くらいすると思うけど」
「ああ、あくまでその道具ができる範疇のこと、というか、道具の用途とかけ離れたことは出来ないって感じでしょうか」
「そんな感じ。ペーパーナイフは折った紙見たら切ろうとするけど、りんごとか見ても皮を剥こうとはしない」
「ふーん…今のとこ、使って便利そうなのはカーくん自動運転くらいかぁ」
「というより、カーくんはかなり高レベルで召喚できるはずのものですからね。恩恵が大きいんでしょう」
「消費MPはどのくらいなの?」
「カーくん以外は微々たる量かな。カーくんの場合は、距離にもよるけど1時間任せて10使わないくらい?」
「リオくんのMP量考えたら結構アリな力か?」
「500ですもんね。まあ不測の事態なんかに気づけないってデメリットもありますけど、食事中も進めると考えれば、普通にアリでしょうか?」
「あー、食事中かあ。隠密効果で何が出てもぶつからず進めるからなー。カーナビで設定した道進めって言うのは確かに有り…?」
「方法のひとつとして覚えとこうか。考えたくないけど、リオくんが動けない時、使えるかも」
「病気で寝込んでるとかですね」
「いい能力っぽい!召喚は何かいいの増えた?」
「うん、アルミ系がちょっと並んだ。アルミホイルとか」
「アルミホイル!?超欲しい!」
「召喚するよ」
あとは言い忘れたこと、ないよな?うん、ない。
でもこれで1つ追加機能が終わった。次は何にしようか。湯舟?
「一旦思いつくものはないので、溜まりそうになったら考えません?」
「せやなー。まあ湯舟が第一候補かな?あたし」
「あとは個人部屋とかキッチン拡張…は俺だけか、希望」
「いいんじゃないですか?キッチン拡張。今は二人ギリギリですし」
「コンロ一個増えるだけで効率上がるんじゃないの?」
「パンとかうどんとか手作りしようと思ったらでかい台とかいるんじゃないか?タネとかこねるための」
「ああ、何かバンバン叩いてるイメージあるね」
「麺棒なら僕の召喚ラインナップにある」
「作って欲しいの?まあ作り方は知ってるけど」
「何となく思いついただけなんだけど食べたいかと言われれば食べたい」
「うどん、いいよね…半熟卵乗せるの好き」
「パンもいいですね。バリエーション無限に近いですよ。バゲット、ベーグル、フランスパン…」
「レタスとか卵とか挟んでサンドイッチにしようぜ」
「いいね。外でも食べれそう」
「おっとラムの目が輝いてる気がする。どんなのか想像ついてないけど美味しいのが出るんだろうなって期待してそう」
「よくわかったなリオくん。まさにそんな感じだわ」
「じゃあキッチン拡張も候補に入れとくかー」
「それにしても結界機能とか、キャンピングカーのポテンシャル凄いですね」
キャンピングカー追加機能一覧を見て、ハルが呟いた。
出来そうなことリスト書き出したんだよな。自分一人で決めるのもどうかと思って。
今見ても出来ることは同じだ。一回追加したから、出来ることが増えてるかもと思ったけどそれはなかった。
まあこれ以上出来ること増えられても、って感じだからいいけど。
結界機能は悪意あるものを弾くとか、入れないようにするとかそういうやつだ。かなり有用なんだろうけど、ハルの隠密があるから後回しになってる。
ていうか隠密があればこういうものはいらない気がする。だって必要な時ってハルのMP尽きた時くらいだし。
ハルはそうならないように注意してくれてるから、優先順位低いんだよな。ハルに何か起きた時は必要になるかもしれないけど。
それこそ、外に行ってる時に病気になるとかで気絶して慌ててキャンピングカーに運び込んだ時、とか。
あとは空間拡張が結構便利そうだけど、現状狭く感じてないからなあ。寝室も寝るだけだし、運転席も充分。
居住スペースというか、座席やテーブルがある区画が一番の候補か。ここ反映させると席が増えたりするらしい。
乗る人間が増えたら必要かもだけど、今四人で足りてるもんな。座席だって本来六人くらい座れるのを四人で使ってるから余ってるし。
三人掛けの座席が二つ、その間に机がひとつ。いつもここで向かい合って食事してるし、ナズはよくここで作業している。
すぐ横に窓があって、どこを走ってるか見れるようになってる…けど、全然地理に詳しくないからただ眺めるだけだ。
ちなみにこの座席、ソファベッドのように倒せるようになってるし、背もたれにする部分を逆にすれば進行方向の方を向いたり逆を向いたりできる。
面倒なので、向かい合った状態で固定してるけど。中には進行方向の逆を向いてると車酔いする人もいるから、必要な機能だろう。
なお、このメンツで車酔いする人は僕以外いない。三半規管が丈夫で羨ましい限りである。
「まず最初の目的地はこの初心者ダンジョンですね」
「えー、食料ダンジョンじゃないのかー」
「それは次ですよ。それにそっちは10階層です。初心者用の5階層から行きましょう」
「他の冒険者、いるかなあ」
「多分私達と同じで、初心者用をお試しで攻略しようって人がいると思います。あまり多くないとは思いますけど」
「この世界のダンジョンって、クリアしても残るんだっけ?中には攻略されたら崩れるのもあるじゃん」
「マジか。危ないな?どうやって脱出するんだそれ。魔法とかあんの?」
「よくあるのは脱出用ポータル…まあワープ装置があることかな?あとは自動で入り口に戻るとか」
「ええと、ダンジョンコアを破壊されたらダンジョンは消えるようですね。ただ、ここは初心者用で危険度も低いということでコアはそのままで放置されてます」
「あー、そういうことか」
「ダンジョンは魔物が勝手に湧きますし、素材も時間が経てば復活します。危険性が少ないのはコアが破壊されずに維持されてるようです」
「レベリングとか出来るだろうしなあ」
「ええ、あと、戦力を測るのにもちょうどいいんだとか。逆に危険度の高いダンジョンはどれだけ素材が優秀でもコア破壊を目指すようですね」
「ふーん、じゃあ僕らも攻略だけしてコアは無視すればいいんだな」
「そうですそうです。ここはちゃんと管理されてるそうなので、勝手にコア破壊とかしたら怒られるやつです」
ダンジョンは放置されてるとどんどん成長して大きく深くなる。それだけに素材も魅力的になるらしいが。
ただ、放置しすぎると増えた魔物があふれ出し、スタンピードが起きるので定期的に魔物を間引きしてるそうだ。こうすれば成長しないのだとか。
管理されているダンジョンとは、そういう間引きをしているという意味だ。大抵近隣の村や町に住む冒険者がやっている。あとギルド員。
残しておいた方が得になるダンジョンは、そうして維持されている。村に災害が起きた時など、ダンジョンで獲れる素材で持ち直すことも多い。
アキ兄さんが行きたがってる食料ダンジョンもそうだし、生活で使う鉄鉱石やら木材やらが手に入るからだ。
なので重要な場所として定期的に様子を見ているので、コア破壊などしようものなら下手すると指名手配犯にされる。
このあたりは冒険者ギルドで、ダンジョンに興味を持った冒険者全員に説明してるらしい。指名手配と聞いてビビり散らすので違反者はほぼ0だそうだ。
知らずに破壊しようとする奴もいるそうだが、コアは頑丈なのですぐには壊れない。
そして管理されてるダンジョンのコアは、異常があると知らせるような魔道具を設置しているため、それが反応したらすぐ近隣の冒険者が向かう。
これで破壊前に止められるケースがほとんどだそうだ。なので隠れて壊すなんてことはほぼ不可能というわけだ。
ラムあたりが魔法ぶつけたら一瞬で壊れて、空間魔法で逃げるなんてことも可能かもしれないが、やる意味がないだろう。
「なので目当ては、ダンジョン最下層到達報酬です。初回クリアの場合はちょっといいものが手に入るそうなので」
「僕らだけでクリアできるもんかな?多分ボスとかいるだろ?」
「初心者用なので、レベル8~10程度の冒険者なら1~2人でもクリアできるそうです。私達の場合、4人いるので何とかなるでしょう」
「もし俺らの手に負えなくても最終兵器ラテ&ラムがいるしな」
「準備は必要なの?罠とかない?」
「普通に進んで2~3日でクリア出来るそうなので、物資はその程度…私たちにはほぼ関係ないですね。罠は危険なものはないそうです」
「えっと、ああ、落とし穴があるのか。でも腰までしかないからほぼ怪我の心配もない、と。魔物が来たら危ないけど、何とかなるか」
「しかも見えやすいそうなので、乱戦とかにならない限りまず落ちないそうですよ。魔物がいないうちに駆け抜けろってギルドの人は言ってました」
「ハル、こんな情報も集めてたんだなー…」
紙を出してきたかと思えば、ダンジョンの情報がまとめられていた。
情報源はギルドの人らしい。聞けば教えてくれる情報で、機密性はないそうだ。
ダンジョンの情報は広く開放されているらしい。
「ガレメナまでの道で時間つぶししないとって言われた時に、ダンジョンならいい時間つぶしになるなと考えて、つい…」
「いやいや超助かる。ハルすごいやん!」
「注意点として、万が一ダンジョンで死んだ場合は、死体はダンジョンに吸収されます。遺品も残らないそうなので、絶対死なないように」
「ダンジョンに救出に向かってくれって言われた場合、対象の冒険者が見つからないケースも大いにある、だったな」
「ええ、リオ兄さんの言う通り。死んでダンジョンに吸収されてしまえば、そんな人がいたのかどうかの痕跡も残りません」
「…魔物の死骸とかも、そうやって吸収されるの?」
「ダンジョン産の魔物は倒されるとドロップ品に変化します。まあ毛皮とか体の一部ですね。なのでそもそも魔物の死骸自体発生しません」
「あ、そうなんだ、そのタイプか」
「ちなみにこのドロップ品が討伐証明になるそうです。ダンジョン街のギルドで討伐依頼を受ける時は注意ですね」
「あー、わざわざ解体しなくていいのか」
「でも討伐証明が肉だった場合、途中で食べたらその分討伐数少なく記録されますよ」
「ええ!?」
「…アキ兄さんにダンジョン街での討伐依頼は向いてなさそうだな」
「俺も今そう思ったわ」
その初心者ダンジョン「ルーキー08ダンジョン」はあと二日ほどで着く。
合間に森で採取するかもしれないけど、それでもプラス一日で着くだろう。てかこれ名前つけたの絶対勇者だろ。少なくとも初心者用あと7つあるのか。
一旦そこまではのんびり進むことになった。逆に言えば、のんびりしたいからアホなことするなよと言われた。
全員が僕の方見て、だ。ひどい。




