表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/223

22.レベル5


《リオがレベルアップしました》

《レベルが5になりました》

《権能・空間作用を習得しました》



これが、レベルアップ時に聞こえた内容である。

何となくどういうものかはわかったけど、レベル5でこれと似たようなことが出来るようになったら色々まずいのでは。

僕ら4人ならともかく、城に残ってるであろう勇者()どもがどんな権能を得るかまったくの未知数だ。

今の状態じゃ、ロクに使えなかったとしても、レベルが上がればどうなるか。

なるほど、アキ兄さんが焦って全員のレベルを上げようと提案するわけだ。

こっちの底力も上げておかないとまずいと思ったんだろう。

合流地点に戻ったら、まだナズとハルはいなかった。時間が少し早いというのもあるだろう。

多分、ギリギリまで戦闘しようと思ってるはずだ。あの二人はなかなか勤勉で真面目だし。



「…探して合流しよう」

「そうだな、ラテ、頼めるか?」

「キー!」



ラテはナズの従魔だ。ナズの居場所は何となくわかるんだろう。加えて感知系スキルもあるので、アキ兄さんがラムの気配を探るより確実だ。

すぐに感知したらしく、先導するように駆け出した。ラテ、小さい背中なのに超頼もしい。アキ兄さんと一緒に追いかける。

少し移動したところでゴブリンと戦う2人を発見した。



「うわ、ゴブリンすご!」

「やっぱこっちに来てたのかー…」

「あれ、アキ兄とリオ兄!?」



ハルがゴブリンに止めをさし、耳を切り取ってこっちに来た。ナズと同じように驚いていた。

てか、ゴブリンの耳が結構…7つか。こっちなんて2匹しか出なかったのに…



「ごめん、ちょっと確認したいことがあって、少し早いけど切り上げてきた」

「アキ兄さん…?何かありました?」

「まずいこと?」

「いや、まずくはない…と思う。ところで、二人ともレベルは上がってない?」

「スキル?あたし従魔術が4に上がったけど」

「いや、そっちじゃなくて個人のレベル。まだ4?」

「…はい、上がってませんね」

「あたしもまだ。あとどのくらいだっけ」

「俺らさっき上がったから多分すぐだと思う」

「ゴブリンの経験値が低いんだろうな、多分。ライビもスライムも低いんだろうけど、ゴブリンより上なのかも」

「こっち、ゴブリン出なくてライビとスライムばっか出たからさ」

「…そうなの!?ゴブリンばっか出たけど!」

「あとはスライムが1匹くらいですね。偏りすぎでは…」



女に見えない見た目なのでゴブリンにスルーされた可能性高まってきたな。

それ言ったらナズもハルも嫌そうな顔してたけど。うん、狙われても欠片も嬉しくないだろうな。

以前渡したゴーグル等に、まだ鑑定能力は発現してないらしい。視力矯正というか、望遠みたいな能力が弱いけど発現したらしいので、もう少しだと思う。

僕の方で見てみると、あと1回戦闘すればレベルが上がりそうなところまで経験値は溜まっていた。



「…そっか、ならレベル5に上げよう」

「え、ええ、どの道あと1戦くらいはするつもりだったので構いませんが」

「レベル5になんかあるの?スキルでも凄いの覚えたから、何か覚えるのかな?」

「そんな感じだ。でもスキルと違ってどんなのを覚えるかまったくわからないから」

「…そうなの?うーん、怖いような楽しみなような。とりあえず、魔物探そうか…?」

「そうですね。アキ兄さんとリオ兄さんが予定変更してまで来るくらいです。余程なんでしょう」



会話してる間にも、倒したゴブリンはラムが燃やして処分していた。必要なのは討伐証明の耳だけだからな。

体の方は他にはぎ取れる素材もないし、放置してたらアンデッドになる可能性もあるらしいので、ギルドは燃やすのを推奨している。

魔法が使えない場合は、燃やすための道具をギルドが貸し出してくれる。具体的には火と土の魔石だ。

土を掘ってその中に死体を入れ、火の魔石で燃やす。終わったら土をかぶせて灰を埋める。これで終わりだがなかなか面倒である。

ゴブリンの討伐が嫌がられる理由のひとつである。ライビやウベルスは解体したら肉や毛皮が金になるのでまだ嫌がられないが、ゴブリンの体は1ゴルダにもならない。

僕らも一応借りてきてるが、ラムが魔法を使えるので任せているのである。

土の魔石で土を掘るのは、周りの木々に火がつかないようにだが、ラムは火力とコントロールがすさまじいのでゴブリンを一瞬で消し炭に出来る。

木なんて余計な部分に燃え移る火なんてない。本当に死体のみを燃やすのだ。とんでもねえスライムである。ちなみにゴブリンはお好みでないそうだ。食欲的な意味で。

まあ、借りてきた手前まったく使ってないと「マナ残量減ってなくない?」と疑われるので何度かは使ってるが。

というか、本来の冒険者がやっているであろう作業を一度は経験しておいた方が良いと思って、全員で最低一回ずつは使ってるのだ。

あまり何度もやりたい作業じゃないということはわかった。

仕留めたゴブリンの処理が終わると、全員で森を歩いて次の獲物を探す。

すると、時間を空けずにゴブリンが現れた。遭遇率どうなってんだ。もう慣れてしまったのか、即仕留めてたけど。



「…っあ…?」

「え、なに、これ…?」

「お、覚えたっぽいなこれ」

「予想通りで安心したー!」

「えええ、なにこれ?けんの覚えたって…?」

「権能、ですか」

「どういう意味?なにこれ?」

「えーと、権利を主張して行使するとか、何かをするための資格を持ったとか、そんなん?」

「は?」

「リオくん、日本語で…いや日本語か。特殊能力とかそういう意味じゃないのか」

「…意味を考えると、特殊能力の行使する許可を得た…?誰からの許可だ…?」

「リオくん、リオくん?むずかしいこと考えるのやめて???」

「もしかしたら、この権能というのは私達勇者、もしくは異世界人特有のものかもしれませんね。この世界の住人には発現しない力なのかも」

「ハル?ハルまで難しいこと言うのやめて?」

「大人と秀才が何か難しいこと考えてる!中学生にわかるようにゆって!」

「…何か偉い奴が『この力使っていいよ!』って言って得られた力が、権能、かな?」

「そうですね。アキ兄さんの言う通り、特殊能力でいいと思います。多分、スキルとは別の力…でしょうか?同じなら普通にスキル取得でいいはずですし」

「鑑定でも権能って項目が設けられてるからな。スキルとは別の扱いなんだろ。ややこしいな」



この世界を作ったのは神で、勇者召喚の魔法陣を伝えたのも神。単純に考えれば神から賜った力、みたいな扱いなのか。

権能ってのは法律上か何かの事柄を行使することが出来る権利とか、権限とか、要職についてる奴が使える能力みたいなものだったか。

普通の人じゃ使えないもの、警察が拳銃持てるとか必要なら家宅捜索するとか、法律で許可出てるから使えるもの、そういう意味だったはずだ。


いや、変な仕事してるもんだから、ちょくちょくこれ法律に触れてね?みたいなのがあって、それを調べたりしてたらそういう知識がついたんだ…

結果、自分たちで勝手に作ったモノだから、法律で禁止されてるモノに似てるかもだけど原料も燃料もまったく別物だからギリギリセーフ!って結論になったけど。

でも知らん人に見られたら多分危ないよね、銃刀法違反とかくらいかねないよね、みたいな話したなあ…

銃に似てる?材料は粘土だし、撃ちだすのは自分の力だし、ほら、幼稚園児が粘土で武器作ってキャーって言うの全然罪じゃないじゃん?とか。

刀に似てる?超切れるけど実は紙だから、ちょっとリアルな折り紙だから、折り紙で何作ったって誰も怒らないし?とか。

殺傷力のある武器にそっくり?いやこれアクセサリーだからさー、武器の形したカッコイイキーホルダーとか土産屋にあるじゃん?それですよ?とか。

割と無理がある気がしないでもないけど、実物じゃないから…なんてのを調べてたなって今思い出した。

その時に得た知識で、たまたま知ってただけである。詳しく言えやしないけど。



「と、ともかく、それぞれどんな権能か共有しないか?」

「何かリオくん、ごまかした?いや、いいけどさ」

「う、うん、試したりしたいし…?」

「外でないと試せないとか、安全地帯でないと試せないとかあるでしょうしね。私はキャンピングカーでも試せそうなやつです」

「あたしもそうかも」

「俺もかな?いや、外でもいいか…?」

「僕は外の方がいいかな?別にキャンピングカーでもいいけど」



ざっと意見を出し合った結果、アキ兄さんと僕がこのまま外で、ナズとハルがキャンピングカーで試すことになった。



「じゃ、俺からな。俺の権能は『倍化』だって」

「…ばいか?それ、倍になるって意味の倍化?」

「あ、そっち?あたし売値の意味の売価かと思った」

「人間族領と獣族領、違う通貨がありますからね。私も両替えとか出来る系の能力かと…」

「ああ、リオくんが正解。にんべんに立つ口の倍」

「そっちかー、えっと、倍にできる能力ってこと?」

「そう、多分召喚で出したりんごを倍にして2個に出来るとか」

「…地味にありがたいやつでは。こう言うのも何ですが、食費はほぼかからないまでも量の問題ありましたよね。希少な材料を増やせるってことですか?」

「そうそう、多分綿とかも増やせると思う」

「は!?超ありがたいんですけど!?」

「だろー?俺も思ったよ!」

「………まぶしい…っ」

「どうしたんですか、リオ兄さん?」

「真っ先に戦闘で使えそうな能力だなとか思った、自分の荒み切った思考回路が恥ずかしい…!」

「えっ」

「…戦闘で、使える…?」

「別に恥ずかしくはないのでは…ところで、どう使うんですか?ちょっと想像つかないです」

「えーっと…」



ちょっと使えそうなものを探す。あ、これならいいかも。お試しで召喚して、使えそうにないからアイテムボックスの肥やしになってたやつ。

丸い木の板を取り出して、木に立てかける。これはダーツとか弓の練習の時に的にするやつとか、そういうものに使う板だ。

点数を示す模様や数字は入ってないので、ただの円形の木の板になってる。



「…?それ、どうするんだ?」

「アキ兄さん、この板に『衝撃波』使ってみて」

「え?下手したら割れないか?そこまで行かなくても傷はつくと思うけど」

「それが目的だよ。どの道使い道なくて肥やしになってたやつだから破壊しちゃってもいいよ」

「ええ?うん、わかった」



言葉通り、すぐに衝撃波を飛ばしてくれた。バギッと音がして、斜めに傷がついた。完全に割れてはいないけど、皹は入っている。

あとでダストシュートに入れればいいと思ってたが、ラムがじーっと壊れた板を見てるので、食べたいのかもしれない。あとであげよう。

そして今度はさっきの板からさほど離れてない場所に板を出した。同じものだ。木に立てかけるのも同じ。



「アキ兄さん、次は『倍化』を使って、あの板に衝撃波ぶつけてみて」

「…え、あ、うん、わかった」



よくわかってないという顔をしながらも従ってくれた。

特に光ったりするわけでもなく、倍化は使っても傍目にはわからないらしい。

使ってるのか使ってないのか誤魔化せるのはかなり有利じゃないだろうか。

そしてもう一度、板を衝撃波で攻撃する。バギギッと板の割れる音がした。さっきとは違って、音が二重だ。



「…あ…!?」

「うわっ、こういうこと!?」

「これは…!」

「思った通りだった…」



最初の衝撃波と違って、今放った衝撃波は『倍化』の能力で剣筋が二つになったらしい。斜めについた傷は二本だ。

どうやら連続攻撃ではなく、一度の攻撃で二回攻撃相当になるようだ。同じ角度で、1cmほど横に傷が刻まれている。

倍化で増えた剣筋は右なのか左なのかは不明だし、これは自分で指定できるのか。上にずらしたりできるのか。

そのあたりは、できなくもないが魔力を多く使う気がするという返答だった。特に意識しない状態で放った今の衝撃波だと、右の剣筋が増えた方らしい。

自動的に生成される『倍に増えた』ものは右側に出る。意識すれば上下左右を選んで出すこともできると。思ったより自由度が高い。



「やばいな、これ。強いぞ」

「そ、そう?便利だなーとは思ったけど…」

「今のレベルでこれなら、レベルもっと上がったら本気で強い。衝撃波のレベル低いから板にヒビ程度だけど、もっと強くなったら、それが倍になったら」

「うわ、マジだ。アキ兄が超強くなるじゃんそれ」

「今の『衝撃波』って多分攻撃力の何分の一かの攻撃力ですよね。攻撃力相当の衝撃波になったら立てかけてる木だって切り倒すのでは?それが二回?」

「う、わーーー…二倍にする能力、思ったよりえげつないな」

「二倍にする能力じゃないぞ、アキ兄さん」

「え?だって二倍に増えてるけど」

「『倍化』なんだから、二倍じゃなくて三倍四倍にもなるはず」

「…あ、確かに…?」

「うわホントだ!倍化だもん、そうだよ!二倍だけじゃない!」

「え、ええ…?」

「多分、覚えたてだからまだ二倍しか使えないんじゃないかな?」

「…これ、三倍になったら…やばいですね」

「チートきたーーー!」

「えええええ???」

「しかもさ、今権能使ってるとこ見たけど、使ったかどうかわかんないんだよ。アキ兄さんの攻撃、通常攻撃なのか倍化攻撃なのか見分けがつかない。だまし討ちし放題」

「やばい。もうやばいしか言えないんですけど、え、私たちの兄、すごすぎでは…?」

「僕も思った。すごい。素晴らしい。素敵。好き」

「どさくさで告白すな。当のアキ兄、口開けてぽかーんってしてるけど」

「しっかりしてください」



とんでもねえ権能手に入れたよこの人…どれだけの魔力消費かはわからないけど、幅広く使える。やばい。

ただ、生き物を増やすとかはさすがに出来ないらしい。これはレベルとかじゃなくて、使えないとわかるんだとか。

まあ人を増やせたらやばいしな。魔物でも増やせたらやばいけど。ラテとラムが増えたらそれだけでやばい。



「じゃあアキ兄の権能は一応わかったってことで…リオ兄は?外じゃないと使いづらいみたいに言ってたけど」

「ああ、僕?僕の権能は『空間作用』だって」

「は?」

「まって」

「やばい気配を察知しました」

「いや、正直今の状態じゃ何もできない。空間把握みたいな、マッピング的なのは使えそうだけどそれも使い勝手悪そうだし」

「んー?まあ、マッピングっていったら確かに空間把握か。ゲームだと右上とかに表示されてるやつ」

「俯瞰して見れるってことですか?それ地味に便利ですよね」

「…結構魔力使う。範囲を広げたらそれだけ消費量増えるし。いや、何か潜んでたらわかるんだけど」

「え、じゃあこれ感知系能力?すごくない!?」

「私のスキルの天敵な気がしてきました」

「あー、隠密、確かに見破られそうな権能…?」



どうなのかと聞かれたけど、答えは簡単だ。

隠密は感知できない。隠密の方が高性能なんだろう。

あと、僕ができる空間把握って、あくまで自分の目で見ることができるって感じだ。

自分の目で上から見下ろすというか。だから、僕自身に何か見破る能力がないと隠密はもちろん隠形も見つけられないと思う。

隠形は性能によるかもしれないけど。認識阻害なら見つけられないけど、気配を薄くしてる「だけ」なら見つけられるんじゃないかな。



「あとは、指定の場所を覚えとくってか、記憶しとく感じの使い方もできるかな」

「場所を?覚えてどうするんですか?」

「指定した場所に空間転移できるっぽい」

「ガチチート能力きた!」

「ワープじゃないですか!」

「俺なんかよりよっぽどヤバイわ!」

「自分一人の転移はまだしも他人を連れての転移だとMP全部使っても無理だけどな」

「…あっ」

「そうだよな、そんだけの能力、消費魔力が少ないわけなかったな…」

「だから現状出来ない。自分一人が転移する意味も無いし」

「もしかして、王城に転移できたりするんですか…?」

「できない。王城付近は『空間指定』…座標を覚えてないから無理。行く気もないけど」

「そっか、いや、偵察とか行けたりしたらって思っただけで…うん、それでも行きたくないですね」

「…それさ、トランタの町の座標覚えたら、転移できるの?」

「それは出来ると思う、というか念のため覚えておこうかなって思った。いざという時のために。全員で転移できるようになる日が来るかもしれないし」



ゲームで言う転移門とかそんな感じかもしれない。

でも、自分一人なら消費魔力はそこまででもないけど、他人も連れてだと消費量が跳ね上がる。

現状、自分ともう一人なら可能ではある。MP95%くらい消費するけど。一日ほぼ転移以外に何もできなくなる、そんなレベルの消費量だ。

権能を使い慣れるか、空間転移に慣れるか、MPが増えるかしないと無理だ。四人で転移なんてどれだけ先になるか。ラテとラムを加えるともっとだ。

そういう意味で『現状使えない』能力である。


何でこんな能力が発現したのか。空間関係の能力なんて仕事でも無縁…という程でもない、のか?

でもあれは、効かないって意味だったしなあ。妙な能力を持つ奴を相手なんてしてると、自分の思い通りになる空間、みたいなのを作ってる奴もいる。

具体的には自分の調子がよくなってそれ以外を不調にさせたり力を吸い取ったり、空間酔いみたいな状態にしたりだ。

あとはそこに行くためには波長を合わせないといけないだとか、脱出するために空間を安定させないと出口が作れないだとか色々あった。

そういうのが得意な人がいたけど、すさまじく力を使うし座標を見つけるとか目印がないと難しいとか色々言ってたな。

仲間が変な空間に閉じ込められて救出したいけど、どこにいるかが読めないなんてこともあった。気配が隠されてるというか。


何かそういう時、僕はそういう力一切受け付けないもんだから、他のみんなが隠されてるのに僕一人だけぽつんと取り残されてる感じになるそうだ。

実際は僕の周りにみんないるけど、みんなは隠されてる。でも僕は隠す力が効かないから、そのままそこに佇んでるのがモロバレになる。

敵対してる奴にそうやって隠された時、僕を目印にして空間の綻びを無理やり作って全員救出に成功した、なんてことがあった。

あとは幻影みたいなのでバラバラにされたと錯覚させる能力をくらった時、僕の目にはみんな周りにいてぼーっとしてるのが見えてた。

でもみんなは自分一人しかいないと思って、脱出しようと歩き回ったりしてあがいてた、らしい。僕の目には直立不動でその場にいたように見えてたけど。

ちなみに頭小突いたらみんな正気に戻った。僕はどうやら『絶対相手の能力に引きずられない、飲み込まれない』らしい。

仲間の中には他人の属性に寄せる能力者なんて人もいたけど、その人、たびたび僕の属性をみんなに付与してたみたいなんだよなぁ…

お前の体質、絶対謎空間で迷子にならないからな!便利!とか笑い飛ばされたけど、そういうもんか?

と、まあ、僕自身が関係ありそうな空間関係ってこれくらいなんだけど。

ある意味空間を安定させるっていう能力、なんだろうか?よくわからない。まあ名前『空間作用』だし、何か関連してるのかもしれない。



「このあたりの森に『空間指定』で記憶しておこうか。町の出入りの記録もあるし、町の中には指定しない方がよさそう」

「確かに」

「いい町だし、これっきりは確かに寂しいかも?武器屋のおっさんいい人だったしなあ」

「でもラージフールに近いから、危険といえば危険な町でもあるんだよな…」

「指定できるのって1ヶ所だけなの?別の場所記憶したら、ここの記憶は削除されるの?」

「いや?この指定って、僕の魔力で作った目印を置いてくって感じだから複数箇所記憶できるよ。座標きっちり把握してないと駄目だから多すぎると駄目だけど」

「じゃあとりあえずトランタ付近にワープ出来るようにしよ!人がいない場所がいいよね」

「となると、森の中ですかね?」

「冒険者が出入りしまくってる場所は避けないとな」



そんなわけで、空間指定の場所に選ばれたのは、旧ラテの巣の跡地だった。

ラテはひっそり過ごしていたらしく、目立たない場所に巣を作っていた。もう必要ないと思ったのか、ラテが壊したが、人も魔物もあまり来ない場所らしい。

鬱蒼として、岩場がいくつかあるだけの場所だ。雨風しのげるような場所でもないので、ライビもウベルスも巣にしないそうだ。子育てとか出来ないだろうしな。

ラテも雨が降った時は木の洞に入ったり、糸で編んだ傘のようなものを作って凌いでいたらしい。

近くに避難場所もあるし、土魔法で壁を作ることもできるし、蜘蛛にとっては普通に過ごしやすい場所だったそうだ。

そうアピールされた、らしい。ナズ曰く。特に場所が決まってるわけじゃなかったので、ありがたくラテの巣跡を使わせてもらうことにした。



「いい場所教えてくれてありがとな、ラテ」

「キー!」

「でもラテ、こんな森の浅い場所にいてよく見つからなかったね?」

「キー」

「あ、そっか、隠形もあるし隠れるの得意か」

「巣も小規模でしたし、移り住んでそんなに経ってないみたいだったし、バレなかったんでしょうね」

「いや、よかったな。見つかってたら討伐対象になってたかもだし、無事でよかった」



雑談の後、手に集中させた魔力を地面に吸い込ませる。一瞬、手のひら大の陣が現れ、地面に溶けて消えていった。

これで『空間指定』は完了だ。頭の中に座標が浮かんで記録されたような感覚。

うん、いつでも転移できそうだ。自分一人だけど。



「ぴぷー、ぷー」

「どうしたラム?」

「ぴーぷ、ぷぷぴー」

「…そういや空間魔法持ってたなお前?え、自分のと違う?へえ…」

「あ、ラムの魔法あるじゃん!じゃあ僕のこれいらなかったじゃん!忘れてた!」

「でもスキルと権能の違いがありますし、効果とか違うのでは?」

「んー、目印がないと転移できないのは同じだけど、その目印を自分で作るとかは出来ないんだって」

「あれ、そうなのか」

「ラムは魔力で場所を選んで転移する、みたい?魔力の強い場所弱い場所、特徴のある場所は覚えやすいとか何とか」

「魔力感知スキル持ってるもんな。へえ、魔力を…人もか?」

「うん、覚えた人の魔力を目印に飛ぶこともあるってさ。でも今リオくんが指定した場所、全然何も感じないって」

「今リオ兄が作った目印、ラムには感知できないってこと?」

「ぴぷー」

「この辺り、魔力も一定だし、自分が転移しようとしてもここには来れないだろうって。自分で転移したい場所作れるのすごいってさ」

「ラムに褒められた…だと…?」

「似て非なる力なんですね。リオ兄さんが空間魔法スキルを覚えたりは出来るんでしょうか?」

「うーん…」



多分だけど、出来ないと思う。というか、僕は魔法系スキルは使えない気がする。

元の世界でも、自分が何かする時は道具を通してでしか使えなかった。

他の仲間は結界だの浄化だのを使う時、道具は補助って感じで使ってたけど、僕は出来なかった。

札とかに込められた力を解放するとか、減った力を補充するとかは出来たけど、札に込められた効果を自分だけで再現するのは無理だった。

結界も浄化も、そういう力を込めた道具に力を流し込むことで発現させる。

僕一人じゃ、結界も浄化も出来ない。一から生成することが出来ないと言った方がいいか。無から有を作り出せない。自分の力を別のものに変換できない。

札を使って力を出し切ってただの紙になったそれに力を送り込んでもう一度使えるようにする、というのは出来たけど。超喜ばれたけど。

僕の力はそんな使い勝手の悪いものだ。何も持ってなければ何もできない、無能力者同然の存在。

だから、こっちの世界でもマナを使って現象を起こす魔法は、使えない気がする。

剣や盾に込められた魔法の力を発揮するってのは出来るかもしれないけど。ほら、炎出せる剣とか、魔法反射する盾を出せるとかそういう。

多分、僕が魔法を使うというか、そういう現象を起こすことが出来るとしたらそういう手段だ。

ということを説明すると、何となく理解してくれたらしい。



「リオ兄さんが、無機物干渉スキルを得た理由がわかったような気がします」

「元からそういう兆しはあったんだなー」

「道具メインで使ってたからかー。てか使い切った道具をまた使えるようにするって凄くない?ある意味、力を引き出すってこと?」

「多分凄いでしょうね」

「…そうかな?だって変な空間に行く時は持ってた道具持ち込めず自分しか乗り込めないケースもあったから、そこだと役立たずだったし」

「いやそんなとこにあたし行ったら一瞬で死ぬからな」

「別世界の話みたいですね。それ、私達が元いた世界での話ですよね…?」

「そうだけど!?」

「ま、まあ、そういうことなら、リオくんが魔法使えない気がするってのはわかるな。この世界だとどうかはまだわからないけど」

「MPおばけなのに…」

「おばけとか言うな」



ちなみに少し前に聞いたが、アキ兄さんの家族は両親とアキ兄さんの三人家族。父親が料理壊滅的で、母親は普通だけどたまにえげつないものを生成するらしい。

そういう家庭で育ったせいか、母のハズレの日は自分が作り直したりアレンジしたりを繰り返していたらしい。

自分で料理覚えた方が平和じゃね?という思いもあったとか。それで料理スキルが…?思ったより苦労人だった。


ナズは両親と弟(小5)の四人家族で、弟がとんでもねえやんちゃ坊主らしい。服を泥だらけにするのは序の口、破いてくるのも日常茶飯事。

その度に服を買い直してたら金がいくらあっても破産するので、洗濯機大活躍だし少々の破れなんて繕うのが当たり前になった。

母娘息子でチクチク縫うらしい。当然やらかした弟も巻き込む。嫌がって逃げようとしてもお前がやったんだろうがの一言で拘束。

そんな日々を過ごしていたのが、被服スキル発現の理由かもと言っていた。服、欲しかったんだな…早く縫える技術欲しかったんだな…涙出るわ。


ハルは若干暗い理由だった。家族は両親と弟妹の五人家族。姉としてしっかりしないと、見本にならないとと思った結果、秀才になったとか。

ただ天才というわけではなく努力で身に着けた知識なので、塾や家での勉強も手が抜けなかった。たまに弟妹が両親から隠れてお菓子を持ってきてくれたりした。

ちょっとは息抜きしよう、と。両親はハルを自慢の娘として期待もかけているがやや放任してる節もある。ハルがしっかりしてたためだろう。

ハルはそれを察して、期待に応えたい思いと普通に遊びたい思いと放っておかれて寂しいという思いが混じっていた。

それに気づいたのが両親でなく弟妹だったのは皮肉か、案外子供の方が周りを見ているという証明か。

ストレスやら何やらが溜まって投げ出したいと思った時は絶対に弟妹が息抜きを持ち掛けてくれたそうだ。両親に隠れて遊ぼうと。

漫画を持ち込んだりゲームに誘ったり、ノート買ってくるという理由で妹と外出して、帰りにスイーツを食べたりなど。

そんな、こっそりと弟妹と遊ぶ時間が楽しかったらしい。両親が家にいない時はお祭り騒ぎで遊び倒すこともあったそうだ。

弟妹のおかげで限界ギリギリまで耐えることがなかった。ストレスが溜まってない時でも両親の目がない時は絶対遊びに誘ってくれた。

そういう経験が、隠密スキルとして表れたんじゃないかとハルは推察していた。誰にも…というか、両親に見つからないように、と。

この話を聞いた時、アキ兄さんもナズもハルを抱きしめていた。友達なのに気づかなかったと。

隠していたのもあるけど、学校では割とのびのび過ごしてたから暗くならずに済んだだけだとハルは笑っていた。

ちなみにハルは両親が嫌いというわけではないし、普通に仲はいいらしい。多分ハルが煮詰まったのは真面目な性格のせいだ。

一度両親に話してみた方がいいんじゃないか。多分すれ違ってるだけで、両親もハルが負担に思ってたと知れば対応を変えてくれる気がする。

もし元の世界に戻れたら話してみるとハルは言っていた。多分、自分でも負担が大きいのは気づいてなかったのかもしれない。

こんなスキルが発現して、初めて自覚したんだろう。思っていた以上に逃げたいと考えていたんだと。


こうなると、こっちの世界に来て初めて発現したスキルは、それぞれの能力や内面や心情が大きく反映されてるのかもしれない。

今となっては知る術もないかもしれないが。



「ちょっと時間経ったな、もう戻った方がいいかも」

「ナズとハルの権能はキャンピングカーでも試せるんだっけ?」

「うん、むしろその方がいいかも。MP消費量とか怖いし、安全地帯で試したい」

「私もそうですね。別に外でも問題はないけど、MP消費が多そうなので、ここで使うと帰りに戦闘になった時、私戦えないかも」

「ハルのMP尽きたらキャンピングカーに隠密かけられないからマジでやばいな」

「よし、じゃあ帰るか。ギルドで報告したらすぐキャンピングカーに入ろう」

「賛成ー」

「ええ、戻りましょう」

「キー」

「ぴぷー」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ