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18.相談しましょう



「よーっし!今日はレベル3を目指すぞー!」



料理スキルが6になったアキ兄さんは大変ご機嫌でした。

新しい派生能力はなかったものの、単純に消費魔力量は減ったし、レベルが上がってMPも倍になったので料理の幅が広がるとウキウキしてるらしい。

あと、魔力消費が多かったために後回しにしていた小麦粉をついに召喚したと喜んでいた。MP13も消費したらしい。これがあると確かに料理の幅が広がるか。

今まで使ってなかったけど、キャンピングカーにはオーブンもあるので、パンを焼いたりクッキーを作ったりできると言っていた。

パンって酵母とかいるんじゃなかったっけ。正直作り方は知らないけど、りんごがあればいいとか聞きかじったことがある。

まあ、そんなこんなでアキ兄さんはご機嫌だった。


HPとMPが倍になったからと言って、レベルが1上がった程度じゃ魔物相手に戦えない。

けど、昨日までより明らかに疲れにくくなっていた。HPって疲労でも減ったりするからな。もしかしたら体力ってパラメータでもあるのかもしれない。

僕の鑑定じゃそこまで見れないけど、見れる鑑定もあるのかな。それともレベルが足りてないんだろうか。

一度、アキ兄さんがラテの手助けなしでライビと戦ってみると言い出し、突っ込んでいった。

結果、倒せはしたけど怪我をした。後ろ足キックが腹に決まった時は悲鳴を上げそうになった。ただ、HPでいうと5減った程度だった。

それでも疲労以外でのHPの減少だ。一応ポーションは買ってあったので、使おうと思って鞄をごそごそしてたら、ラムが回復魔法をかけていた。

…そういえば回復魔法使えたんだったこの子。

やっぱりラテの補助がないと危険ということで、昨日と同じ作戦で魔物を倒すことになった。

この中で一番HPが多いのはアキ兄さんだ。多分、ステータステーブルが前衛寄りなんだろう。恐らく防御力も高いと思う。

逆に、ハルは後衛寄りのステータスな気がする。MPは多いがHPはこの中で最低値だ。同じ攻撃をくらったとしたら、HPは5どころか10近く減る可能性がある。

元より隠密なんてスキルを持って、職業も忍びなんて出てきた。多分、紙装甲ステータスな予感がする。

何度か戦闘をこなして、昼近くになったので昼食をとる。昨日の前科があるので、ハルは隠密をしっかりかけたし消臭も使っていた。

食べてすぐ動くのもどうかということでまったりしてたら、アキ兄さんが川の方へ歩いて行った。



「アキ兄さん?」

「隠密の範囲外になりますよ」

「あ、そっか。ごめん、川に魚いたりするかなって思って」

「ああー…何か言ってたな。いるんだっけ?魚」

「鮎に似た魚がいるらしいですね。町にも売ってますよ。でも結構素早いらしくて、釣りより漁で獲ってるそうです」

「漁?つまり網か?」

「キィ?」

「…あ、ラテって網とか作れんのかな?」

「やってみようか?魚あると嬉しいし」



ということで急遽アユユ漁になった。何でこんな名前に。アユでいいじゃん…ちなみに鯖に似た魚はサババらしい。何でやねん。

ラテが細い糸を出し、ナズが補助について網状にしていく。その作業中にナズもスキルレベルが6になったそうだ。

見た目は脆そうだけど、ラテが出した糸なので丈夫だった。あまり鋭いと通った瞬間サイコロになるので、殺傷力は控えめにしてもらう。

糸が太いと視認できてしまうと思ったが、そこはナズが糸の色を変えることで対処していた。水の中で目立ちにくい色にしたらしい。



「ラテの糸にも干渉できるんだ?」

「めっちゃMP使うけどね。でもその代わり経験値かなりもらえた気がする」

「MP増えたからできるようになったことだなー」

「自分の従魔だから多少軽減されてると思う。城から持ってきた糸とかだったらもっとMP消費してるんじゃないか?」

「うわ、やったことないけどこれからも絶対やらんー」



そうして準備した糸の網は大成功だった。1時間もせず、10匹の魚が手に入ったのだ。

ただ、困ったのは保管方法。アキ兄さんのアイテムボックスに入れるには、アキ兄さんが食べなければいけない。が、こんな所で魚を捌いて食べられるはずもない。



「えっどうしよう」

「…ラム、水魔法、じゃなくて水魔術で何とかならないか?凍らせることが出来れば一番いいんだけど」

「ぴぷ?」

「あ、冷凍保存か!リオくん頭いい!」

「魔法と魔術って何か違うんだっけ?」

「魔術は魔法の上位スキルですね。魔法スキルがレベル50になった後に研鑽を積めば進化するそうで」

「え、じゃあラムって超すごいのか。さすがエレメンタル」

「ぴ~!」



アキ兄さんに褒められてラムが喜んでいた。その喜びのまま、網にかかった魚を網ごと凍らせていた。わあ豪快。

網は既にラテの尻から離れてるので、ラテには何の影響もない。あと、ナズのスキルが使われてたけど、ナズにも影響はなかった。

凍らせたはいいけど、ここからどう運べばと悩んだところで、木箱の存在を思い出した。使いどころねえなと思ったやつである。



「まって召喚リストの中に木箱があったから出す。魚が入るサイズの」

「マジかリオくん素敵!」

「木箱に入ってれば鞄に入るんじゃない?見た目以上の容量入るし」

「そうだな、そうしようか」

「リュックもどきの方に入れましょう。肩掛け鞄よりこっちの方がよさそうです」

「…わあ、マジで木箱」

「ね、ニスとか塗ってて綺麗になってるならまだしもマジで木そのまんま。下手に触ったらトゲ刺さりそう。でも少々の冷気くらいは遮断できると思う」

「中に氷入れとく?」

「木だから染みない?」

「その辺は僕のスキルで何とかできると思う」

「ああ、木箱に干渉して保冷と保管の効果高めるってことですか?」

「そんな感じ。ラム、この中もうちょい冷やして氷の粒とか入れてくれる?それで町に戻るまでもつと思う」

「ぴぴぷ~!」

「リオくんのスキルも大概だなあ」

「今日の晩飯とかでこの魚食ったら今度からアイテムボックスに入れられるんだろ?アキ兄さんの料理スキルも大概だわ」

「どっちもどっちかな」

「食料の物流の仕事就いたら引っ張りだこになりそうですね」

「やだよそんなの。俺は運ぶんじゃなくて作って食いたいの」



この辺りで休憩を終えて、魔物狩りの続きになった。さすがに必要経験値が増えてるので、昨日よりも戦闘回数が増えていた。

そして回数をこなしたこと、というか見ていたことで、ナズもようやく顔色が悪くなることはなくなった。まだ自分で倒すのは抵抗があるようだが。

もうすぐ日が落ちるかもしれないという時間に、ようやく全員がレベル3になった。



「あー、ギリ!もう町戻らないとまずい!」

「よっしゃ、戻るか!ステ確認はキャンピングカーに戻ってからだ!」

「せやな!最後の方、めっちゃ巻きで戦ってたもんな!」

「戦闘が終わるたび次の獲物を探す様はバーサーカーみたいでした」

「人のこと言えなくね!?」

「まあそうですけど」

「疲れたけど昨日ほどじゃないな。やっぱHP倍になったから疲れたように感じたか」

「そうですね、このくらいの疲れならまだ何とかなります。今日はテイムもありませんでしたし、薬草の納品だけしてすぐキャンピングカーに撤収しましょう」

「賛成!」



魚はハルのリュック(薬箱+ナズの布)に入れて、心なしか早歩きで町に戻った。

門番に安心されたのは、また何かテイムしてやしないかと心配してたのかもしれない。そ、そんな毎日あるわけないだろ…

ギルドでも同じ反応されたけど。まあ納品はサクっと済んだし、そのまま撤収した。

そしてキャンピングカーに戻ったところで。



「よし、ステ鑑定してくれ!」

「あ、ご飯食べた後とかじゃないんだ」

「焦らしプレイ!?大人って汚い!」

「風評被害すげえ!わかった、鑑定するから!」



名前:アキ(狭山 茜)

年齢:14

性別:女

LV:3(あと284)

職業:料理人

HP:45/75

MP:21/60


スキル:料理LV6(あと588) 従魔術LV1(あと67)

テイム:エレメンタルスライムLV148



「あー、レベル1の時のHPとMPが加算されてくのか」

「ステータスは、低レベルのうちは割とガツンと上がって、しばらくするとゆるやかな上昇量になるそうですよ」

「あー、そんなこと書いてたなあ…レベル5くらいまではこのまま上がってほしいけど」

「リオ兄のMPがえらいことになりそう…」

「ラテやラムに比べたらクソザコだから…」

「それ言ったら俺たちみんなクソザコだろ…」

「職業が料理人になってますね」

「お、嬉しい。これで固定されてくれないかな」

「いいんだ?」



名前:リオ(村雨 涼)

年齢:14(24)

性別:女

LV:3(あと291)

職業:曲芸師

HP:33/60

MP:157/300


スキル:無機物干渉LV5(あと129)



「職業変わってなかった!」

「まあ、うん…あれインパクトすごいからなー」

「MP300、やばい」

「スキルレベルすぐ上がりそう。今日MP使い切ったら上がるかな?」

「そうですね、ちょっと楽しみです」



名前:ナズ(波川 静)

年齢:14

性別:女

LV:3(あと278)

職業:裁縫士

HP:39/66

MP:18/60


スキル:被服LV6(あと574) 従魔術LV1(あと38)

テイム:ヴェノムタランチュラLV47



「順当順当」

「まだ一匹も魔物倒してないのに…」

「気にすんな。あと従魔術も地味に経験溜まってるな」

「今日、協力もしてましたしね」

「キー!」



名前:ハル(林 千晴)

年齢:14

性別:女

LV:3(あと293)

職業:忍び

HP:31/54

MP:17/66


スキル:隠密LV5(あと221)



「スキルレベルアップ、遠いですね」

「いや、かなり経験値溜まってない?リオ兄の非常識MPと違ってハルは普通だし。あたしとかよりMPあるけど」

「非常識MP!?」

「もしかしてさ、ハルのスキルって実戦に近い緊張感の中使ってるから経験ガンガン積んでるんじゃね?」

「あー、いつ魔物が来るかって中で使ってるから、ある意味安全圏でスキル使ってるあたしらより経験値もらえるのか」

「スキルの種類にもよるだろうけどな。ある意味隠密って戦闘スキルに近いものがあるし、アキ兄さん説ありえそう」

「確かに、料理スキルや被服スキルを戦闘に応用は難しいかもしれません。お前を料理してやるとか、お前をその場に縫い留めてやるとかでない限り」

「こっわ!そんな食えない奴に興味ねえわ!」

「そういう問題?…そういう問題か。アキ兄、ウサギ大喜びで狩ってたもんな」

「…縫い留める、動きを止める戦い方、今日のラテみたいに…それなら…」

「ん?ナズ、何か思いついた?」

「いや、ラテの真似しようかと思ったけどあたしにそういう力なかったから無理だなって」

「でも方向性決められたならいいんじゃないか?ぶっちゃけ相手を足止め出来る戦闘要員ってめちゃくちゃ助かるぞ。経験則」

「…リオくん、思ってたよりヤバイ仕事だったんだな…」

「てへぺろ」

「真顔で言うな」



全員の確認が終わったので、解散になった。

晩御飯にアユユが出て感動した。これぞ日本の食卓…!あとはお茶があれば完璧だったかもしれない。

アキ兄さんも考えたのか、茶葉を召喚しようか迷っていたらしい。まあ、飲み物より食材優先だよな、とは思う。

ちなみに箸は早い段階で召喚している。うん、僕の召喚って植物性の道具のラインナップ豊富だからね。ありましたとも、箸。

焼き魚については、ラテもラムも大喜びだった。今まで生で食べることはあっても、焼いて食べることはなかったんだろう。

大根おろしもついてて満足だ。



「焼き魚、おいしかった…」

「次は煮魚も食べたいですね…蒸すのもいいです…魚最高」

「魚介類も召喚できるようになるのかなー?」

「なるんじゃないか?食べ物だし」

「タコ召喚できたらタコ焼きやりたい」

「タコ焼き器なくない?」

「召喚できるようになるとしたら、リオ兄さんでは?」

「鉄製はまだなんだよー」

「出来るようになったらやろうな、タコパ」



食後のまったりタイムに席についてのんびり話す。いつの間にかハーブティーなんて作れるようになってたよ、アキ兄さん…

そういえば香草色々採取したもんな。スキルの影響もあるのか、かなり美味しい。



「明日はどうする?そろそろ採取メインにする?またレベル上げ?」

「うーん、いっそ明日一日休みにしてもいいんじゃないか?」

「ずっと働いてたようなもんだし、そういや休みってなかったか」

「日本だって土日休みなんだから、休んだって罰当たんないだろ。城から出てずっと休みなく働いてたようなもんだし」

「確かに…?」

「休みなら俺、市場とか屋台うろついてみたい。この世界の食べ物、知りたいし」

「あー、それ大事かもな。思えば僕らずっと日本風の食事ばっかだった」

「城では…残飯だったしね」

「平民の一般的な食事は確かに気になります」

「あと、噂話とか聞いてみたい。まさか勇者召喚が広まってるとは思わないけど、魔族が攻めてこようとしてるって、これ事実なのか、とか」

「そういえば、王の虚言の可能性ありますよね。勇者に言う事聞かせるため、そういうことにした、とか」

「うわうわうわ、可能性ある!え、これ、ちょっと情報収集必要じゃない!?」

「…よし、僕とハルで情報収集しよう。ハルは隠密や認識阻害で城でやってたみたいに。僕はその辺の建物とかに聞いてみる。案外噂話聞いてるかも」

「二人が情報収集したら丸裸になる気がしてきた…」

「噂がこの町に届いてれば、ですけどね。まだ勇者召喚されて半月程度、情報が洩れてるのか、伝わってるのか未知数です」

「届いてないなら僕らの正体もバレないんだから、それはそれでいいと思う」

「そうですね」

「危険なのは、勇者が逃亡したって情報が流れてた場合か?俺たちのことだろうけど」

「うん、でもさすがにないと思うな。そんなの城の警備がザルって宣伝するようなもんだし…」

「でもあの国馬鹿だから、逃げた勇者捕まえるためにお触れ出してるかも…?」

「そうだ馬鹿だった」

「大馬鹿の国だもんな、ラージフール」



そして相談して、明日一日は休みというか、自由行動になった。まあ情報収集なんてしてたら働いてるようなもんだけど。

一応キャンピングカーは出したまま。なので、戻る時はハル以外細心の注意が必要だ。

アキ兄さんは基本キャンピングカーに残って、食料の作り溜めをしたいらしい。おにぎりとか、あとクッキーなんかも作りたいらしい。

今後も冒険者として外に出るならお弁当的な外でも食べやすいものを作っておくそうだ。毎日当日の朝準備してたもんな…

そして僕とハルはそれぞれ分かれて情報収集。ナズは基本待機で、服やら色々作ったり加工、ついでに従魔の二匹も見ていてくれると。

時間が出来たらアキ兄さんとナズで市場や屋台に突撃するそうだ。

おおまかにそんな感じで予定を決めて、寝ることにした。


情報収集の結果によっては、すぐ町を出ないといけないしな。休める時には休んでおかないと。


結果、めぼしい情報はあまりなかった。

ただ、魔族が人間族に敵対心を強めているというのは本当らしいというくらいか。

しかし王が言ってたように侵略の準備など大々的なことはしてないらしい。

やっぱり嘘情報だったか、というのが感想だ。ある意味予想してたので驚きはしなかった。

むしろ人間族側が魔族側にちょっかいかけてるらしい。しかも主犯はあの王のようだ。どうしても魔族領が欲しいのだとか。何でだよ。

当然、王都以外の町はほぼ反対で、無駄に敵を作るべきではないという主張らしい。

ただ、少なからず賛同してる町や村もあり、そこが協力して魔族領への派兵を手助けしていると。

魔族領を隔てる魔の森に近い人間族領の町が賛同派なのが救えない。いや、その町ならではの苦労があった結果かもしれないが。

魔族から被害を被るとしたら、ほぼその町だろうからな。安全のために魔族の脅威をなくしたいと思うのは無理からぬことか。

それでも大多数の町から見れば進んで争いを起こそうとするなという主張になるだろうが。

…勇者召喚、この魔族領進行のためにされたのかもなあ。もう召喚の魔法陣はなくなってると思いたいけど。

さすがにそれに関する情報はなかったな。



「いや、それより召喚の魔法陣がなくなってるはずって、そっちの情報の方がびっくりなんだけど」

「初耳ですよ???」

「リオ兄のスキル、改めて思う。とんでもねえ…」

「…言ってなかったっけ?」

「言ってねえんだわ」

「ねえ、もしかして破壊者クラッシャーの職業ってさあ…」

「これは納得の職業でしたね」

「いや、実際壊したってか壊れてたはずのものを維持してたっていう歪な状態を解除したみたいな、そんな…」

「うん、保存の魔法の影響力を壁や床に拒絶させたって感じでしょう?でも結果壊れたなら立派なクラッシャーでは」

「正論が痛い」

「まあ実際ザマーミロとしか思わんけどな」

「いつ気づくんでしょうね」

「しばらく気づかなさそう…」



何しろ、馬鹿の国だから…

というのは別として、あの部屋普段閉め切られて誰も入らないみたいなんだよな。

だから何か起きてても、入らない限り露見しないというか。



「ま、まあ、リオくんとハルの情報収集はこんなもんか。すごいな、こんな情報、普通なら情報屋とかから買って得られるやつじゃね?」

「絶対機密情報とかそういうやつ」

「人の耳に戸は立てられない。というか、比喩表現じゃなく戸そのものから聞いたからな」

「チート能力ェ…」

「リオ兄とハルに隠し事って無理じゃない?」

「いやでも心読めたりするわけじゃないし…?」



あとは手紙のやり取りとかも手を出せないと思う。

手紙に直接触れられるならまだしも、こういうのって専門の配達員とかいそうだし。

だから、僕らの情報収集も穴はある。そんなこと言ったら情報を秘匿する方法なんていくらでもありそうだけど今は考えない。



「まあでも、大抵の情報は集められそうだなあ。は?チートか?うちの弟妹がすごい」

「ともかく、勇者に関する噂はなかったってことだよね。まだ届いてないだけかもだけど」

「それだとこの町に来ることを選んで正解だったな。王都からそれなりに距離あるし、ここ」

「リオくんとハルが吟味した結果、この町に来て正解か。うん、手っ取り早く一番近い町とかに行かなくてよかった」

「探されてるとしたら、そこでしょうね」

「まだ王城内探してたらウケる」

「さ、さすがに…城下町くらいは探してると思いますけど」

「ギルドにあたし達の捜索依頼とか出てたらやだなあ。王都もギルドあったよね」



あるはずだけど、多分城下町だろうからな。様子はまったくわからない。

でも王都にあるんだから、トランタより規模は大きいと思う。



「こっちのギルドにまで連絡行って探される、なんてないといいけど」

「あったとしても、似たようなのいっぱいいるから大丈夫じゃね?」

「ああ、田舎から子供が出てきてギルド登録ってやつ。確かに4人でパーティ組んで出てくるって結構あるみたいだしなあ」

「真っ先に疑われるのは女4人ですよ。私たち、一応表向きは男2人と女2人です。探されたとしても早々辿り着かないと思います」

「探されてる気配感じたら、即町出ような」

「そうだな」

「多少お金溜まったし、一応いつでも出れるかあ…ラテとラム、この町から離れても大丈夫なの?近くに住処とかない?」

「キ~?」

「ぴ~?」

「…離れてもよさそう、かな?」

「うん、ラムも別にこの土地に愛着あるとかじゃなさげ」

「ふーん?今更だけど何でこんなとこいたんだろうな?」

「ラテは何となく?って言ってるっぽい?」

「ラムは通りがかっただけっぽい?」

「…スタンピードの前触れとかじゃなくて良かったですけど…」



一応、ラテはしばらくこの辺りにいたらしく、巣を作っていた。

けどナズにテイムされたことで愛着も未練もなかったらしく、すぐ巣を壊していた。餌の保管などもしてなかったので、本当に簡易的な住処だったらしい。

生まれて4ヶ月なので、最大でも滞在4ヶ月だろう。見たところ巣も古くなさそうだったし、せいぜい1ヶ月程度しかいなかったと思う。

この場所に本格的に住み着くつもりもなかったようで、巣の規模も大したことはなかった。最低限、ここに蜘蛛がいますよと主張している程度だ。毒も付与されてなかったし。

本格的なのだと、辺りに巣を張り巡らせるそうだ。ナワバリともなればそこかしこに蜘蛛の巣がある…らしい。ギルド情報だが。

ラムに関しては本気で謎だ。というか空間魔法なんてものがあるくらいだし、あの瞬間現れたと言われても納得だ。

…おにぎりの匂いを嗅ぎつけて空間を飛んできたとか言われたら、どんだけ凄い嗅覚でどんだけ腹が減ってたんだという話だが。

今はアキ兄さんの料理に満足してるらしく、離れる様子はない。住処があったとしても戻るつもりはなさそうだ。



「じゃ、ともかくラテとラムは連れ出しても問題はないと」

「そうですね。まだこの町に滞在はするとして、次の目的地の情報も集めましょうか?」

「そだな、次ってガレメナだっけ?」

「馬車で1ヶ月かかる距離ですね。車だと1週間かからないくらいでしょうか」

「キャンピングカーさん、まじチート…」

「途中、いくつか村とかあるのはスルーするんだっけ?」

「ええ、本当なら水や食料なんかの補給に立ち寄るんでしょうが…」

「…いらないよな」

「野宿が続いて、宿に泊まりたいって思うのでほぼ寄るみたいですが、まあ、私達は…」

「毎日ベッドで快眠だもんな」

「それでも、ある程度は準備いるよな。町っていう安全圏は貴重だし、情報だって手に入る。旅してたらどうしても頼れるのは自分たちだけになるから」

「わからないことがあったらギルドに聞けば何とかなるっていう安心感もありますしね、町だと」

「城と違ってうろつき回っても咎められる心配ないから、知識も情報も得放題だもんなー」

「そう考えると、町に滞在も大事だねぇ」



他の旅人とは求めるものが違ってそうだけど、町や村の滞在は人がいる以上有用だ。

人がいるからこそ警戒も必要なんだけどさ。



「途中にダンジョンもあるっぽいけど、行く?」

「一回くらいは入ってみたいかもしれません」

「ええー…」

「正直、大きな町だと町への出入りって記録されるから、トランタから出て1週間でガレメナ着いた記録残ったらやばい」

「あ、途中で大幅に寄り道とかしないと辻褄合わなくなるのか」

「照合なんてほぼしないから大丈夫だろうけど…でも万が一ってあるからなあ」

「ああー…」

「ギルドカード作ってるから、別人になりすますのは無理でしょうしね。これ破棄してまた1からガレメナでやり直すなら大丈夫でしょうけど」

「それはさすがに面倒だし余計な金使いたくないなあ」

「でも、知り合いらしい知り合い、トランタにいないし、ひとつの手段ではあるのか。また違うカツラ作ればいいし、何なら男1人女3人にしてもいい」

「女4人は目立つけど、まあそれなら…?」



そう、この世界では別人になりすますのは結構簡単だ。

ネットもないし、情報のやりとりの方法が限られてる。

その気になれば魔道具とかで照合したりできるので、この場合は誤魔化しがきかないかもしれないけど、それ以外はガバガバである。

何せ、ギルドの冒険者登録情報も、名前や年齢は記録しても性別の記録はないのだ。

多分、名前や見た目、口調や装備諸々で判断しているのだろう。



「そんな感じだから、最悪別人になれるよ、っていう」

「でもラテとラム連れてたら、誤魔化せなくない…?ギルドにばっちり登録しちゃってるけど」

「べ、別のスライムと蜘蛛になってもらう、とか」

「テイムモンスターで一番多いのはスライムです。ゴミ処理目的で。ラテちゃん、スライムになれます?」

「キ?キィ~…」

「ちょっと無理っぽい。多分レベル足りてない」

「あー、蜘蛛型はともかく別種になるのはレベル10くらいいるんだっけ。今8だもんな」

「逆にラムが蜘蛛になるのは?形状変化のレベル高かったよな?ラテちゃんと同じレスパイダーになれる?」

「ぴぷ?ぷ~~~!」

「おっ、できた!すごい!」

「レスパイダーが二匹!」

「ぴっぷー!」

「鳴き声はそのまんまか」

「人前で鳴かなきゃ大丈夫だろ。ラテもラムもギルドとかで一回も鳴いてないし」

「おお、すごい…ラム、いざって時はお願いしていいかな」

「ぴー?ぴぷ!」

「いいよって」

「キィ~…」

「ラテ、今でもじゅーぶん助かってるから。何なら今日から形状変化のスキルレベル上げしてみる?」

「キッ、キィ!」

「おややる気になった。ますます強くなるのかラテ…生後4ヶ月なのに…」

「ほんとだわ。とんでもねえベイビーだな、ラテ」



レベル上げなのか、ラテが色んな蜘蛛に変化してる。いいけど、キャンピングカーよりデカいのにはならないでくれよ…

あとは今日の成果といえば、アキ兄さんが大量のクッキーを作ったくらいか。軽くつまめるという意味では確かに優秀だもんな。

ハーブを練りこんだりして何種類か作ったそうだ。チョコが欲しくなるな…あと牛乳か。

ナズも手伝ったらしく、ラテとラムもおこぼれをもらったりで楽しかったらしい。

それから、僕もハルもスキルレベルが上がって6になったことか。

サラっと言ったらもっともったいぶって言えと苦情を言われた。理不尽。

いや、何も新しい派生能力なかったから…ハルは『幻影』を覚えたらしい。これは自分から離れた場所に気配のようなものを出現させるものだ。

実体はないが、気を逸らすくらいには使えるだろうと。多分、もっとレベルが上がれば自分の分身を作れるようになるんじゃないだろうか。

今は作れるのは気配だけみたいだけど。でもそれなりの冒険者なら気配で相手を探ったりするから、結構使える力な気がする。

ハルがどんどん頼もしくなってるよ…



「…結構いい町だったけど、長くてもあと数日で次に行こうか。あんま時間かけると、城の追手来る可能性だってあるし」

「見てもわかんないと思うけど、何か、探すスキルとかあったら確かにやばいもんね」

「あったなー、探索とか調査とかそんな感じの」

「でもそれ範囲内のものしかわからないやつですよね。離れてれば無意味なので、この町で出くわさない限り大丈夫ですよ」

「そもそもこの町にいるってことさえ知らんだろうしな」

「ていうか、追ってくるか?あっちは俺たちのこと完全に役立たず扱いしてたろ。そんなののためにわざわざ人員割いて探しに来るかね?」

「冒険者ギルドに依頼とかならありえるかも?」

「そうですね、それなら城の人員は減りませんね」

「さすがに王都に出てる依頼なんて探りようがないなー…放置してくれてればいいけど」

「やめやめ、あんなののこと考えるのやめよ。楽しい話しよ」



とは言っても、報告すべきことは大体話したしなあ。

ああ、そういえば。



「キャンピングカーに欲しい機能ってある?」

「え?今ので満足してるけど…何かできんの?」

「えー?トイレあるしシャワーあるしベッドあるしキッチンあるしくつろぐ場所あるし…うーん?」

「強いて言うなら個人の時間がないことでしょうか?でもストレスになるほどじゃないし…」

「風呂?湯舟?でも一日一回シャワーで綺麗に出来るだけでありがたいしなー」

「パソコン欲しいとか?いやこの異世界じゃ無理だよねえ…」

「そうかー、出来るとしたら湯舟か個人部屋か?この辺は考えてたしなー」

「…できんの!?」

「いずれは?出来れば寝室、4つ欲しいなーとは思ってた。はしご上った先に4つドアあってーみたいな」

「うーん、あったら嬉しい気もするけど、スペース…は、空間拡張されてるのか、ここ」

「でも4人揃ってくつろぐ部屋も欲しい気がします。ここの居住スペースがそうだと言われればそうなんですけど」

「ごろ寝できるスペースあったらいいよね。完全に家だなそれだと」

「…むしろ、キャンピングカーを改造するんじゃなくて新しく家作った方がいいかもなあ、その辺の要望だと」

「家あんの!?」

「初回特典の時に一応あったよ。一軒家みたいなのとかログハウスみたいなのとか」

「それはそれで気になる…!え、それレベルいくつくらいで召喚できるの…!?」

「さあ…?」



召喚出来そうなのがザーっと並んでたけど、それがどのレベルで並ぶのかはわからなかった。

ただ、特典だけで何ページもあり、それの最後の方だったのでかなり高レベルなんだろうなーというくらいだ。



「いずれきちんとした家が手に入る可能性があるなら、キャンピングカーに求めるのはやっぱり移動に関することでしょうか?」

「でも家の召喚なんて絶対先の話だよねえ」

「んじゃ、どういうのがいいかーって何となーく考えといて」

「マジかー、キッチンスペース広くしたいとか?」

「窯とか欲しいですね。ピザ焼きたい」

「チーズ欲しい…」

「っていきなり何でこんな話?」

「楽しい話しようって言われたから?あと、ちょっとずつ魔力溜めてるから、追加機能つけられるようになるかもだから」

「え、そんなことしてたの!?」

「うん、毎日10とか20とかキャンピングカーに使ってた。あんまり経験値にはならないけど、便利になる方が結果得になるかなーって」

「…リオ兄さん、MPの割に私とレベルアップ速度あまり変わらなかったの、それが理由ですか…おかしいと思ってました」

「言われてみればそうだな。何かレベルアップ遅い気はしてた」

「いやあ…でもMP1000くらいでやっと追加機能使えそうだから、まだ先の話だよ」

「キャンピングカーの召喚MP、1000なんだろうか…気が遠くなりそう」

「軽減されまくらないとまず召喚できないやつ」

「初回特典で、ほぼ無料で手に入ったの、ほんと運命だったのでは…!?」



まあ正直自分でもナイス判断と思ってるけども。

最初の候補、それこそ家だったもんな。衣食住を揃えるの第一に考えてたから。

でも家の中にいる時は安全でも、外に出たらそれも意味がないし、家を取り囲まれたり近くをずっと探されたりしたら袋小路になると思って移動優先に考えたんだよな。

車なら超スピードで逃げれるし最悪車の座席で寝れる、とか考えて、移動と住居を両立できないかなんて考えてたらキャンピングカーを見つけたっていう。

もしかして、思考を読んだのかなって思ったよね。だって最初、絶対キャンピングカーなかったもん。

四人乗りの車とか、ワゴン車とかバスはあった。でもキャンピングカーはなかった。

多分、乗ったことがなかったから最初は表示されなかったんだ。でも逃亡のことを考えてた時、キャンピングカーとかあればって考えたら表示された。

アキ兄さんの召喚リストに、レモンはあってもライムがないように、関係があるものや身近だったものからリストに並ぶんだろう。

あとは一度も食べたり触れたりしたことがなくても、知識として知ってれば出てくると思う。実際、ログハウスなんて住んだことないのに出てきたし。

逆に言えば、知らないものは出てこないんだろう。あとは用途がわからないものとか、味の想像がつかないものとか。

外国の映画なんて見てたら、調度品に謎の置物があったりするもんな。それが実はナイフだとかライターだとか、言われないとわからないものがあるし。

多分、そういうのは出てこないと思う。置物としては出てくるかもしれないけど。いや置物とかいらないけどさ。

だから、キャンピングカーが出たのは割と奇跡みたいなものだ。あと、普通自動車とはいえ免許を持ってたのも理由かもしれない。

自分のスキルだから何となくどう使えばいいかわかると言ったのも嘘じゃないけど、運転の知識があったから乗り物系はリストに出たんだろう。

ヘリは知らんけど。ゲーセンの戦闘機っぽいのしか使ったことないぞ。これか?これ使ったことあるからヘリも出たのか?

こう考えると、このスキル持ってたの、僕でよかったのかもしれない。いや、ゲーセンで車走らせて順位競うやつプレイしてればリストに出た可能性あるけど。


そういえばアキ兄さんは元々料理得意なんだろうか?ナズは裁縫が得意?

関係あるのかもしれないし、ないかもしれない。ともあれ、今うまく行ってるならそれでいいだろう。

ともあれ、王都から離れて出来れば影響のない場所まで逃げ、元の世界に戻る手段を探せたらいい。

今の時点では、勇者召喚に関する情報はまったくと言っていいほど得られてないので、そんな手段があるのかどうかも不透明だ。

けど、勇者がいたという伝承はちらほらあるけど、その勇者が最終的にどうなったかという情報もほぼない。

この世界にずっといたのか、帰れたのか、それも未だ不明なのだ。



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