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68部

北条総理が会見場に現れ、報道陣の中にざわめきが起きる。北条総理は前島兄弟に会釈をして、マイクを受け取り、

「前島議員たちの会見を中断してしまって申し訳ありません。

 ただ、ご本人方はもう逃げかれくれする気もないようですし、私のお話を聞いて頂いた後で、まだ、質問をしたいと思われる方はどうぞ質問をしてあげてください。

 私が今回この会見場に足を運んだのは、昨今続いている政治家の不祥事に関して、我々政治家も改革を行っていくため、黒木俊一議員から国会議員の資格任用制を取り入れる法案が提出されました。

 国会議員にとどまらず政治家は選挙によって、その地位を得てきました。

しかし、議会制民主主義は国民の政治への参加を遠ざけ、そして誰かもわからない候補者を明確な基準もないままに政治家を選んでしまう、そんな空っぽの制度を作ってしまっていたのです。

 投票率は若者を中心に低迷を続け、芸能人や著名な知識人、あるいは明治政府発足時から続く政治家の家柄の人間が選ばれてしまう、そんな惰性な選挙が続いてしまったがために、何の知識もない、常識もない、自らの欲望のために政治を利用とするヤカラが政治家になってしまっていました。不倫・失言・贈収賄疑惑・秘書の傀儡議員、こんな問題が起こるのも政治家の資質に問題のある人間ばかりが当選する選挙方式を取って来たからなのだと私も思います。

 そこで、選挙前に政治家に一斉に資格任用試験を受験させ、試験を通った者だけが選挙の候補者として、有権者の皆様の前に立つ仕組みに変えます。

 どこから出てきたのかわからない、ただ有名なだけで頭の悪い人間や国を動かす政治家として不祥事を起こすような人間も資格任用試験でふるいにかけて、政治家にならせないようにしていきます。

そのため、現在の国会議員数から半減若しくはさらに人数が減ることはありえます。

国の税金から給料が出ている我々政治家は数が多ければそれだけ国税を多く人件費に充てることになるので、ここで国の支出の削減にもつながりますし、何より、国民の皆様から失ってしまった政治に対する信頼を取り戻すためにも大きな改革が必要となっている今この時に本当に国のために働ける国会議員を選ぶための制度作りが必要不可欠となり、黒木議員の法案を可決、実施していくことを決めました。」

北条総理が言いきると記者が手を挙げ、北条総理が「どうぞ」と言っうと記者が

「資格任用試験はどのように実施されるのでしょうか?

権力のある政治家が前もって、試験の内容を知って解答するなんてことが起これば、その試験自体に意味がないと思いますがいかがでしょうか?」

「ご指摘はごもっともです。

それに関しましては、試験を作成するのは政治を行うのに必要な分野の専門家たちに問題を作成して頂き、試験前日にランダムに選ばれた問題を試験問題として作成し、警察にて保管します。

試験当日も警察官が張り付いてカンニングなどの不正行為は見逃さないように監視を行います。

 いくら権力のあった政治家であっても問題がわからなければ問題を事前に把握することもできませんし、警察の監視下で試験を受けるので不正行為はできないと思います。」

「もし不正行為が発覚した場合はどうなるのでしょうか?」

「資格任用試験の受験失格、そして生涯にわたる受験資格のはく奪のペナルティを科します。」

「不正行為を行えば二度と政治家になれないということでしょうか?」

「その通りです。

 この資格任用試験は、全ての国会議員が対象になります。

それは私を含めてすべての閣僚も例外なく適用されます。ただ外交・防衛に関して担当の大臣が不在の状況は国の存立にかかわりますので、正式に次の大臣が決定するまでは、その閣僚が試験に落ちていたとしても継続して大臣を務めさせます。次期大臣決定後、政治家資格が無くなっていれば辞職という形になります。」

「総理もその試験を受験されるということでしょうか?」

「はい、例外は存在しません。たとえ試験で資格を認められなかったとしても、それは私に政治家としても資質がなかったものとして諦めます。」

 会場内に一段と大きくどよめきが広がる。記者の一人が

「試験に受かる自信が無いだけじゃないですか?」

「そうかもしれませんね。初めての試みですし、誰が作ったかもわからない問題に答えることは難しいでしょう。それにランダムに問題が作成されるならヤマをはることもできません。

私も年ですからね、今更になって新しいことは覚えるのは努力しても難しい。

 そういう意味では政治家に大きな世代交代の波が来ているのかもしれませんね。」

 北条総理はとても明るい笑顔でそう言っている。政治家生命の危機に立ちながらも、次の世代への期待があるかのように笑っている。会見場の一番後ろで腕組みをしながら、話を聞いていた武田警視総監はつかみどころのないところなどが北条総理らしいなと思いながら会見場を後にした。


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